映画「愛についてのキンゼイ・レポート」のDVDを十月下旬に見ました。
原題は「KINSEY」。アメリカで物議を醸したキンゼイ・レポートの作者の生涯を描いた作品です。
面白かったです。良作。
派手なシーンがあるタイプの映画ではないのですが、伝記映画としてきっちり楽しめるように作り込んでありました。
以下、粗筋です。
プロフェッサー・キンゼイを略して“プロック”。そんな愛称で生徒たちに呼ばれるキンゼイ博士は、精力的な活動を行なう昆虫学者だ。
厳格な父親に対立して家を飛び出した彼は、先進的で開放的な性格で生徒たちにも慕われていた。
彼は自分の学生と恋に落ちて結婚する。しかし、新婚初夜、セックスがきちんとできなかった。やり方がよく分からなかったからだ。
医者に相談してどうにか上手くできた彼は、自分たちがいかに「人間の性について無知であるか」を知ることになる。
そのときの経験を生かして、彼は生徒たちの性の相談に乗るようになる。
そして、彼は、いかに多くの人たちが性について間違った知識と偏見を持っているか、そしてそのことで悩んでいるかを知っていく。
キンゼイ博士は、その状況を打破するために、大学で“性の講義”を行なうようになる。その授業は好評で、多くの生徒たちが彼の話を聞きたがった。
彼はその授業を通して、生徒たちの悩みの多くが、「自分の性欲や性行動が異常なのではないか?」ということにあることを知る。
しかし、正常か異常かは、統計を取ってみなければ分からない。彼は、昆虫の研究でもっとも大切なのは「より多くのサンプルを取ること」だと思い出す。
「そうだ、人間でも、同じように調査すればいいんだ」
そうして、キンゼイ博士は“人間の性”に関する調査を始めた。いわゆるキンゼイ・レポートと呼ばれる研究だ。
しかし、その調査により、彼の“性に対する考え”は変わり、家庭は混乱し、世間からの非難を一身に受けることになる。
“世間の人々のためによかれ”と思って始めた研究への“世間の反応”に、キンゼイ博士は苦悩していくことになる……。
性の研究に突き進んでいくキンゼイ博士が、世間でアブノーマルと呼ばれるセックスが、実はそうではないことを知っていき、そしてそこにハマっていったり、苦悩したりする様がなかなか面白いです。
そういった苦悩や感情の振幅が、伝記映画のなかに小気味よいユーモアと深みを作り出しています。
特に、キンゼイ博士が同性愛に足を踏み込むところなどはなかなか秀逸でした。
しかしまあ、生徒たちの相談もなかなか凄まじいです。
「前戯……って何ですか?」「性器を手で触れるのはいけないと親に習いました」
そんな状態で「私は不感症なのでしょうか?」って、いくらなんでもそれは……。こんな相談を真顔でされるキンゼイ博士の微妙な表情はなかなか面白いです。
“無知は罪”とは言いますが、性に関してもそれは当てはまるなあと思いました。
以下、参考です。
□Wikipedia - キンゼイ報告
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%BC%E3%82%A4%E5%A0%B1%E5%91%8A
映画としても、伝記物としても、性のいろんな側面に関しても、それぞれ楽しめる作品でした。