2005年10月03日 14:00:14
映画「シン・シティ」を昨日見てきました。
いや〜、野心的な映画だ。面白かったです。でも、公開初週なのに映画館スカスカだったんですが。日本での知名度低過ぎ?
「シン・シティ」は、同名のアメコミの映画化。それも、原作者を共同監督に迎えての完全映画化。この映画の凄いところは、マンガの印象を映画の画面でそのまま再現してしまったところ。
見ておく価値のある映画です。それも映画館で。テレビで見ると、この映画の良さはほとんど死んでしまうでしょう。映像美が、テレビの解像度と階調では、まったく再現できないので。
さて、本作は語るべき点が多いので、いくつかの項目に分けて、順次語っていくことにします。
項目は、以下の通りです。
・グラフィック
・モノクロ映画とは違うモノクロ画面
・キャラクターの演技とナレーション
・動感の表現
・監督
・物語
・街が主役の三つの物語
・ハードボイルドとバイオレンス
・登場人物
・ナンシー(ジェシカ・アルバ)
・ケビン(イライジャ・ウッド)
・マーブ(ミッキー・ローク)
・ハーティ・ガン(ブルース・ウィルス)
・ドワイト(クライブ・オーウェン)
・ミホ(デヴォン青木)
やたら多いですね。それだけ、語るべき点が多いということです。
■ グラフィック
● モノクロ映画とは違うモノクロ画面
「シン・シティ」は、「基本的にモノクロ」で、「ところどころ色が付くこともある」という色彩設計の映画です。でも、初見でいきなりびっくり。「えっ、このコントラストって普通のフィルムでできるの?(普通に撮ったらこうならない)」
種を明かせば簡単なことで、人物をグリーン・スクリーンの前で撮り、背景はほとんど合成。なので、まるでモノクロのマンガを彷彿とさせるパキッとしたシャープなモノクロシーンが作れていたわけです。
ともかく、白が白なのにびっくりしました。普通、白黒映画では、薄いグレーから濃いグレーで画面が表わされるのですが、「シン・シティ」の画面では、白が白としてきちんとあるのに、その他の部分との境界がハレーションを起こしていない。「これはマンガの絵の世界だ」とマジで思いました。
人によっては、白黒のなかに色の付いたキャラクターなどが出て来るところに目が行くのでしょうが、私は最初に画面を見たときに、この部分に一番目が行きました。
「面白い画面作ったな」それが素直な印象でした。
● キャラクターの演技とナレーション
「シン・シティ」の特徴の1つは、ほぼ全編、ナレーションというかモノローグが延々と流れることです。登場人物の心情や、今何が起こっているかなどが、小説を延々と朗読しているかのように流れ続けるのです。
これが、非常に映画の雰囲気を盛り上げています。
この部分を面白がって映画を見ているうちに、「やたらとキャラクターがカメラに寄って演技をしている」印象を持ちました。(実際にそういうシーンが多かったかどうかは、カウントしていないので分かりません)
「これはどういうことだ?」と思いながら映画を見ていたのですが、その時点では理由が思い当たりませんでした。
これについては、家に帰ってきてから理由を考えました。
出てきた推測は「これは、音のなかった時代の映画の手法と同じなのではないか?」でした。
ベラ・バラージュの「映画の理論」という本があります。この本には、「映画にサウンドが入る前」と「入った後」で、どのように映画の表現が変わったかという変遷が詳しく書かれています。
この本によると、サウンドがなかった頃の映画というのは、表情のクローズアップが多く、表情による演技が非常に優勢だったそうです。その理由は、「台詞がきちんと入るサウンド付きの映画では、顔をクローズアップして音声と同期させると、口元の動きと声の明瞭さの関係で合わないことがある」ということでした。なので、気にならないサイズまでカメラを引いて、喋らせることが多いと。
「シン・シティ」では、本来なら台詞で喋って説明しないといけないことを、モノローグで語ってしまうせいで、声と口を合わせる必要のないシーンが大量にあります。なので、カメラをキャラクターに思いっきりよせて、台詞と関係なく顔で演技をさせられるシーンが多くなっているのではないかと感じました。
顔のアップはマンガっぽいですから、そういう意味でもマンガの再現に貢献していそうだなと思いました。
● 動感の表現
やたら動きの感覚がいいです。
その理由の1つとして、背景の動きで動感を表現しているシーンが非常にうまく行っているというのがあります。
この映画は、多くのシーンで背景をCGで作って合成しています。そのなかでも、「キャラクターを固定して背景を高速で動かすことで画面の動きを表現しているシーン」がよくできています。これは、マンガで言うと、キャラクターは静止絵で背景に動線が描かれているのと同じです。
あと、画面がモノクロなので、少々画面を思いっきり動かしても、カラーほど目に負担が来ないというのも利点の1つになっているように感じました。
