映画「立喰師列伝」のDVDを四月中旬に見ました。
2006年の作品で、監督・脚本・原作は押井守で、ナレーションは山寺宏一です。
人を選ぶという話を色んな人に言われていましたが、面白かったです。でも、ヒットは絶対しないだろうと思いました。
小ネタと台詞にニヤニヤできない人は、かけらも面白くないと思うので。
● ペープサート
元々この映画は紙人形劇のサンプルとして見ました。
紙人形劇は、日本ではペープサート(和製英語)と呼ばれて、主に保育の現場で利用されています。英語ではペーパーシアター(paper theater)になります。
この映画では、実写で撮った写真を、3Dモデルの板状のポリゴンに貼り付けて紙人形のようにしています。
とはいえ、けっこう手間がかかっています。「板」に厚みを持たせるために、厚みの部分を全部ポリゴンで作っています。
この「立喰師列伝」や「ミニパト」なんかを参考にしながら、マーカー系ARでモーションキャプチャーを行い映画を撮影するソフトを作っているわけです。
というわけで、資料として非常に役立ちました。でもまあ、本当に役に立ったのは「ミニパト」の方なのですが。
● 擬似薀蓄の語り芸
この映画は、アニメというよりは「語り芸」と言った方がよい作品だと思いました。
確かに画面は動いているのですが、それよりも「語り」が匂い立つようにビンビンと脳に来ます。
架空の「立喰師」たちの歴史を通して、日本の戦後の歴史を非常にそれっぽく語る様は非常に面白いです。
ネタも多数仕掛けてあって、細部を見落とさないように集中して見続けました。
● 独特の画面質感
実写を紙人形風にしているというだけでなく、この映画は独特の絵作りをしています。
何というか、「寺田克也みたいな色の質感を少しメタルにした感じ?」といったところでしょうか。
映画には、寺田克也も出ていますが。
実写をそのまま切り抜くと違和感がありますが、実写を絵のような色使いで表現することで、紙人形の違和感を減らしたのかなと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です。
戦後から現代までの日本の歴史を、「立喰師」と呼ばれるアンダーグラウンドの人間たちの変遷を通して描く。
戦後直後の混乱期の中で現れた伝説の立喰師から、高度経済成長期に東京からはじき出された負け犬としての立喰師、そして大量消費社会の中で、巨大なシステムをも崩壊させる立喰師たちの登場……。
それは、時代のいびつな歪みを反映した、人々に省みられないアウトロー=無銭飲食者たちだった。