映画「王様と私」のDVDを五月下旬に見ました。
「Shall we ダンス?」で言及されていたので、「見ないといけないな」と思って借りてきたものです。
古いミュージカル映画なのでちょっと警戒していたのですが、これは傑作だと思いました。
ミュージカルというと、意味もなく歌や踊りが挿入される作品が多いのですが、「王様と私」にはきちんと意味があります。一番最初の歌でそれを示してくれます。
そして、それらがでしゃばることもなく、きっちりと物語を描いてくれる。
さらに、物語自体が非常によい。
シンプルだけど、力強くて魅力的。分かりやすいけど、考える部分があり、直接的でもあり、暗示的でもある。
この作品は、“私”と“王様”の異文化コミュニケーションかつ恋愛物語なのですが、ただの恋愛ドラマではない骨太な素晴らしい内容でした。
「これはよい映画だ」と思いました。
ちょっと長いけど、気にならずに一気に見ることができました。
以下、粗筋です。(一部ネタバレあり。中盤過ぎまで書いています)
夫をなくした英国婦人の主人公は、息子を連れて、シャム(現タイ)の国王の子供たちの家庭教師として異国の地を訪れる。
王は国の近代化を望み、そのためには次代の指導者たちに科学的な思考が必要だと考えていた。だが、王自身は自国を一歩も出たことがなく、古い体質の王宮内しか知らない。
彼は国を憂い、その重責に苦悩しつつも、子供のような無邪気な心を持つ男だった。
いつしか家庭教師は王に引かれ、王も彼女を頼りにし始める。
そんな折、英国からの使節がやって来た。王は家庭教師に、彼らを迎える晩餐会の準備をするようにと命じる。
彼女はその重責を果たし、二人の心はさらに接近する。しかし、その後二人の運命は急転する。
異国情緒、王のエキセントリックさ、子供たちの愛らしさ、そしてサブストーリーの堅実さ。どれをとっても魅力たっぷりの映画でした。
そして、結末も意外で驚かされました。
心に残る一作でした。
さて、この映画では、劇中劇があります。
英国からの使節へ見せる余興のために、国王の妻たちが「アンクルトムの小屋」をタイ風にアレンジした演劇です。
このできが素晴らしくよい。
映画自体もよいのですが、この劇中劇の完成度も半端ではないです。
自然物や自然現象を全部人が演じるのですが、その表現がとにかく上手い。なるほど、タイという国は、こんな文化がある国だったのかと思いました。
よい映画でした。
あと、どうでもよいのですが、王様役のユル・ブリンナーがアカデミー主演男優賞を取っています。
主役は家庭教師アンナ役のデボラ・カーだと思って見ていたので、ちょっとびっくりしました。
DVDには、授賞式の様子が付いていました。