映画「フローズン・リバー」のDVDを九月中旬に見ました。
2008年の映画で、監督・脚本はコートニー・ハント。主演はメリッサ・レオです。
アメリカの現代社会の一側面を描いたドラマ。シングルマザーと国境での密入国を扱っています。なかなか面白かったです。
● アメリカ人の消費
この映画の主人公は、アメリカでは下の上(〜中)ぐらいの経済階級の人だと思います。
その主人公の女性の消費スタイルに、唖然としました。
主人公の旦那はギャンブル依存症で、それはまあ世界中どこにでもあると思います。
でも、それを反面教師として子供を育てている主人公の経済観念のなさが半端ではなかったです。
日本人の感覚からしたら「金がないなら不要な消費を絞って借金をなくせばよい」と思うのですが、アメリカではそうではないようです。
サブプライム・ローン問題の時にも取り上げられましたが、アメリカ人は金がなくても消費を絞らず、生活レベルをそのまま維持して、借金で支払いを先延ばしにしようとします。
その結果、金利地獄に陥って、貧乏から脱出不可能になります。
この映画の主人公も、金がないのに高いテレビをレンタルして、家(トレーラーハウス)を買い換えようとして、ともかく消費を続けます。
貧乏だから教育を受けていなくて金計算ができないのか、金計算ができないから貧乏で教育を受けられないのか分かりませんが、これじゃあ、堂々巡りだなと思いました。
ともかく凄まじい浪費っぷりに、映画本編のストーリーよりも驚きました。
● 密入国
この映画の舞台は、カナダとの国境線です。そこでは密入国が横行しています。
自分で金を持った移民も少しはいるのでしょうが、この映画で見られるように、売春などのための人身売買も多いと思います。
多額の借金を付けて国境越えをさせて、その後ほぼ無給で働かせ続けるというやり方です。
最近だと、横浜などの中華街でもこの方式での入国が多いと記事で読みました。
日本だと国境が陸伝いではないのでそれほど見られませんが、国境が陸地の国では非常に多い問題なのだろうなと思いました。
● 公権力との距離感
この映画で印象に残ったのは、一般人の公権力との距離感です。警察と一般人の距離感が随分日本と違います。
なんというか、日本と違って、治安維持とか、そういったものが民衆側に随分寄っているという印象です。
ここらへんは、アメリカの成立と民衆の考え方が基本にあるのだろうなと思いました。
● 自治区
アメリカには、特定の民族(インディアン)の自治区があるようです。
この映画では、三つの場所(アメリカ、先住民モホーク族の保留地、カナダ)を描くことで、変化を付けていました。
印象的だったのは、保留地の自治組織が、自分たちの民族の犯罪者を、アメリカの公権力に渡すかどうかを決めていたことです。
こういった感覚は、日本ではあまりないなあと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(ネタバレあり。最後まで書いています)。
主人公は子供二人を抱える女性。彼女の夫はギャンブル依存症で失踪する。夫が乗っていった車には、トレーラーハウスの買い替えに必要な金が入っていた。主人公は慌てて取り返そうとする。
その際、モホーク族の女性と知り合う。彼女は車を勝手に持って行っていた。彼女は未婚の子供がおり、その子供は父方の祖母に引き取られていた。
モホーク族の女性は密入国の仕事をしていた。主人公は、その手伝いをするが、手痛い目に遭う。
だが、上手くやれば金が入る。そのことを知った彼女は、モホーク族の女性と組んで、密入国で金儲けをする。
彼女の家庭は、金がなく、破産寸前だった。家の苦境を見た息子は、詐欺で金を稼ごうとしていた。
主人公は密入国を続けて、欲しい物を手に入れようとする。しかし上手い話はなかった。警察が密入国の捜査をしていた。
主人公は逮捕され、刑務所に入る。
以下、ネタバレありの感想です。
● 密入国者の荷物の廃棄
映画中、主人公が、密入国者から与った荷物を勝手に捨てます。
その中味が赤ん坊で大変なことになります。
いやこれ、中味が赤ん坊でなくても、勝手に捨てたら大問題だろうと思いました。
人の荷物を預かって、本人に確認も取らずに捨てるのはあり得ないと思いました。
こういったところががルーズだから、底辺のままなのかなと、少し思ってしまいました。
まあ経済的問題に関しては、実際は、本人の資質ではなく、構造的な問題なのでしょうが。