2005年11月05日 03:18:35
映画「ロスト・イン・トランスレーション」のDVDを10月の上旬に見ました。
思ったよりも楽しかったです。
ソフィア・コッポラという女性監督の作品で、あまり派手さがない映画なので、もっと私には肌合いが合わないかと思っていたのですが、退屈することもなく最後まで楽しく見ることができました。
どういう映画かというと、「東京にやってきた外人中年男性と外人若妻が出会って恋に落ちる」というお話です。以下粗筋。
ハリウッド映画の俳優である主人公は、CM撮影のために日本に来ていた。しかし、通訳の実力不足や日本人の下手な英語や慣習の違いから、ホームシックにかかっている。また、妻との関係が冷え切っており、中年の危機を迎えていた。
その彼が滞在しているホテルに、カメラマンの夫を持つ若妻も泊まっていた。彼女は大学の哲学科を出たばかりで、まだ自分がやりたいことを見つけられていない。彼女は仕事中心の夫に少しだけ不満を持っている。
彼ら2人はホテル内で何度か顔を合わせるうちに仲よくなり、外に遊びに行くことになる。
数日いろいろと遊び歩いたあと、それぞれが直面していることを語り合う。主人公は、ヒロインに若い頃の妻の立場を感じ、ヒロインは主人公に年を取ったときの夫の立場を感じる。
2人の心は近付き、そして旅の間の恋に発展する。
前半は「言葉が通じないもどかしさ」がこれでもかと描かれ、後半は「異邦人である2人が引かれていく様」が描かれています。
これが、なかなか丁寧で好感が持てます。
しかしまあ、主人公を見ていて、通訳のレベルが低いと大変だなと思いました。
主人公は、CM撮影中、監督からいろいろと注文を受けます。それを通訳が翻訳して伝えるのですが、これが全く駄目。そのときに言った主人公の台詞が以下のようなものです。
「監督が言っている言葉の数より、通訳のあなたが言っている言葉の数の方が、物凄く少なく感じるのですが……」
つまり、「通訳、すごい勢いで抜け落ちているんじゃない?」ということです。この言葉が、彼の頼りなさを如実に物語っていました。
そしてその挙句、「言うことを全然聞かない人だ」と監督に怒られます。そりゃあ、ホームシックにもかかるわと思いました。
あとは、舞台が東京なのが面白かったです。
映画の舞台は東京なので、関東在住の人は一発でどこで撮影していたか分かります。なかなかファンタスティックな街だなと思いました。変な街だ東京は(^^;
軽過ぎず、重過ぎず。いい具合のトーンで描かれた楽しい映画でした。
しかしまあ、Amazonのレビューがぱっくりと割れていますね。133件全部読んでみました。くそみそにけなすか、べた褒めか。そういう傾向が強かったです。
けなしている人の主張は「日本を馬鹿にされているから」がほとんどでした。もしくは、意味がよく分からない。
褒めている人は、ソフィア・コッポラの才能を認めるというものが多かったようです。あと、「『日本を馬鹿にしている』という主張をしている人たちは間違っている」という意見。
映画を見た私の感想ですが、ソフィア・コッポラは才能もあるし、映画もよく出来ています。楽しむ能力が必要なタイプの映画ではあると思いますが。世の中には、「ビールは苦いだけで美味しくない」という人もいますから。
あと、何より「間の表現」と「展開の繋ぎ方」が上手かったです。こういった静かな映画なのに、まったく退屈させない進行は「やるなあ」と思いました。