また、マンガ的ということで少し補足をしておくと、こういったCGを使った表現はほかにも多くあり、例えば「雨の描写」ではCGで「絵のような雨」を加えたりしていて、いろんな場所でマンガ的に表現する手法が入っていました。
あと、動感というかこれはフィルムの切り方も関係しているのでしょうが、物凄いテンポがいいです。徹夜明けで眠かったのですが、どんどん引き込まれて覚醒していきました。
■ 監督
本作のメイン監督は、「デスペラード」や「スパイ・キッズ」のロバート・ロドリゲス。彼が、「シン・シティ」の原作者フランク・ミラーを口説き落とし、共同監督という形で映画化しました。
この過程で、「1本の映画には監督は1人だけ」という規則のある全米監督協会をロバート・ロドリゲスは脱退。なかなかハードな状況だったようです。
そして、クエンティン・タランティーノ。
ロバート・ロドリゲスの兄貴分らしい彼が、1シーンだけ監督を務めているのですが、そのお値段は1ドル。キル・ビルの音楽をロバート・ロドリゲスが1ドルで作ってくれたお礼の値段だそうです。
あと、キル・ビルで出てくる服部半蔵ソードを、そのまま「シン・シティ」の女武芸者のミホが使っているとのこと。少し面白いエピソードでした。
■ 物語
● 街が主役の三つの物語
「シン・シティ」は、映画としては非常に変わったストーリーです。
「シン・シティ」という街を舞台に、3つの独立した話が、いくつかのシーンで接触しながら進行していくという内容です。ただし、接触はするけど、影響はほとんど与えない。
街が主役で、その上で「住人たちの愛と正義のストーリー」が展開します。最初は、そういった作りに不安を感じていたのですが、すぐに安心できました。1個1個のストーリーが、なかなかヘビーでパンチが効いてたので。
もともと原作で独立していた3つのシリーズを、1本の映画にまとめたそうです。1本だけだと「街が主役」というコンセプトを出せないと判断したのだと思います。
なかなか面白い脚本だったので、その点でも楽しむことができました。
● ハードボイルドとバイオレンス
ともかく、3人の主人公がハードボイルド。格好いい。そして、主人公を含めて、みんなバイオレンス。
そのバイオレンスの描写が尋常じゃない。R15指定になっているのも頷ける内容が次々に。
手足を切ってダルマにした敵を下半身から順に犬に食わせたり、刑事が性犯罪者の股間を銃で打ち抜いたり、相手の顔をアスファルトに付けたまま車で引きずったり、ともかくバイオレンスシーンが盛りだくさん。
「シン・シティ」という街の特殊性を考えると、当然こういったバイオレンスの描写が必要で、そういった世界観であるからこそ主人公たちのハードボイルドも様になる。
ともかく、重くて、暗くて、パワフルな世界がそこにはありました。
(TRPGをやっている人は、シティ・アドベンチャーの新たな資料として「シン・シティ」をぜひとも加える必要があるでしょう)
■ 登場人物
最後に登場人物や俳優について少し書いておきます。
● ナンシー(ジェシカ・アルバ)
本映画でのジェシカ・アルバの美しさはヤバイです。クラクラきます。
彼女はストリッパー役なのですが、実際にストリップを見に行き、本物のストリッパーにいろいろと心構えなどを教わり、予習をしていたそうです。そしてやる気まんまんで撮影に来たら、彼女の父親から「ストリップはまずい」と言われて、裸にはならなかったというエピソードがプログラムに書いてありました。
ジェシカ・アルバの裸はぜひ見たかったです。
● ケビン(イライジャ・ウッド)
この映画で、一番キテいるシリアルキラー。
何と言うか、いろんな意味でヤバイキャラです。眼鏡を掛けた無表情の大学生にしか見えない彼なのですが、女の子をさらってきて、人肉ステーキを作って食べ、首は剥製にして飾っているという人。そしてそういったことを、眉1つ動かさずに淡々とする。
そして、恐ろしいほど素早くて強い。さらに痛みも感じない。
イライジャ・ウッド、まじで怖いのですが。
● マーブ(ミッキー・ローク)
本作のなかで、一番格好よかった主人公。「漢」ですよ。
体も顔も大きく怖く、今まで女性経験のなかった彼。ただ1度自分の相手をしてくれた女性がその夜に殺された。そして、マーブはその殺しの犯人として警察に追われてしまう。
彼は、たった一夜の相手をしてくれた彼女のために、犯人を見つけて復讐をすることを誓う。
重戦車のように強くて頼もしい男でした。
● ハーティ・ガン(ブルース・ウィルス)
主人公の1人。
ともかくストイックな刑事。これも格好よいです。彼も「漢」だ。
それにしても、11歳の少女を助けて、その少女から惚れられるなんて羨ましい限りです。
● ドワイト(クライブ・オーウェン)
主人公の1人。
どこかで見た顔だなと思ったら、キング・アーサーでアーサー役の人でした。見たはずです。しかし、最初役所広司かと思いました。顔がどこか似ています。
● ミホ(デヴォン青木)
女武芸者。台詞を喋らず、淡々と殺していく。こちらはケビンと違い、“職人”という感じでいい役でした。
取りとめもなく感想を書きましたが、野心的で挑戦的で、なおかつ唸らせる出来でした。
これはいい映画でした。