映画「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」のDVDを九月中旬に見ました。
(以下、ネタバレです)
「いい映画だよね」とは思いましたが、愛を“至上”に持ってくる映画に特有の“偽善臭さ”を感じました。
男女の愛というのは、価値観の一つであって、絶対的な存在ではありません。
神や信仰こそが至上の価値だと主張するのと同じように、そういった主張にはいびつさを感じます。
愛とは個人の欲望であり、そちらに傾き過ぎると社会の秩序を乱します。
特に、「愛のためには何物をも犠牲にして構わない」という考えは、周囲の人間に多大な損害をもたらします。
「人類にとって貴重な才能」と「個人の愛」を秤に掛け、愛という個人の欲望を取ることは愚かな選択です。
個人的には、「愛だけ取らず、両方取れよ」と思いました。「人類にとって貴重な才能」を捨てるのは、社会に対する裏切り行為ですので。
以下、粗筋です。(最初の四十五分ぐらいまで書いています)
スラム街で生まれた主人公は、天才的な数学の能力を持つ青年だ。
彼は早くに両親を亡くし、何人かの親のもとで養われる。そこで受けた虐待のせいで、彼は心を閉ざしていた。
主人公には仲のよい友人が三人いた。それは彼にとって兄弟のような存在だった。主人公は彼らと酒や喧嘩に明け暮れ、刑務所に送られる寸前までいっていた。
そんな折、彼のもとに一人の大学教授が現れる。主人公が掃除夫として働いていた大学の数学教授だ。掲示板に張り出した難問を解いた主人公をスカウトしに来たのだ。
だが主人公は保護監察の身だ。教授は彼の後見人になり、週に二度のカウンセリングを裁判所に約束する。
そして主人公は、教授の下での勉強と、カウンセリングを始める。ちょうどその頃、彼には恋人ができる。しかし、心を閉ざしている彼は、素直な自分を見せることができなかった。
カウンセリングは難航する。主人公は、天才的な頭脳を駆使してカウンセラーをやり込めてしまうからだ。
このままでは刑務所に送るしかなくなる。悩んだ教授は、かつてのルームメイトの許に主人公を連れていく。
その男は妻をなくして心を閉ざしている心理学者だった。
主人公と心理学者。二人の心を閉ざした男が心の交流を始める……。
この映画のもう一人の主人公である心理学者が、三十分を過ぎるまでまったく出てこなかったのにはびっくりしました。
「ロビン・ウィリアムスが出るって書いていたけど、全然出てこないな」と思っていたので。
しかしまあ、ロビン・ウィリアムスは目立ちますね。出て来ると、その場面を食ってしまいます。
映画の終盤に、主人公に対してその親友が言った台詞はよかったと思います。
「お前は才能を持っている。それを使いもせず、二十年後も同じ仕事をしていたら、俺はお前をぶっ殺す。
ここにいる奴らは、俺以外みんな、当たりチケットを欲しがっている。それをお前は持っている。そのチケットを使わないということを俺は許せない」
たしか、こんな感じの台詞です。本当に相手のことを考えているからこそ、きつい言葉をいって追い出す。
そういう人が身近にいることは大切だと思います。
結論は納得がいかないですが、映画としては面白かったです。
……結論は、本当に納得がいかなかったです。