映画「パーフェクト・ワールド」のDVDを十一月上旬に見ました。
1993年の映画で、監督はクリント・イーストウッド、脚本はジョン・リー・ハンコック、主演はケヴィン・コスナーで、脇役でクリント・イーストウッド自身も出ています。
この映画を見て思ったことは、たぶんイーストウッドは、若い頃だったら自分で主演をしていたのだろうなということです。イーストウッドっぽい内容(旅物)でしたので。
あと、この映画のタイトルは、プレーンすぎて記憶に残りにくいです。しばらく経った後にタイトルを見て、「どんな映画だったっけ?」と思ってしまいましたので。
● 脱獄犯と少年
主人公は脱獄犯です。そしてその主人公に誘拐される少年は、ちょっと変わった背景を持っています。
少年の家は母子家庭です。そして少年は父親を知りません。彼の家庭はエホバの証人です。少年は厳しい戒律の下、人生を楽しむ術を与えられずに育てられています。
そのため主人公は、少年が初めてまともに触れる父性になります。
そして主人公は、父子関係に、拭いがたいトラウマを持っている人間です。
この映画は、少年にとっての「父子」の物語でありながら、また主人公にとっての「父子」の物語でもある、そういった作りになっていました。
● 州警察署長と犯罪心理学者とFBI
映画では、もう一つのストーリーラインがあります。それは、昔気質の州警察署長と、若い女性犯罪心理学者です。
豊富な経験と地元知識に裏づけされた捜査をおこなう署長と、アカデミックな視点で犯罪者の行動を分析しようとする犯罪心理学者。
最初は対立しますが、徐々に署長が何を考えて動いているのかが分かり、女性犯罪心理学者が署長に共感していきます。
署長はかつて、主人公を逮捕したという因縁を持っており、そのことを悔いていたという過去が明らかになってきます。
● イーストウッドの描く旅物
これは、イーストウッドの映画だなというのが、正直な感想です。
異色の取り合わせで旅が続き、そして、結末を迎える。どこかユーモアでありながらも、どこか物悲しい。そんな旅の話です。
主人公と少年の物語も「旅」の話なのですが、警察署長の側も「旅」の話になっています。
なぜなら、警察署長は、ちょっとした経緯があり、キャンピングカーで犯人を追うようになるからです。
● 粗筋
以下、粗筋です(ネタバレあり。最後まで書いています)。
主人公は囚人。彼は犯罪者のわりには真面目な人間だ。
彼は気の合わない男と二人で刑務所を抜ける。そして、ある家庭で少年に会い、成り行きで誘拐する。主人公は、仲間と少年と三人で逃走することになる。
主人公と仲間の男は対立し、男は死体になる。主人公と少年は二人で旅をすることになる。
その頃、この事件を、地元の警察署長が追っていた。彼は、無理矢理押しかけて来た女性犯罪心理学者を連れて追跡することになる。
警察署長は、かつて主人公を逮捕した。署長は、主人公の家庭環境があまりにも劣悪なのを知り、刑務所に避難させようとした。しかしそのせいで、主人公は常習犯になってしまった。
主人公と少年は、旅をしながら心を通わせていく。母親の抑圧の下に育った少年は、徐々に感情を解放させていく。
しかし、事件が起きる。二人が泊まった先で、住人と主人公の間に争いが起きる。主人公は、子供に暴力を振るう家主が許せなかったのだ。
そして少年が主人公を撃ってしまう。主人公は腹に傷を負う。そこに警察がやって来る。
少年は、主人公を慕っていた。少年は主人公のことを心配する。
警察署長は主人公を連れて、パトカーが居並ぶ場所に戻ろうとする。だが、主人公が銃を抜くと勘違いしたFBIが、主人公を射殺してしまう。