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2007年04月04日 11:25:28
カッコーの巣の上で
 映画「カッコーの巣の上で」のDVDを二月中旬に見ました。

 1975年の、ジャック・ニコルソン主演の映画です。原作はケン・ケーシーという人だそうです。

 落ちも含めて、どういう映画なのか予備知識があったのですが、それでも凄いと思いました。

 非常に面白かったです。

 以下、感想を“ネタバレなし版”と、“ネタバレあり版”に分けて書きます。



● ネタバレなし版



 以下、粗筋です。(ネタバレなし版)

 刑務所に入れられていた主人公は、問題行動ばかり起こして、精神病院に送られる。

 そこで彼は、自由を奪われ、自主的な意識を持たない患者たちとともに生活を始める。

 主人公は、そんな患者たちを見て、彼らに自由と自主性を持つようにとけしかける。

 主人公は、患者たちとともに脱走して遊びまわったり、病院内に彼女を呼んだりと、自由奔放に振る舞う。

 患者たちは徐々に心を開き、快活さを獲得していく。



 序盤から終盤に掛けて、映画は、主人公と患者たちの心の交流に割かれます。

 これらのシーンは、温かいヒューマンドラマとして観客の心に訴える力を持ったものです。

 主人公と対立する病院の象徴としての“婦長”の冷淡な様子と相俟って、爽快感を持って盛り上がっていきます。

 しかし、こういった「心温まるドラマ」は、最後の落差を演出するための準備にしか過ぎません。

 温かくて爽快な話で観客の心を持ち上げるだけ持ち上げておいて、ドスンとどん底まで突き落とす。そして、そこから一気に頂点まではね上げる。

 ヒューマンドラマは、そのための前振りにしか過ぎません。

 この、“ネタばれなし”の部分だけでも、この映画は普通によい映画です。

 しかし、“ネタばれあり”の部分で、壮絶な落差を見せ付けられることによって、凄い作品になっています。

 正直言って、事前に落ちを知っていて、ネタバレしていても「スゲエ!」と思いました。

 というわけで、続きの感想は、“ネタバレあり版”に書きます。
























● ネタバレあり版



 以下、粗筋です。(ネタバレなし版の続き、ネタバレあり版。最後まで書いています)

 患者たちにの中には、背が高くて聾唖のインディアン系の男がいた。主人公は彼のことをチーフ(酋長)と呼ぶ。

 主人公が入院した当初、チーフは誰の言葉にも反応していなかった。

 しかし、主人公の行動に触れ、徐々に心を開きだす。実は彼は、耳が聞こえて喋れたのだ。

 偉大だった父が酒に溺れて死ぬ様を見たチーフは心を閉ざし、病院のなかで自ら籠の中の鳥となり、生活していた。

 主人公はチーフを脱走に誘う。だが、チーフはその誘いを断わる。

 そして主人公の脱走の日がやって来た。

 彼は酒と女を深夜の病院に持ち込み、患者たちを集めてお別れパーティーを行う。

 だが、あまりにも騒ぎ過ぎたために、主人公は寝過ごしてしまう。

 そして彼は特別な問題患者というレッテルを貼られる。

 その夜、主人公は戻って来た。主人公の自由奔放さに感銘を受けたチーフは、主人公のベッドに行き「今は俺もこの病院を出たい気分だ」と伝える。

 だが、反応がない。チーフは主人公を見て愕然とする。彼はロボトミー手術を受けさせられていたのだ。

 チーフは怒りと悲しみを爆発させる。「あんたを一人で残しはしない」そう言って主人公を窒息死させ、彼は病院の鉄格子の窓を破って、外の世界に消えていく。



 映画は、終盤直前までの「ヒューマンドラマ」で、主人公に散々感情移入をさせたあと、「脱走の失敗」、「ロボトミー」と一気にどん底まで叩き落とします。

 快活で機知に富んでいた主人公は、思考能力がほとんどない廃人のような状態に、たった数時間で変貌させられます。病院での管理を用意にするためだけに……。

 この一連の下り坂のシーンは、背筋が寒くなるものがあります。

 人間が人間であるために最も大切なことは思考です。

 その思考が、物理的手段で永遠に奪われる。

 その光景に恐ろしさを感じない人はいないはずです。

 この結末を事前に知っていても、衝撃的でした。



 さらに、映画はここで終わりません。主人公が、チーフに変わって最後のシーンに突入します。

 これまで、自ら籠の中の鳥になることを選んでいたチーフが、病院の行動に激しい怒りを爆発させ、巨大な冷水機を持ち上げて、窓を破壊して病院の外に出て行きます。

 このシーンは、鳥肌物です。

 病院は管理体制のメタファーであり、そこから出るという行為は、そのくびきから逃れ、人間の尊厳と自由を取り戻すということを示しています。



 ヒューマンドラマで徐々に高いところまで持っていき、ロボトミーでどん底まで落とし、チーフの脱走でその落差を一気に跳ね上げる。

 その感情の振れ幅の大きさは素晴らしかったです。

 非常によく出来た映画だと思いました。



 しかしまあ、なかなかこういった話は映画として作りにくいだろうなと思いました。

 商業主義的な発想から言うと、観客をどん底に突き落とすような映画は、スポンサー受けが悪いですから。

「なぜ、ハッピーエンドで終わらないのか」と問われれば、商業的見地から言うとあまり反論できません。

 そういう意味では、原作付きだからできた映画なのかもしれないなと思いました。



 原作と言えば、このように最後の瞬間だけ主人公が入れ代わる話をどのような文体で書いているのか気になりました。

 話の内容的には、主人公の一人称視点だろうと想像できるのですが、それならば最後のチーフのシーンは問題が出てきます。

 チーフの一人称視点なのか、三人称視点なのか、少し気になりました。
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