映画「遊星からの物体X」のDVDを八月下旬に見ました。
原題は「THE THING」。タイトルとして表示されるのは「John Carpenter's THE THING」
“ジョン・カーペンターの”と断わっていることからも推測できるように、この作品は一度映画化されています。
1回目が、1951年にクリスチャン・ナイビー監督の手によって。この作品は2回目で、1982年の作品になります。
静謐な閉鎖空間での疑心暗鬼、シンプルな物語構造、グロテスクなクリーチャーが特徴の映画で、私のツボにはまり、楽しんで見ることができました。
以下、粗筋です。
アメリカの南極観測基地。その場所に、一匹の犬と、それを追うヘリコプターがやって来た。
ヘリから下りた男は、銃を乱射しながら、基地に逃げ込もうとする犬に迫る。
基地の隊員たちは、自分たちの身を守るために、銃を持った男を射殺した。
死んだ男はノルウェー隊の隊員だった。
なぜ、彼がそんなことをしたのか調べるために、ヘリのパイロットと医者はノルウェー隊の基地に向かう。
その場所は廃墟となっており、人は全て死んでいた。彼らは、奇妙な姿をした死体と証拠になりそうなビデオテープを持ち帰る。
アメリカ隊のメンバーは、これまでと変わらぬ生活を続ける。
だが、恐怖は気付かぬあいだに、忍び寄っていた。この基地に住みついた犬が、奇怪な容貌の生物に姿を変え、他の犬を襲いだした。
隊員たちは、その怪物を射殺して火炎放射器で焼き尽くす。
彼らはノルウェー隊の基地から得た死体とテープを調べる。
死体は、他の生物と融合して、変身していく未知の生物だった。そして、テープから、その生物は南極の氷のなかから発見されたことが分かった。
その生物は、極寒の地でも死なず、活動を停止するだけだった。
しかし、その事実が分かったときには遅かった。隊員が徐々に殺され始める。誰かが、未知の生物に乗っ取られているのだ。
だが、まだ敵より、人間の数が多いらしい。彼らは自分たちの身を守るために、こっそりと行動し続けていたからだ……。
最初、主人公が誰か分からないまま映画は進行します。
そして、隊員たちが疑心暗鬼になり出したところで、リーダーシップを取り始める人間が出てきて、主役と脇役に分かれていきます。
そのため、途中までは「誰が早く死ぬ役で、誰が後の方まで生き残る役なのか」よく分からないまま話が進みます。
そして、それ以降は「主人公が敵なのか味方なのか」分からず、話は続きます。
さらに、ある時点で敵の見分け方を考え出すまで、どんどん不和は広がっていき、一触即発の危機に向かっていきます。
“南極基地”という、逃げ出すところのない閉鎖世界とあいまって、非常に面白かったです。
クリーチャーの表現は、当時の時代背景を考えると、非常によくできていたと思います。
今見ても、それなりにグロテスクで気持ち悪くてよい感じです。
そもそもの出来がよいというのもありますが、撮影の仕方も上手かったと思います。
大量のゼリーで、べとべとどろどろにして、あまりきちんと映さない。
そして、いろいろな形に変身していく。
よくできているなと思いました。
DVDにはメイキングが付いていました。こちらも、当時の模様を知る上で参考になりました。
そのなかで面白かったのは、背景の絵を描いている(マットペインティング)画家の話です。
当時はCGというものがなかったので、絵で描いて合成するという手法がけっこう使われていたそうです。
実写映像に手書きの絵を混ぜて違和感なく見せるというのは、非常に熟練の技術がいる仕事です。
映画中あまり気にせず見ていたので、そういった人も活躍しているのだなと思いました。