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2006年03月13日 14:53:03
 映画「幻の湖」のDVDを2月の中旬に見ました。

 大学の後輩の酒氏(最近アレゲムービーにはまり過ぎ)が持って来た一枚を、酒氏、Junk氏と共に見ました。

 世間的評価は以下の通り。

・八甲田山を撮ったときに頭がやられた橋本忍が撮った映画

・東宝五十周年作品なのに一週間で上映が打ち切られた映画

 いわゆる「トンデモ映画」のなかに数え上げられる作品です。この映画を120%楽しむために、ちゃんと事前に橋本忍の代表作を見ておきました。

(そんなことのために頑張る自分もどうかと思う……)

 見た三人の評価としては「橋本忍作品や東宝五十周年作品としてはよくない出来だが、世間の評判ほど酷い作品ではない」という感じでした。

 確かに、「あまりに飛躍し過ぎて一瞬目が点になる場面」もありましたが、その部分を除けば、普通に「古めのあまり面白くない映画」という作品でした。



 以下、粗筋です。(ネタばれあり。最後まで記述)

 主人公の女性は琵琶湖沿岸の「湖の城」というお店で働くトルコ嬢。このお店は、戦国武将の妻をテーマにしたコスプレを行なっており、主人公は「お市の方」と呼ばれていた。

 彼女は一匹の犬を飼っていた。その犬とともに、彼女は休みのたびに琵琶湖西岸を走り、体を鍛えている。

 彼女は銀行員の男と親しくなったり、アメリカ出身の同僚ローザと仲よくしたり、琵琶湖の沿岸で謎の笛吹き男と出会いながら、日々を過ごしていた。

 そんなある日、飼い犬が殺された。

 主人公は警察に捜査してもらうが、刑事事件にしたとしても書類送検程度で終わることを知って愕然とする。

 彼女は犯人を追って東京に出る。犯人は作曲家の日夏という男だった。日夏は負けん気の強い、傲慢な人物だ。

 法的には日夏を追い詰められないと知った主人公は日夏を調べ、彼がランニングを日課にしていることを突きとめる。

 そして、その背後からプレッシャーを掛け続けることで、負けん気の強い日夏が倒れるまで走らせようと考える。

 しかし、彼女は負けた。得意のマラソンで負けたのだ。彼女は失意のうちに琵琶湖に帰る。

 主人公は琵琶湖で再び謎の笛吹き男に出会う。彼は、お市の方付きの娘であった「みつ」という女性の伝説を語る。

 器量のよい娘であった「みつ」は、浅井方の敗北とともに悲運の死を遂げる。

 主人公はその話を聞き、抗えない運命というものの存在を強く感じる。

 彼女は犬のことを忘れ、銀行員の男と一緒になろうと決意する。しかし、運命は急変する。彼女の勤める店に、日夏が客としてやって来たのだ。

 その瞬間、彼女の頭のなかで何かが弾けた。

 彼女は、日夏が犬を殺した包丁を手に取り、日夏を追い掛けだす。日夏は彼女が東京で背後を走っていた女だと思い出し、今度も逃げ切れると高を括る。

 二人は琵琶湖の湖畔を走り続ける。

 そして体力を消耗し、倒れる寸前まで足を動かす。

 日夏が力尽き、彼女は負い越す。「勝った!」思わす彼女は叫ぶ。そこには感動さえ呼ぶ、満足感があった。

 そして次の瞬間、彼女は追い抜いた男が犬の仇であることを思い出す。彼女は日夏を刺した。血が噴き出る男の腹に、包丁をさらに突き立てる。

 戦国時代の女たちが、抗えぬ運命に従ったように、彼女もまた何かに背中を押されて自分の人生を誤らせた。



 映画のテーマは、「抗えぬ運命に対して、走ることで立ち向かう」です。たぶん。

 変な部分も多いですが、基本的にはそのテーマに沿っています。

 ただし、物凄く散漫です。

 あと、突拍子もない展開がときどきあります。

 特に、ときどき、その突拍子のなさが、常人の臨界点を突破することがあります。



 映画を見ていた三人が最初に腰を抜かしたのは、アメリカ出身のトルコ嬢のローザが、「実は謎の諜報部員」だったことが唐突に判明したときです。

 その瞬間、いきなり彼女は「ファントムではなくイーグルだ。イーグルはすでに実戦配備についている」と喋り出します。

 映画の内容とは全く無関係に……。

 ええ、完全に電波です。

 このローザが「アメリカの諜報部員である」という設定は、その後、主人公が強引な調査をするときに、「突如現れて答えを教えてくれる」という伏線になっています。

 しかし、彼女の存在理由はそれだけです。

 「なぜ彼女が諜報部員なのか」「なぜ彼女が琵琶湖沿岸でトルコ嬢をしていたのか」「なぜ彼女は報告書に『白い犬、白い犬、白い犬、走る女、走る女、走る女』と書くのか」その謎解きは一切ありません。

 ともかく、全員ここで目が点になりました。



 あと、「戦国時代」と「スペースシャトル」に絡む、謎の笛吹き男の設定が、映画中ほとんど機能していません。

 思わせぶりに出て来るわりには、映画のシナリオを混乱させるだけです。

 いなくても映画は成立します。というか、むしろ抜いたほうがいい。

 たぶん、ローザと謎の笛吹き男を外すと普通の映画になると思います。



 何気に日夏さんがよかったです。

 負けず嫌いで独善的で、行く先々で女を孕ませて帰ってくる日夏さん。

 主人公に「生死を賭けたマラソン勝負」を挑まれて、「振り切ってやる!」と素直に受ける日夏さん。

 映画を見た三人の人気者でした。



 この映画には、「吹くと、妻になる女性が召喚される横笛」という謎のマジック・アイテムが出てきます。

 さらに、どうもこの笛は「チェンジ」も効くらしく、最初の奥さんが死んだあと、この笛を持っていた男は新しい奥さんをゲットしていました。

 映画を見ていた全員が口を揃えていいました。「その笛欲しい」と。

 なかなか凄いアイテムでした。



 橋本忍は、原作物だけをやっておくべきだったと思います。

 もともと師匠に、「お前は原作物の脚本を書きなさい」と言われていたそうです。

 得意技だけで勝負している方がよかったのになと思いました。
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