2004年12月11日 23:13:03
片塰様から補足メールが来て、その後いくつか質問をして、その分をまとめた文章を頂きましたので、以下追加掲載いたします。リアルタイムで喋った内容というのは、色々とエラーがあったり、誤解が挟まったりもしますね。あとになって気になる部分もありますし。
追記:
片塰様より補足メールを頂きました。以下、その内容を全文そのまままの形で掲載いたします。なお、本文章の掲載に関しては、片塰様の了承を得ております。(追記掲載日:2004年12月11日)
ジブリを訪ねたのは、テレコムアニメーション(宮崎監督も一時在籍していたスタジオです)出身で、学生時代アニメージュ編集部でアルバイトをした経験もあるリンクスのCGアニメータの仲介により、ジブリの鈴木プロデューサにコンタクトできたのが発端でした。
デジタルカメラの使用については、空気やレンズを通したときの光の現象を拾うことが目的なのですが、他の理由としては照明を従来の撮影と同様に左右から照らすため、紙や絵の具の凹凸が目立ちにくくなる、といった利点があります。スキャナーは正面から光を当てるので、凹凸の厚み部分が暗くなり、結果凹凸が目立ってしまいます。
また、撮影台を使用することで、大判の背景を分割して取り込む場合、正確に上下、左右に移動することが可能なので、デジタル上で張り合わせる時に作業が行いやすいのです。傾きの補正をしないですむため、画質が落ちることがありません。もちろんレンズを使うことで、レンズの収差による、画面の歪みが若干生じるのですが、この歪みは(レンズを変えない限り)常に一定なので、歪みを補正するプログラムを開発して、自動処理で歪みを解消しています。
こういったオリジナルのプログラムを開発するため、社内には2名のプログラマが在籍しています。プログラマの仕事としては、既存のアプリケーションには無い機能を開発して追加したり、使い勝手を良くするための改良を加えたりといったことです。たとえば、Softimage|3Dのカメラの画角の操作を、レイアウト用紙上で指定するような考え方で、操作できるようにしたり、アニメーションを3コマ打ちにするため、アニメーションのグラフを操作できるようにしたり、といった物があります。また画像処理としては、絵の具の滲みのような効果を加えたり、流線の効果を加えたりといったものが挙げられます。3DCGにおいては、オリジナルのセル画風シェーダや線の集積(ハッチング)による陰影を描くシェーダ等を開発しています。またクロスシミュレーションやパーティクル、といった物理の知識が必要なアニメーションを担当したりもします。
画像の解像度ですが、CG部(デジタル作画班)の作業画素数は2458*1328で、そのうちフレーム内に収まるのは2048*1108ピクセルです。画面の比率は、1:1.85になります。DPIに換算すると、フレームの横サイズは12.6インチなので2048÷12.6で162.5397dpiになります。
因みにデジタルカメラによる背景の取り込みは、229.425〜300dpiの範囲で行います。デジタルペイントの解像度はCGの解像度の倍で、およそ325dpiになります。かなり高い解像度といえますが、それでも線の太さは3〜6ピクセル程度で、線の抑揚の再現は苦労する点です。線の状態は鉛筆描きの質感を再現するのではなく、セルに転写された状態を理想としています。しかし、ギブリーズやTV−CFのような特殊なスタイルの画面を作る時は、線のかすれを活かすためにグレースケールのモードで作業を行います。
まだデータバックアップについては、間違った答えをしてしまいました。データストレージは約5テラバイトの容量があります。それをバックアップのために、別の5テラのストレージに同一のイメージを保存しています。ミラーリングではないのですが、一定時間ごとに同じデータイメージを移しているそうです。私は、全体で5テラのストレージ内で、同じイメージを保存していると誤解していたため、2.4テラの容量とお答えしてしまいましたが、実際には(ほぼ)5テラのストレージが2基存在しており、ユーザが使えるのは正味5テラになります。間違った数字を答えてしまい、すみませんでした。
(以上追記了)