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2005年12月10日 09:35:05
 映画「フック」のDVDを11月上旬に見ました。

 スピルバーグの童心に当てられ、そこはかとなく子供の心に返れました。

 なかなか楽しかったです。この映画はファンが多そうだなと思いました。



 以下、粗筋です。(ネタばれ?……ではないはず)

 M&Aで急成長する会社の社長ピーター・バーニングは、妻と息子と娘を抱える一家の長。

 元孤児の彼は、育ての親ウェンディの許へと一家で行く。老ウェンディはこれまで多くの孤児を引き取り育ててきた。そして今度は彼女の名を冠した小児病院が建設される。ピーターはその記念式典に夫婦で出席する。

 式から帰ってきたピーターたちは驚く。二人の子供がいなくなっていたからだ。そして扉には、「子供は預かった。返して欲しければ取り返しに来い。byフック」というメッセージが。

 狼狽する夫婦。そんな彼らを見たウェンディは、ピーターを呼び、驚くべき告白をする。

 ピーター・パンの話は本当で、老ウェンディはあの話のウェンディ本人だと。そしてピーター・バーニングこそは、ピーター・パンの成長した姿であると。

 「まさか」と相手にしないピーター。しかしその夜、開いた窓からティンカー・ベルがやって来て、ピーターをネバーランドに連れ去る。

 ピーターとティンカーは、子供を取り返しにフック船長の許に行く。だが童心を忘れたピーターは空も飛べず、剣も使えず、おろおろするだけ。そして呆気なく捕まってしまう。

 落胆するフック船長に、ティンカーは「7日間あれば、ピーターを叩き直してやるわ!」とフックを挑発する。

 「2日なら待ってやろう」「4日は必要よ」「3日しか待てん」「いいわよ、じゃあ3日ね」ということで、交渉成立。ピーターは解放された。

 ピーターは童心を取り戻すべく、“迷い子”と称される子供たちの住む場所に行く。そして、猛特訓を始めるのだが……。

 といった感じです。これ以上はネタばれなので、ここまで。



 童心を忘れた大人が、子供心を取り戻して幸福になる。そしてそこに親子の愛が絡んでくる。そんな、スピルバーグらしいアットホームなファンタジー・ストーリーです。

 大人も子供も楽しめます。

 冬のクリスマスの時期などにおすすめの映画ですね。



 さて、以下個人的な感想です。

 この映画を見ていて、非常に気になったのはロング・ショットがほとんどないことです。

 遠景が映るシーンは、「説明のためにネバーランドを俯瞰するシーン」と「崖の上から、人間視点で、少し見下ろす感じで海賊船を見るシーン」ぐらいです。

 この2つのショットはそれぞれ何度か出て来るのですが、基本的に全て同じアングルとフレームです。

 さらに、この2つのうちの「海賊船を見るシーン」は、「ピーターがカメラの近くに立ち、崖から見下ろしている」という構図です。そのため、本当の意味でのロング・ショットではありません。

 それ以外は、ほとんどがミディアム・ショットです。

 映画を見ていた感じたのは、「カメラがずっと近すぎて息苦しい」ということです。

 ピーター・パンと言えば、空を楽しく滑空するイメージがあるのですが、そういった開放感は皆無です。密度感や豪華感はあるのですが、それは閉塞感を伴ったものでした。

 なぜだろうと思いながら映画を見続けていたのですが、理由は2つあるように思えました。

 まず1つめです。

 DVDにはメイキングの映像が付いていました。それを見ると、「ネバーランドの舞台は、巨大なソニー・スタジオのなかに構築した」ということで、その現場やセットの作られ方が紹介されていました。

 そこで知ったのですが、セットはディズニーランドのアトラクションのように、全て隣接して作られていました。「海賊船と港の裏には、子供達の住む島があって……」という感じです。

 つまり、カメラを引くと、関係ないセットがフレームのなかに入ってしまうわけです。なので、ある一定以上、カメラが後ろに下がらない。

 CGばりばりの時代ではないので、「撮るだけ撮って、あとから修正する」というわけにもいきません。そういった制約があったのではないかと考えました。

 次は2つめです。

 これはもしかしたら、スピルバーグの癖なのかもしれないと思いました。

 私の記憶の範囲内ですが、この当時ぐらいまでは、スピルバーグのほかの作品でも、印象的なロング・ショットがあまりないような気がします。(遠景は映していても、カメラの近くに人がいたりする)

 私の勝手な想像なのですが、スピルバーグ監督は、基本的に主観視点でカメラワークを考えており、そのために必然的にカメラが近いのかもしれません。

 ETのときに、「子供視点に合わせて、カメラを子供の目の高さにして撮影した」というエピソードを持つ監督ですし。

 また、この「フック」という映画の物語自体、完全に主観視点の映画ですので。

 最終的な原因がどこにあるのかは分かりませんでしたが、ともかくカメラが近すぎる印象を持ちました。

 (ただ単に、テレビのフレームのせいで、距離感が狂ってしまっている可能性もあるなとは思いましたが……)



 次は、“デブキャラ・ウォッチ”です。

 冒険物でデブなキャラクターが出てきた場合、たいていキーパーソンになります。これは、ドラえもんの映画で「ジャイアン」が良い奴になるのと同じ現象です。

 上記のような“デブキャラ”に対する暗黙の了解があるので、本作でデブキャラが登場した瞬間、私は“デブキャラ・ウォッチ”を開始しました。

 「このデブは、いったいどんな活躍をしてくれるんだ?」と。

 いや〜、「フック」のデブは大活躍ですよ。素晴らしい。デブキャラの特性をいかんなく発揮し、美味しいところを持っていってくれます。

 「やはり、冒険物にはデブキャラは欠かせないよな〜!」と、楽しみながらデブキャラを観察しました。



 お次は、キャラの第一印象です。

 「ティンカー・ベル、幸薄そうだな……」

 出てきた瞬間、その顔と姿を見てそう思いました。ジュリア・ロバーツなので美人なのですが、やたら幸が薄そうです。

 何と言うか、「失恋して、忘れられて終わりそうなオーラ」が滲み出ています。

 いやまあ、ある意味、異種姦志望の女の子なので、幸が薄くて当然なのですが、「女優自体も幸が薄そう」とまで感じました。

 一発屋で終わりそうな雰囲気が……。まあ、ジュリア・ロバーツなので、その後普通に活躍しているのですが。

 もし「そういう第一印象」を狙って役を作ったのならば、ジュリア・ロバーツ恐るべしと思いました。もしくは起用したスピルバーグが恐るべしなのかもしれませんが。



 続いて音楽です。

 BGMが流れた瞬間に、「スターウォーズの人だ!」と思い、それ以降、そればかりが気になってしまいました。

 スタッフ・ロールを見て確認しましたが、ジョン・ウィリアムスです。あー、やっぱり。テーマ曲の旋律が、スターウォーズのBGMの一つに物凄いそっくりだったので。

 この人も多作ですからね。何かほかの作品と曲調が被るのは仕方がないのかなと思いました。



 最後はチャンバラです。

 いやまあ、ロビン・ウィリアムズも、ダスティン・ホフマンも、アクションスターじゃないので、あんなものにしかならないですね。

 チャンバラは下手です。

 あと、チャンバラついでに、血も流れません。お子様でも見られる映画なので、えぐい描写はまったくなかったです。



 そんなわけで140分ぐらいの長い映画なのですが、きっちりと楽しむことができました。
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