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2006年02月02日 10:23:25
 映画「八甲田山」のDVDを、12月下旬に三日もかけて見ました。年末で忙しいのに170分もあったので。

 映画自体は、“面白い面白くない”という感想よりも、ひたすら“濃い”というのが実感でした。

 最初の一時間を掛けて、八甲田山に行く二人の士官の動機と目的意識を設定し、これから起こるであろう悲劇の前提条件を準備する。

 そして残りの時間で、ばたばたと人が死んでいく。ひたすら死人が出続ける。そしてラストまでくると、すっと引いて終わり。そういう映画でした。

 この、初期設定以降の“どんどん人が死ぬシーン”が、満腹感いっぱいでした。既にお腹がぱんぱんなのに、無理矢理食わされているような感じ。

 まあ、人が狂って死んでいくシーンは嫌いじゃないのですが。むしろ興味深い。

 人によっては、子供の頃に見るとトラウマムービーになるような映画だなと思いました。

 個人的な印象としては、どでかいまさかりで目の前の巨大な杉の木を、奇声を上げながら一心不乱に斬りつけ続けるような映画でした。

 何を言っているのか、さっぱり分からない感想になっていますね(-_-;



 以下、粗筋です。有名な話なのでネタバレにはならないと思いますが、ネタバレが嫌いな人は見ないでください。

 明治三十四年、日露戦争を間近に控えた時期、ある会議が陸軍で行なわれた。

 露西亜が青森の港を閉鎖したら、鉄道網が寸断されて太平洋側と日本海側の交通が途絶えてしまう。その対策として、冬の八甲田山を越えて、通行ができるかどうか確かめておく必要がある。

 また、シベリアでの戦いに備えて、冬期行軍の実験をしておかないといけない。

 これらのテストを行なうために、青森の第五連隊の中隊長神田大尉と、弘前の第三十一連隊の中隊長徳島大尉の二人が、作戦の担当者として任命された。

 陸軍首脳部は、この実験が過酷なものになるとは誰も予想もしていなかった。彼らは二人に、青森と弘前をそれぞれ発ち、八甲田山ですれ違うようにと指示を出した。

 この会議を切っ掛けに、神田と徳島は親交を深め、「冬の八甲田で会おう」を合言葉に固い友情で結ばれていく。

 だが彼らは準備を進めるうちに、冬の八甲田がいかに危険なものかを知ることになる。

 徳島大尉は少数精鋭で、地元の人々の協力を仰ぎながら行軍することに決める。過酷な計画ではあったが、上官の理解も得られ、彼の計画通りに準備は進む。

 一方、神田大尉は高官たちの浅慮に振り回される。小隊編成で行く予定だった計画は、中隊編成の二百名を越える大所帯となり、大隊長が付いてくるという当初と違う内容に変わっていく。

 そして年は変わり、一月の下旬。二人の大尉は出発した。

 自然に逆らわず、少数で進んでいく徳島大尉たちは、困難に直面するものの、一人の脱落者も出さずに進んでいく。

 だが、神田大尉たちには不幸が待っていた。神田の事前の根回しを無視し、地元民の協力をはねのけ、軍隊の力だけで冬の八甲田山を越えようとする大隊本部。

 そして大隊長の独断による指揮系統の分裂が、彼らの死を決定的にする。

 「たった二キロ先にある田代になぜ着けないのだ!」

 天は我々を見捨てた! 雪原でさまよう神田大尉たちの一行は、冬山に飲まれるように、一人死に、二人死に、その数はみるみる減っていく。

 そしてすれ違う約束だった徳島大尉たちが来たとき、そこには屍の山が築かれていた。



 映画は“特別編”ということで、「橋本忍が高校生たちの質問を受ける」というロング・インタビューが付いていました。

 そのインタビューで面白かったのは、女子高校生が尋ねた「なぜ、四季のシーンが雪山のシーンのなかに入っていたのですか?」という質問に、橋本忍が答えた部分でした。

 私はその質問を聞いた瞬間に、「なんでそんな分かり切ったことを聞いているんだ。冒頭の徳島大尉と神田大尉が酒を酌み交わすシーンで、冬に辛いときに、子供の頃の四季を思い出すと、ちゃんと言っていたじゃないか」と思いました。

 事実その通りの伏線だったらしく、橋本忍はその伏線の説明をしました。

 その後に、興味深い台詞が出てきました。

 「この伏線は、多くの人が分からなかった。自分でもラッシュを見たときに、これは観客が分からない可能性があるなと思った。映画が長く、冒頭のシーンで情報が出されるために、この伏線が観客の頭の中で飛んでしまう可能性が高いと思った」

 「これを解決するためには、途中で台詞を思い出して、もう一度口にさせるなどすればよかった。しかし、八甲田山は“横綱相撲”を取るつもりだったので、時間をさかのぼるようなことはしたくなかった。分かりやすさを取るか、勢いを取るかで、後者を取った」

 「本当は、二人が酒を酌み交わすシーンで、そのことをもっと強く印象付けるように、その話題を掘り下げるとよかった。しかし、その問題が分かったときは、既にラッシュの段階だったので遅かった。この部分は失敗です」

 そのような趣旨のことを言っていました。

 どういうことを考えながら脚本を設計していくのか、その一端が見えて面白かったです。



 インタビューには、ほかにも面白い内容がありました。それは、映画のテーマです。

 橋本忍は本作を「自然に調和して生きようとする側と、自然を大人数で征服しようとする側のストーリー」として作ったそうです。

 しかし、この映画の原作は「少数精鋭で目的を遂行する集団と、指揮系統が分裂する大集団の比較による組織論」として読まれ、ベストセラーになったそうです。

 原作の本がヒットした理由には、企業が大量に買って、新人研修などに使っていたという背景があったそうです。

 そして映画も、そういう見られ方をしました。

 脚本家の意図とは全く関係なく、原作と同じ見られ方をするのは面白い現象だなと思いました。



 最後に、橋本忍の黒歴史が好きな人向けの話もありました。

 寒さでやられて、幻覚を見て、ブナの木と延々と会話をしていた話です。非常に熱心に、ブナの木と、どんな会話をしたのか語っていました。

 ブナの木は、冬より夏のほうが寂しいそうです。

 いろいろな意味で、濃い映画でした。
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