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2011年09月21日 13:24:45
ソナチネ
 映画「ソナチネ」のDVDを六月上旬に見ました。

 1993年の邦画で、監督・脚本・主演は北野武。

 たぶん十年前に見たら、面白いとは思わなかったと思います。でも、この年になって見ると、なかなかぐっと来るものがありました。

 そういう意味で、自分も年を取ったなあと思います。



● 物凄い割り切った映画

 この映画を見て思ったのは、相当割り切った映画だということです。

 二時間ぐらいは「沖縄の風俗と自然」を見せれば持つだろう。そういった台詞が聞こえてきそうな映像とシーンがけっこう長く続きます。

 話の密度としては、そんなにないのですが、そういった「映像で間を持たせる」のがけっこう上手く、そこに久石譲のメロディーが被っているために、騙されるようにして映画の時間が過ぎていきます。

 他人の目を引きつけて時間を持たせるには、異文化を見せるのが一番です。

 たとえば古いアメリカ映画なら、まだ誰も見ていないアフリカの映像を見せながら探検映画に仕立てて一本の映画を作ります。

「ソナチネ」は、そういった「見世物」を「沖縄」で上手く成立させています。

 そして、「見世物」で間を持たせるために、「主人公は東京の人間で、事情があって沖縄に行くことになる」というシチュエーションを作り出しています。

 これは、「主人公=観客視点」で異文化に接するという仕掛けです。

 ずるいけど、上手く映像の時間管理をやっているなあと思いました。



● 若い頃は面白いと思わなかっただろうと感じた理由

 実は北野武映画は、かなりの期間見なかった過去があります。二十代の頃に「HANABI」(1997)を見て、「私には合わないなあ」と思ったからです。

 あまりにも静的な展開で、寝落ちしたからです。

 その後「座頭市」(2003)を見て、「なんだ、エンターテインメント映画も撮れるのか」と思い、再び見てみようという気持ちになりました。

 また、「バトル・ロワイアル」(2000)を見た時に、俳優としてのビートたけしの魅力に気付いたことも大きいです。

 ただ、その後の映画の評価があまりよくなかったので見送っていたりして、久し振りに見たのが去年の「アウトレイジ」(2010)でした。

 というわけで「ソナチネ」の話に戻ります。

 先ほど「物凄い割り切った映画」と書きましたが、話の密度はほとんどない映画です。しかし、情感はたっぷりとあります。

 アクション少な目で、エモーションを積み上げていき、最後に言葉にできない虚無感というか無常感というものを映画の時間に充満させる。

 若い頃だと、こういったタイプの映画は、単純に「暇」と感じて切り捨てていました。この年になり、人生の空しさや儚さ、無意味さをひしひしと実感できるようになり、こういった映画にも共感できるようになりました。

 映画や小説などの作品には、それぞれ見るのに最適な年齢があります。そういった意味で、この映画は中年以降で見て楽しめる映画なのではないかと思いました。



● 沖縄的何か

 映画は中盤以降、沖縄で話が展開します。

 この映画では、その沖縄では、まるで少年時代のようにゆったりとした時間が流れます。

 ああ、この時間の流れ、いいなあ。

 そう思わせてくれる弛緩具合です。

 この緩さを助けているのは、「いつこの仕事が終わるか分からない」という「終わりのない夏休み感」です。

 社会人になると、こういった時間こそが最高の贅沢です。

 沖縄という地方には、そういった幸福感を覚えさせる何かがあります。実際にはどうなのか分かりませんが、憧れる人たちの気持ちも分かるなと思いました。

 そして、自分がそういった「沖縄のような何か」に飢えているのだなと感じました。



● 印象的だったシーン

 映画の終盤の襲撃からラストへの展開が圧巻でした。

 それ以外のシーンで印象的だったのは、浜辺で人間が紙相撲風の相撲をとるシーンです。何もすることのない幸福な時間が、非常にコミカルに描かれていました。

 こういったシーンを多く入れることで、映画の密度を下げたまま、観客を飽きさせないように工夫しているのかなと思いました。



● 国舞亜矢

 映画の途中で主人公に惚れる現地の女の子を演じている女優です。

 いわゆる整った感じの美人ではないのですが、健康的で妙にエロスを感じさせる人でした。



● 粗筋

 以下、粗筋です(ラスト近くまで書いています)。

 主人公は、東京のヤクザの幹部。不仲な親分からの命令で、沖縄の組の抗争を納めるために、部下たちを引き連れて沖縄に向かう。

 親分は、主人公を沖縄に行かせて、その縄張りを自分のものにする気でいた。

 沖縄に行った主人公は、様々な話が食い違っていることを知る。しかし、親分からの命令を断るわけにもいかない。

 彼は適当な期間沖縄にいて、その後帰ろうと考える。だが、主人公たちの登場に過剰反応して、抗争は激化する。主人公の部下たちも傷を負ったり倒れたりする。

 主人公は、部下や沖縄の組の兵隊たちと潜伏する。そこで、レイプされそうになっていた女性を助けてなつかれる。

 主人公は、潜伏先から東京の情報を得ようとする。しかしなかなか得ることができない。そして、主人公たちを葬るための刺客が送り込まれてくる。

 自分たちは親分に罠にはめられたことを主人公は知る。

 その親分が、沖縄にやって来るという情報を得る。主人公は報復のために、親分とその関係者を抹殺するために、会合の開かれるホテルに、単身重装備で乗り込んでいく。
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