映画「バトルフィールド・アース」のDVDを九月上旬に見ました。
ジョン・トラボルタが悪の宇宙人を演じているSF映画です。
感想としては“消化不良”。
「なんとなく最後まで見られるけど、特に凄い面白いわけでもないSF映画」を地で行っているような印象を持ちました。
映画が始まって五分で「これは凄い面白くはならないな」「よくて、そこそこだろう」と感じました。
以下、その理由について書いていきます。
この映画の問題点は、突き詰めていくと以下の四点に集約されると思います。
1.シーン・イメージが古い。
2.主人公側にパンチがない。
3.シナリオが回りくどい。
4.悪役のギャグの切れが悪い。
以下、それぞれについて解説していきます。
●1.シーン・イメージが古い
SF映画を百本ぐらい見たら、絶対どれかに被ってそうなビジュアル・イメージのシーンが多過ぎです。
まあ、被っている分には、特に文句は言わないです。
完全に被らせないように作るのは困難なので。
ただし、映画の冒頭部分でそれをするのは問題です。
映画において、“SF”というジャンルは“非現実”を描くものです。そのため、観客を“日常”から一気に“非日常”に連れ去らなければなりません。
その方法は大きく分けて二つあります。
一つめは、冒頭で「現実世界の延長のシーン」を描き、そこから非現実に導く方法です。
二つめは、冒頭で「誰も見たことのない新しいシーン」を描き、ショックで一気に非現実に導く方法です。
後者を選択した場合は、どこかで見たような手垢の付いたビジュアルイメージを使ってはいけません。
それだけで、観客のテンションが下がってしまうからです。
本作品の冒頭シーンは、「非現実だけど、どこかで見たことがあるシーン」になっていました。
これでは、「面白くなりそう」という期待は抱けないなと思いました。
以降、いくつかのシーンで同じようなことがあり、あまり独創的な映画とは感じませんでした。
●2.主人公側にパンチがない
映画は俳優の存在感が重要な要素になっています。
強力な存在感を持っている俳優がいれば、映画自体の出来が悪くても作品としては楽しめます。
この映画では、主人公およびその周辺人物に魅力的な俳優が誰も出てきません。
これじゃあ乗れないなと思いました。
●3.シナリオが回りくどい
通常の映画は、約二時間という枠のなかでストーリーを描かなければなりません。そのために、要素を削ってシンプルにする必要があります。
また、その要素も、“紆余曲折を伴わない直感的なもの”である必要があります。紆余曲折を伴う場合は、それが“ストーリーのテーマにきちんと合っている”という必然性が必要です。
しかし、この映画では無駄な紆余曲折が何度もあります。
要素の整理ができておらず、無駄なサブプロットや、不充分にしか機能していないサブプロットがいくつもあるのです。
おかげで、主人公はいろんなところをぐるぐると回った挙句、同じところに何度も戻って来るという結果になっています。
原作物らしいですが、もう少し大胆に、映画向けに脚本を刈り込みした方がいいと感じました。
●4.悪役のギャグの切れが悪い
悪役のギャグは、センスが悪いなと思いました。
まあ、これはセンスの相性の問題ですので、個人的な好みで「合わなかった」ということです。
といったわけで、「酷い出来ではないけど、望んだレベルで楽しませてくれる作品ではなかった」というのが、個人的な感想です。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。半分ぐらいまで書いてあります)
西暦三千年。人類は宇宙人の侵略によって大きく人口を減らし、絶望の危機に瀕していた。文明も原始時代程度まで退化し、人という種はこのまま滅びるかのように見えた。
ある村の若者は、外の世界を恐れる大人に反発して旅に出た。そして、かつて文明が栄えていた頃の都市の廃墟を目撃する。
だが彼はその場所で謎の兵士たちに襲われる。彼らは人間の1.5倍ほどの身の丈を持ち、バトルスーツに身を包んでいた。
彼らこそが、地球人類を絶滅の危機に追い込んだ宇宙人たちだった。
宇宙人はショック・ガンを撃ち、若者は虜囚となってしまう。宇宙人たちは人類に知性があることに気付いておらず、人間を家畜として扱っていた。
また、彼らは鉱石採掘プラントを地球に持ち込んでおり、惑星から得た資源を母星へと運んでいた。
この星の長官は、辺境の地である地球を早く去りたいと願っていた。しかし彼の配置転換の申請は却下される。
こんな場所で飼い殺しにされてはたまるかと思った長官は、人間たちに強制的に知識を与え、金の発掘をさせて政治資金を得ようと企む。
そして、虜囚となっていた若者に目を付け、教育マシーンで彼らの母星の知識を脳に叩き込んだ。
だが長官の思うように事は運ばない。知性に目覚めた人間たちは、宇宙人に対して密かに反乱を企て始めた……。
いろいろと「なんで?」と思うSF設定は多かったのですが、「まあこんなもんかな」と思いました。
SFのなかでも、どちらかというとスペース・オペラ寄りの話なので、「そりゃあないだろう」という部分を、いくつか許容しないと始まらないので。
別に、スペース・オペラが嫌いなわけではないです。どちらかというと好きです。
ただ、そういった設定上の粗を忘れさせてくれるほどは、映画が面白くなかったということです。
あと、友人にいろいろと教えてもらったのですが、「バトルフィールド・アース」は、サイエントロジーの文脈で斜めに見ると面白いそうです。
原作はサイエントロジーの教祖、L・ロン・ハバード。トム・クルーズが熱心な信者なのは知っていたのですが、トラボルタもなのですね。
というわけで、サイエントロジーの宗教宣伝映画で、幸福の科学のアニメのようなものとのこと。
なるほど、そういう作品だったのですか。
以下、参考。
□Wikipedia - サイエントロジー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%83%BC