押井守監督の最新作「イノセンス」を昨日見てきました。映画の感想を一言で言うと、「わー、トグサ頑張っているなあ」でした。えー、つまり、攻殻機動隊2です。誰ですかこれを「イノセンス」なんて名前を付けて、原作の「
攻殻機動隊」を知らない人向けに売ろうと考えた人は。
(以下、あまりネタばれはないですが、少々ネタばれを交えて)
「イノセンス」は、正しい攻殻機動隊映画です。だけど、攻殻機動隊を知らない人はポカーンとする映画です。というか映画観賞後、カップルで見に来ていた人たちを観察していると、女性が「あの場面あたりから、ストーリーがまったく分からなくなった」とか言っているような映画です。
あの時点で奴はハッキングされて、擬似体験に飛ばされているんだよ、その前振りがコンビニのシーンで、さらにコンビニのシーンの前振りが襲撃シーンで……、いちおう凄い観察力と集中力を持っている人なら、攻殻機動隊を知らないでも瞬間的に理解できるかもしれません。何となく彼氏についてきた女の子では無理……。
押井守の作品で、私が嫌いな「途中で話しがダルダルになって停滞する構成」も相変わらずでした。今回は一般向けに売るというから、少しは改善されることを期待していたのですが。
去年、普段芸術家肌の映画をつくる北野武が「
座頭市」で見せた、マスに向けての映画作りを、押井守もできるかなあと思っていたのですが、それは駄目でした。
でもまあ、会話の解説が映画内で入っているのは、努力したのかなあとも思いました。しかし、あれは「攻殻機動隊の欄外の解説を台詞でやっているだけ」という解釈もあるのですが。
とまあ、否定的なことを書きましたが、攻殻機動隊映画としては満足できるできでした。
ネット上のいろんなサイトで書かれている「会話で聖書や哲学的な長文の言葉を凄い勢いで引用するのは、電脳で検索をかけた台詞をしゃべっているから」というのもうまい表現でした。これは、2チャンねらーの、アスキーアートコピペと同じですね。多分、彼らは毎日同じような会話を繰り広げているんだと思います。
また、敵の電脳をハックして、誤情報を認識させるという戦い方も、非常に攻殻機動隊っぽかったです。あと戦闘中、バトーの視点での、視覚への情報レイヤーの重ね方も、実際の軍事技術の延長を感じさせる演出でよかったです。
映像の質感も凝っていて、画面の湿度の付け方は、
アヴァロンの延長線上にあり、これはいい効果を発揮していました。
ただ、CGが妙にCGっぽい使われ方をされていたりして違和感を感じました。これは、「
メトロポリス」ほどではないにしろ(プログラムを見るとスタッフがこの線)、なんでああするのかなあと思いました。あんなテカテカの金属光沢でなく、マットな質感にすればいいのにと、映画を見ながらずっと気になりました。
「イノセンス」は、攻殻機動隊のファンや押井守のファンなら映画館で見る価値があります。「映画館で見る価値がある」という理由は、背景や色の作りこみの密度が濃いので、テレビ画面では同じものを再現できないからです。あと、音でバトーの重量(サイボーグなので人間より重い)を表現したりしているので、これもテレビのスピーカーだと再現できない家庭が多いと思います。
「イノセンス」は、攻殻機動隊を読んでいない人には地雷だと思います。ほとんど説明なしに、ストーリーが追えなくなるようなギミックがいろいろと入っていますので。
最後に、人形がエロかったです。ズルいほどエロい。球体関節人形好きな人はお勧めです。あと、音楽もよかったです。あのアジアンな感じの音楽はかなりツボに入りました。