映画「西部開拓史」のDVDを六月上旬に見ました。
1962年の作品です。
大作です。
ありとあらゆる意味で大作です。
時間は180分ぐらいなのですが、時間以上に大作です。
まず、全部で五部構成です。ある開拓者の一家の三代、五十年(1830年代〜80年代)を描いた作品です。そして、監督が三人います。
第一、第二、第五話が、ヘンリー・ハサウェイ。第三話が、ジョン・フォード。第四話が、ジョージ・マーシャル。
そして、当時の有名俳優がぞろぞろ出てきます。
さらに、シネラマのキラーコンテンツで横長大画面です。また、人気を博し、二年間上演され続けた作品です。
当時の「金」と「人」を、「これでもかとぶち込んでみました」といった感じの映画でした。
感想は「これは小さい画面ではなくて、シネラマで見たかった」です。
シネラマとは、三本のフィルムを同期させて、湾曲したスクリーンに上映して巨大画像を映す方式です。
この映画では、「シネラマで見るための映像」を、これでもかと撮っています。迫力満点です。
DVDでは、三つの画面を横に並べて全部くっつけていました。おかげで、映像全部を見ることができるのですが、物凄く映像が小さくなっていました。
「ベン・ハー」とかもそうですが、一度シネラマで見たいものです。
アイマックスあたりでやってくれたら行くのですが。
あの大スクリーンならできそうなので。
さて、細かな感想です。
五十年、三代に渡る話なので、シナリオがもっとごちゃごちゃしているかと思っていましたが、よく考えられていて、すっきりしていました。
簡単に「シナリオの分岐とキャラ」を示すと以下のようになります。(以下、少しネタばれあり。まあ、ミステリーではないので、大丈夫だと思います)
1.一代目が、東部から西部に旅立つ。筏で川を使って移動。二代目にあたる姉妹が一緒に行く。
2.筏が座礁。妹が、ビーバー取りの猟師と結婚。猟師は農民になる。妹夫婦は西部に根を下ろす。
3.姉は都会が好きなので東部に戻り、キャバレーの歌手になる。彼女は西海岸の金鉱を相続して、大陸を横断する。金鉱は涸れていたが、西海岸に根を下ろす。
4.妹の息子が南北戦争に参加。
5.妹の息子は、西部に戻る。姉がやって来て合流。妹の息子は、開拓時代のガンマンの残党と戦う。
シナリオ上の分岐は、「姉と妹の分岐」一回しかないです。そして、その分岐も、「西部に根付いた生活」と、「当時のアメリカを広く見渡す」という脚本上の都合を満たす分岐です。
なので、特に混乱することもなく、分かりやすく話が進んでいきます。
この映画は、「テレビでは体験できない、迫力満点のシネラマの映像を楽しむ」という目的を持った作品です。
商業的にそれが「売り」になっています。そのため、「ごちゃごちゃ考えなくても楽しめる」という方向性の作りにする必要があります。そうでないと、映像を素直に楽しめないので。
そのため、前述のような「シナリオの簡素さ」と、「アメリカ開拓万歳、俺たち凄い!」的な方向性は重要です。
この映画は、何よりも商業的成功を第一義としている作品なので。
シネラマ作品は、当時、テレビに押され始めて苦しかった映画業界が、キラーコンテンツとして市場に送り込んだ商品です。
そういった映画なので、本作は、深く考えずに楽しめるエンターテインメントの作品になっています。
しかしまあ、大きな画面で見たかったです。「気持ちよさそうな映像」「派手な映像」「迫力満点の映像」が目白押しだったので。
一つ、映画を見る前に予想していて、実際はそうではなく、意外に思ったことがあります。
それは、インディアンに対する扱いです。
単なる悪役や敵として描かれているだろうなと想像していたのですが、実際は違っていました。
かなり善の側の人間として描いていて、開拓者たちが約束を破り、騙して、蹂躙していったという見せ方をしていました。
商売的に、そういった方向性ではないだろうと思っていたので意外でした。
明らかに開拓者たちが異物で、自然や文化の破壊者であると表現していました。
それは「そうとも取れる」という程度のものではなく、主人公の何人か(妹の夫、妹の息子)がインディアン側に感情移入する立場の人物として設定されているという、非情に明確なものでした。
同じ頃の映画は、どういった描き方だったのか、気になりました。
そういう意味では、脚本家はシナリオに深みを導入しようとしたのかもしれません。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。最後まで書いています)
ある開拓者の一家が東部を離れて、筏で西部へと出発した。
その一家の姉は都会が好きでそのことが不満だったが、妹は親に素直に従っていた。
彼らは、西進の途中で、一人のビーバー獲りの猟師と出会う。筏が座礁して、家族を何人か失った後、妹は猟師と結婚して、西部の開拓を始める。
姉は東部に戻り、キャバレーの歌手になる。
姉は、西海岸の金鉱を相続する。そして、西に向かう一団とともに西海岸を目指す。その途中、ギャンブラーの男と恋に落ちる。
西海岸の金鉱は、既に涸れていたが、その地で彼女はギャンブラーの男と結ばれる。
妹の一家は、西部で農場を開拓していた。そして戦争が起こる。夫と息子は戦争に行き、彼らが帰ってくる前に妹は死ぬ。夫も戦場で死んだ。
戦争が終わった後、息子は大陸横断鉄道の警備係となる。インディアンとの交渉などを通して、彼は開拓者たちの理不尽さを体験して職を辞する。
彼は、保安官をした後、自分の故郷に帰ることを決める。
妻と子供、そして、母の姉とともに、彼は農地に根付く。
そこで、かつて争ったガンマンたちと出会う。
ガンマンたちは、列車襲撃を企んでいた。そして、そこで金を稼いだ後、かつて保安官だった主人公を倒そうと考えていた。
彼は、自分の家族を守るために、ガンマンたちと戦う。そして、最後と決めた戦いに挑み、「西部開拓」という混乱の時代に終止符を打とうとする。
DVDには、「西部開拓史」を中心とした「シネラマの歴史」を説明する映像が付いていました。
その解説で「へーっ」と思ったのは、「シネラマは、元々軍事技術を応用したもの」という話です。
爆撃機の練習に使っていた技術を利用しているという話でした。
そんなところで、軍事技術が使われていたのかと思いました。
俳優に関しては、個人的には、ギャンブラー役のグレゴリー・ペックがよかったです。
最近何本か見た映画の影響で、「グレゴリー・ペックはいいな」と思うようになりました。そのため、画面に出たら、思わず注目してしまいます。
あとは、妹役のデビー・レイノルズが、健康なフェロモンを発散していてよかったです。
姉も呆れるぐらいのフェロモンでした。
正直言って、エロかったです。
これはまあ、ビーバー獲りの猟師も落ちますよ。
デビー・レイノルズは、「雨に唄えば」が代表作のようですが、まだ未見です。その内、見てみようと思います。