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2005年12月13日 02:20:10
 映画「ダゴン」のDVDを11月上旬に見ました。

 「H.P.ラブクラフトのダゴン」と副題が付いているように、クトゥルフ物です。

 感想は、「まあこんなもんだよね」という感じです。ほかのクトゥルフ物と同じで、予想通りB級でした。



 以下、粗筋です。

 株で大儲けをした主人公は、恋人と、友人カップルとともにスペインにクルージングに来ていた。

 しかし、突如の嵐で船は座礁する。そして友人の女性が怪我を負ってしまう。

 主人公と恋人は、救援を呼ぶために、近くに見える古そうな町にボートで向かった。

 二人は港に着き、人通りのない町を進んでいく。すると教会が見えてきた。だがそこは、普通の教会ではなく“ダゴン教会”だった。

 彼らは神父と出会い、徐々に町の人々の異形の姿と風習を知っていくことになる。

 主人公たちは逃げ出そうとするが、包囲の輪は次第に縮まり、彼らは捕らわれの身になる……。



 まあ、インスマウスの影ですね。住民はディープワンズ。ちょっと姿は違いますが(魚じゃなく、クトゥルフ御大に似ている)、大筋でそういった物語です。

 雰囲気は、そこそこ出ていました。



 さて、この映画を見ていると、クトゥルフ物を映画にするときの問題点が浮き彫りになってきます。

 その最たるものは「恋愛要素が入れられていること」。これは、「入れざるを得ないこと」と言い替えてもよいです。

 クトゥルフ物は基本的に短編です。そして主題は「人知を超えた理解不能なものに、人間性を無視して蹂躙される」というものです。

 つまり、映画を2時間持たせるような人間ドラマが作中にないのです。そのため映画化する場合は、「それ以外の人間ドラマ」を導入しなければなりません。

 これは、「原作ファンの望むもの」とは「違うもの」を作ることを意味します。メインターゲットの顧客に対して訴求しているつもりが、その客層が望まぬものを作ることになります。

 そもそもの主題と違い、「逃げ回る人々の人間関係」が中心になってしまうからです。

 これは、大きなマイナスです。「なぜクトゥルフ物を原作にしたのか分からない」という状況になってしまいます。「原作」ではなく「原案」だよね。というのが、素直な感想です。

 まっとうにクトゥルフ物を映像化すると、30分ぐらいしか持ちません。そして、2時間持たせようとするならば、「いくつかの短編を組み合わせて、同時並行で物語が絡み合いながら進む」というスタイルを取らなければなりません。

 これは脚本の技量が要求されますし、何より製作コストがはね上がります。しかし、これまで作られてきたクトゥルフ物の興行成績を考えると、このコストを掛けることはためらわれるでしょう。

 なので、頭の狂ったハリウッドの有名監督が「やりたい」と言い出さない限り、満足できるクトゥルフ物は、今後も出てこないと思います。

「仕方ないよね」

 ラブクラフト好きとしては、このように思いました。



 それでは、「人間関係を入れなければどうなるんだ」と思うかもしれません。しかしそれは、前述の通り難しいです。正直言って、よっぽどの技量がない限り、間(ま)が持ちません。

 本映画でも、1人で逃げ回るシーンが延々と続く時間があったのですが、はっきり言って辛かったです。

 予想が付き過ぎるというか、1人だけだと意外性が少なく、集中力が続きません。

 やはり、2時間程度が基本の“映画”というスタイルを取るのならば、人間関係を描かないわけにはいきません。



 その他の感想です。

 主人公の恋人が、バカ女過ぎる。

 映画の冒頭で、ベッドに入っている二人が軽く口論をします。するとこの女は、恋人の男がタバコ嫌いであるのに、いきなりタバコを吸い始めます。

 仕方がないので主人公はノートパソコンで株価をチェックし始めます。すると「バカンスに来ているのに、そんなもの見ないで」と言って、ノートパソコンを奪い、船の甲板に行きます。

 「そのパソコンには、会社の大事なデータが入っていて、バックアップもまだなんだよ!」という主人公に対して、このバカ女は、「遊びに来ているときぐらい、仕事のことを忘れなさいよ」と、ノートパソコンを海のなかに投げ込みます。

 アホか!

 主人公の憔悴し切っている背中が憐れです。正直言って「そんな女、さっさと捨てて逃げろよ。むしろ復讐しろ」と何度も劇中に思いました。



 以下、クトゥルフっぽいところ。

 主人公の着ている服の胸に、「ミスカトニック」と書いてあったところ。

 町の住人が、やたら「イア、イア」言うところ。

 お約束だなと思いました。

 まあ、“話の種”に見た映画ですので。そんなに期待はしていませんでした。こんなものだろうという感じでした。
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