映画「ザ・ワイルド」のDVDを六月下旬に見ました。
1997年の映画で、監督はリー・タマホリ、脚本はデヴィッド・マメット。主演はアンソニー・ホプキンス、助演はアレック・ボールドウィンです。
一言で言うと「大富豪のアンソニー・ホプキンスが熊と格闘する話」です。大自然との闘いと、人間同士の心理劇が密度濃く入っていて面白かったです。
あと、アンソニー・ホプキンス演じる主役が、ラストで凄い大人の対応でした。
● アンソニー・ホプキンスの静かな魅力
この映画は、アンソニー・ホプキンスの魅力に尽きると思います。
大富豪の主人公は、寡黙で勉強家で、絶えず本を読み、知識を吸収し続けています。
彼は、博覧強記で何でも知っていて、どんなピンチに陥っても、冷静に知識の引き出しを開けて解決方法を取り出します。
そして、どんな困難な状況になっても、しぶとく冷静に生還の道を模索し続けます。
こう書くと荒唐無稽に見えるのですが、その役をアンソニー・ホプキンスが演じると一味違ってきます。
この人なら、本当に何でも知っていて、どんな状況になっても冷静そうだと思えてきます。
圧倒的な自然の前に、立ちふさがるアンソニー・ホプキンス。この構図だけでも燃えます。
さらに、映画も半ばを過ぎると、熊との戦いが始まります。アンソニー・ホプキンスV.S.熊。これだけで、ご飯三杯行けそうな映画でした。
● 知能バトル系のサバイバル
この映画の魅力は、知能バトル系と言ってもよいようなサバイバルです。
主人公は、知識の引き出しから、ともかく解決方法を引き出します。しかし、時に自然がその知識を上回ったりもします。しかし、主人公は落ち込むことなく、次の手を打ち続けます。
この、一見淡々とした主人公の行動と、自然の驚異。そして同行者たちのパニックと絶望。
ビジネスのサバイバルに勝ち残ってきた主人公の、知力と胆力を感じさせる映画でした。
個人的には「雪で火を作るにはどうすればいいと思う?」と、主人公が同行者に問い掛けるシーンが印象的でした。
(答えは、感想の末尾に書いておきます)
● 人間同士の心理劇
「アンソニー・ホプキンスV.S.大自然」だけでも面白いのですが、それでは2時間持ちません。
この映画には、人間同士の心理劇も入っています。主人公は、元モデルの奥さんを愛していて(弱点)、どうもカメラマンの男性と不倫をしている気配がします。しかし、主人公は確証を持てません。
そういった悶々とした状況のまま、事故に遭って冬山で遭難します。その不倫疑惑のカメラマンや、他の仲間たちとともにです。
この「カメラマン以外の人々」は「ライフ・ポイント」要員なので、危機が来るたびに傷付きます。
そして、最後にはカメラマンと二人になり、協力して下山するか、相手が不倫しているか暴くか、さらに不倫をしているのならば復讐するかと、心の葛藤で揺れ動きます。
カメラマンの方も、もし主人公の奥さんと出来ているのならば、主人公を殺して、遺産を奪うという選択肢もあります。
そういった心理劇と大自然の脅威が代わる代わる展開されて飽きさせません。
やはり映画は、人間の心理をきっちりと描かないと二時間持たないなあと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(中盤のラストぐらいまで書いています)。
主人公は初老に差し掛かった大富豪。彼は寡黙で勉強家で、絶えず本を読み、知識を吸収し続けている。主人公は、博覧強記で何でも知っていて、どんなピンチに陥っても、冷静に知識の引き出しを開けて解決方法を探り出す。
そんな彼が、元モデルの女性と結婚した。そして、彼女とその友人たちと共に、冬山に遊びに行くことになる。妻の友人たちはみんな若く、主人公は自分が浮いていることを自覚する。また、カメラマンの男と妻が、よい雰囲気なのが気に掛かる。
冬山の山荘で過ごしているうちに、主人公はカメラマンと妻の浮気を疑うようになる。
カメラマンは、被写体を探して、飛行機で冬山の奥に行くことを提案する。男性たちはその場所に行くことになる。主人公も誘われて同行する。
その飛行機が事故で墜落した。通信手段はなく、一行は冬山で遭難する。主人公は、冷静に知識をひもとき、サバイバルしながらの下山を始める。一行は半信半疑だったが、唯一の頼りとして主人公に従う。
だが、サバイバルは難航する。そして、熊が彼らのことを見つけ、追跡を始める。仲間は一人一人殺されていく。
そういった中、主人公はカメラマンと妻の不倫を疑い葛藤する。また、カメラマンも、主人公のそういった思いを見抜き警戒する。
そして、徐々に人の数は減り、主人公とカメラマンだけが残される。主人公は、熊から逃れられないのならば迎撃するしかないと主張し、二人で熊に戦いを挑むことを決める。
雪で火を作る方法:
雪で氷を作り、氷でレンズを作り、レンズで火をおこす。
絶望しかけていた同行者に、どんな困難な状況でも、次の一手は必ずあると行動で示すシーンで使われました。