映画「マジック」のDVDを四月中旬に見ました。
1978年の作品で、監督はリチャード・アッテンボロー、脚本・原作はウィリアム・ゴールドマン。主演はアンソニー・ホプキンスです。
この映画は、アンソニー・ホプキンスの一人舞台のような作品でした。面白かったです。
あと、アンソニー・ホプキンス若いなあと思ったけど、41歳の頃でした。普段、おじいちゃんのアンソニー・ホプキンスしか見ないから、特別若く感じたのでしょう。
● アンソニー・ホプキンスの独演
この映画は、主演アンソニー・ホプキンス、助演アンソニー・ホプキンスという感じです。
なぜならば、この映画の主人公は、腹話術を利用した手品師で、主人公V.S.腹話術の人形という話だからです。
なので、アンソニー・ホプキンスが一人二役(人間&人形)を延々と演じています。こういった映画は、俳優としては非常に挑戦的で楽しいだろうと思います。
しかしまあ、アンソニー・ホプキンスは、この頃から、表情がないような表情を上手く使いこなしますね。
そういった表情が、精神に異常を来たしている主人公の様子を不気味に上手く表現していました。
あと、撮影予算が掛からないだろうなとも思いました。登場人物も少ないですし。
● 破綻前提のサスペンス
映画は、どう見てもハッピーエンドにたどり着きそうにない進み方をしていきます。
綻びを繕うために、より大きな綻びを呼んでいくといった感じです。嘘を隠すために、より大きな嘘を吐き続けるのに近い感じです。どこをどう見ても修復は無理そうです。
こういった映画では、「主人公がいつ綱渡りを失敗して破綻するか」を、ハラハラドキドキしながら見守ることになります。
この映画は、まさにそういった感じでした。
もう、どうにもならないことが分かっているのに、必死にその決定的瞬間を先延ばしにしようとする。
自分の中の制御できない部分を、別人格として全部腹話術の人形に押し付ける。その乖離した人格のまま、必死に幸福を掴もうとする。
ハラハラドキドキするよい映画でした。
● 粗筋
以下、粗筋です(若干ネタバレあり。終盤に入る前ぐらいまで書いています)。
主人公は手品師。しかし彼は舞台恐怖症とでも言うような精神状態になっていた。
そんな彼を救ったのは腹話術だった。毒舌な人形ととも舞台に上がることで、彼は人気を博するようになる。そして彼は四六時中人形と共に過ごすようになる。
そんな彼に、テレビ出演の話が舞い込む。その条件は健康診断を受けること。彼はその条件を頑なに拒む。
主人公は、逃げるようにして山間の湖畔に行く。そこには、彼が学生時代に憧れていた女性がいた。彼女は不幸な結婚生活を続けていた。
主人公は、腹話術の人形と手品で彼女の心を虜にする。彼は女性に、旦那と別れて自分と結婚するように求める。そして彼女は乗り気になる。
主人公は心満たされる。しかし、彼の精神の内奥は千々に乱れていた。一人になった時、彼に腹話術の人形が語りかける。それも悪意を持った言葉を投げかける。
主人公は分裂症に陥っていた。彼が健康診断を拒んでいた理由はそこにあった。
そんな彼を、マネージャーが訪れる。彼は主人公が大舞台にひるんでいるのだと思っていた。しかし、彼の状況を一目見て気付く。彼が精神を病んでいると。
立ち去ろうとするマネージャーを主人公は人形で撲殺する。そして、死体を湖底に沈める。
全てを覆い隠して、彼女とともに立ち去ろうとする。だがそこに、彼女の夫が帰ってきた。彼は高圧的で肉体派の男だ。主人公は学生時代、冴えない気の弱い男として過ごしてきた。
女性の夫は、主人公と妻の仲を疑う。そして、彼の身辺を探るうちに、徐々にその様子がおかしいことに気付きだす……。