映画、「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!」のDVDを十一月中旬に見ました。
これは非常に面白かったです。手放しで絶賛できます。
原題は「Wallace&Gromit THE CURSE OF THE WERE-RABBIT」。日本語に訳すと「ウサギ男の呪い」です。
少しホラー映画テイストを交えながら、完全にエンターテインメントに徹していて、「クレイアニメだから凄い」という枠を越えて、徹底的に楽しませてくれます。
これは、映画として、よい映画です。
さて、私が「ウォレスとグルミット」を知ったのは、大学を卒業して数年目、前の会社で神戸にいた頃でした。
会社の先輩が「面白いものがある」と言って持って来たのが「ウォレスとグルミット」。この時、初めてその存在を知り、クオリティの高さに心を打たれました。
私の把握している範囲ですが、クレイアニメというジャンルに一般でも脚光が当たり始めたのも、この頃だったと思います。
以来、この会社の作品は、機会があればチェックするようになりました。
その「ウォレスとグルミット」。
「ウォレスとグルミット」と言うとクレイアニメ。粘土の人形ならではの“柔らかな動きが心地よい”という視点で語られがちです。
しかし、今回の映画では、何よりもネタの作り込み具合が素晴らしかったです。
随所に映画のパロディーが折り込まれており、映画好きを楽しませつつ、そういうことが分からない人にも、動きとシチュエーションとその解決方法できちんと面白がらせています。
さらによかったのが、その世界観の構築の仕方です。
舞台は、“巨大野菜コンテスト”が行なわれる直前の田舎町。「ウサギ男の呪い」で被害に遭うのは、全てその野菜たち。
手塩を掛けて育てた野菜を「マイ・ベイビー」と呼ぶ町の人たちが、心の優しさとともに、ユーモアを醸し出しています。
これはいい映画でした。
個人的には、“ドッグ・ファイト”のシーンが楽しくてたまらなかったです。
アニメにしては対象年齢は少し高めですが、誰もが楽しめる作品だと思いました。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。中盤の最初頃まで書いています)
巨大野菜コンテストが行なわれる直前の田舎町。町では野菜を齧るウサギ退治が問題になっていた。
そこで活躍していたのが、発明家のウォレスと、その忠犬グルミット。彼らは得意の発明品でウサギを捕まえては、コンテストが終わるまで、自分たちの家に閉じ込めていた。
そんなある日、ウォレスはふと閃く。「そうだ、僕の野菜嫌いの心を、ウサギの心にコピーすれば被害はなくなるぞ!」
そこで彼はそのための装置を開発する。
しかし、そこで手違いが起こったのだ。自分の心をウサギの心にコピーするはずだったのが、逆になってしまったのだ。
そして、恐怖の“ウサギ男”が誕生する。
さらに、“手違い”はそれだけでは済まなかった……。
ウォレスとウサギの運命は? そして、野菜たちは、無事コンテストの日を迎えられるのか?
忠犬グルミットの大活躍が今始まる。
いやー、グルミットが可愛かったです。
また、敵方の犬の忠犬っぷりもよかったです。顔は不細工で悪役顔なのに、忠犬ぶりでは、グルミットに負けていません。
こういった、マイナス要素を極力排した脚本というのは難しいと思うのですが、この作品ではとても上手くできていました。
造形的楽しさや動きの面白さは当然として、その上を目指して見事に成功しているのは、素晴らしいと思いました。
あと、「ラビット」と「ビースト」を合わせた造語の「ラビースト」も面白かったです。