映画「眼下の敵」のDVDを六月中旬に見ました。
1957年の映画で、監督はディック・パウエル、脚本はウェンデル・メイズ、原作はD・A・レイナーです。
第二次大戦中の、駆逐艦とUボートの戦いを描いた作品です。九十八分と短い映画でしたが、密度が濃くて非常に面白かったです。
● 圧倒的な爆雷
この映画はこれに尽きると思います。
映画の主人公は、駆逐艦の艦長です。この艦長と、Uボートの艦長が交互に描かれて話は進んでいきます。
その駆逐艦が、潜水艦を倒すために爆雷を海に投下します。この爆発と水柱がともかく凄まじかったです。
こんな凄い爆発で、潜水艦に攻撃を掛けるのかと心底驚きました。
この映画の撮影にはアメリカ海軍が全面協力しているそうです。そして、実際の駆逐艦を用いて、砲撃・爆雷投下シーンを撮影しているそうです。
そりゃあ、見ごたえあるわと思いました。
また、細かな生々しいシーンが入っているのもよかったです。たとえば、爆雷を海に投下する際、発射台で操作を誤り、指を持っていかれるシーンとか、リアリティを感じさせてくれました。
しかし何よりも爆音と水柱です。
これだけでも、この映画は見る価値があると思います。
● 好敵手
映画は、駆逐艦のシーンの出来のよさだけでなく、話も熱く、盛り上がります。
それぞれの艦長は、根っから戦争好きではなく、職人として艦長を務めています。そして、どちらも高い技術力を持っています。
その二人が、相手の動きや反応を見ていくうちに、相手が実力者だと分かり、好敵手として戦いを進めていく。
もう、その展開が熱いです。
そして後半になってくると、「いや、これでは駄目だろう。奴なら…」みたいに、口走るようになってきます。
互いに相手の姿どころか、互いの艦すら見ずに、その境地に達していきます。
興奮する内容でした。
● ラストの展開
そして、ラストの展開が非常によかったです。互いの艦長の人柄や価値感が十分に発揮されて、単なる殺し合い映画ではない終結へとなだれこんで行きます。
このラストは、原作とは大きく違うそうです。
でも、映画のラストの方がよいと思います。
互いに好敵手と認めあった二人が、スポーツの試合を終えた後のように、相手に敬意を抱いて行動し合う。
シンプルだけど肉太、そして、映像的魅力とともに、人間的魅力にも満ちた作品。
非常によい映画だなと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(大きなネタバレはなし。終盤直前まで書いています)。
第二次大戦中。主人公は米海軍の駆逐艦の艦長。彼は戦争で妻を失った。そして商船の元船長だった。
彼はUボートを倒すために海を哨戒している。そしてUボートを発見する。
Uボートの艦長は職人肌の男だった。彼はヒトラーに忠誠を誓うことを馬鹿馬鹿しいと考えている。艦内の多くの部下は艦長に心酔している。だが、配属されてきな新人の中には、ヒトラーを敬慕してやまない若者もいた。
駆逐艦の艦長は、Uボートを倒すために爆雷を投下する。しかし、Uボートはその攻撃を巧みに回避する。
それぞれの艦では、断片的な情報から、互いの航路を予測しあって先回りしようとする。
Uボート側には使命があった。指定の日時に、ある場所に行かなければならない。
駆逐艦側ではその動きを察知する。
だが、駆逐艦にも弱みがあった。単体ではUボートを打ち負かすことはできそうもない。彼らには補給を受ける必要があった。爆雷が切れたら、Uボートの餌食になるのは避けられない。
駆逐艦は、近くの艦に応援を要請する。しかし、到着には時間が掛かってしまう。
互いにタイムリミットを持ったまま、戦いは徐々に苛烈を極めていく。そして、駆逐艦の艦長は、敵の実力を見極めた上で、相手を倒すための賭けに出る……。