映画「ファインディング・ニモ」のDVDを七月上旬に見ました。
2003年のピクサーの映画です。
イソギンチャクの中で生活する「カクレクマノミ」の親子の家族愛兼冒険ストーリーです。
面白かったです。
ピクサーの映画は、「トイストーリー」は面白くなかったですが、それ以外で見たものは全部面白かったので、毎回楽しみです。
どうでもいいですが、近くのTSUTAYAは、まだ「カーズ」を準新作にしているのはどうにかして欲しいです。旧作にしてくれれば、真っ先に借りるのに。
さて、本当にどうでもいいことから書きます。
この映画の名前を、生まれて初めて聞いた時、「ファイティング・ニモ」だと思っていました。
ニモという主人公が戦うストーリー。
でも、間違っていました。「ファインディング・ニモ」ニモを探すというストーリーでした。
「ファイティング・ニモ」なら、凄い違う話になるなあと思いました。
ピクサーの最近の映画を見るたびに思うのですが、非現実世界の物と、現実世界の物の映像の融合が非常に上手いなと思います。
今回の映画の登場人物たちの多くは魚です。それも、擬人化した魚。
それに対して、背景などは、現実世界に近い質感の物です。
この統一感が見事です。
毎回本当に上手いなと思います。
DVDには、監督や脚本の人たちによる解説や、ピクサー社員による技術解説の映像が入っていました。
これが、長くて非常によかったです。
そこで、言われていて初めて気付いたことは「ニモは身体障害者なんだ」という事実です。
主人公のニモは、子供の魚で、右側の鰭が小さく、上手く泳げません。
アニメ的な魚の姿をしていたために深く考えていませんでしたが、これは確かに身体障害者です。
人間の姿にしていたら、右足が短く、びっこを引きながら歩くようなものです。
人間の姿ではなく、擬人化したアニメだからこそ、描きやすい物事もあるんだなと、この説明を聞きながら思いました。
普通に人の姿で描くと、もっと暗い物語になってしまいますから。
また、DVDの解説を見ながら、少し驚いたことがあります。
それは、かなり後期の段階まで、ストーリーを弄り回していたという事実です。
3Dアニメ映画となると、けっこうお金が掛かるので、無駄な映像を作っている余裕はないだろうと思っていました。
しかし、解説を見ていると、「ここは、作ってみたんだけど、使わなかったんだ」「途中で、話の流れを変えて、全部没にしたんだ」というシーンが大量に出てきます。
それを見て、「うわ、金があるなあ」というのが素直な印象でした。
まあ、手書きで書いたアニメを没にするよりは、気楽にできるのかもしれませんが。
また、脚本段階で話がきちんと固まっていないのにも驚きました。
現実の撮影が入る映画なら、監督の意向で、脚本が変わるのはよくあることですが、3D映画でも、そういった感じで、レンダリングした後、話の流れ自体を変えるというのはびっくりしました。
物語は、親側の冒険ストーリーと、子側の成長ストーリーが交互に進んでいく方式でした。
これは、製作途中で、もう一本、過去のストーリーを交えるように考えて進めていたそうですが、複雑になり過ぎるという理由で、過去は冒頭に圧縮してカットしたそうです。
正解だったと思います。
親一人、子一人の二人のストーリーというのが、分かりやすくてよいです。
個人的には、親側の冒険ストーリーが、派手でよかったです。
鮫や、機雷や、クラゲの大群や、海流や、クジラなど、いろんな仕掛けがあって楽しめました。
映像的によくできているなと思ったのは、主人公のニモの可愛さです。
これなら、ぬいぐるみが欲しいなと思いました。
そういえば、ディズニーのぬいぐるみと言うと、可愛くないスティッチのぬいぐるみをやたら見掛けるのですが、私はニモのぬいぐるみがあれば、そちらの方がいいなと思います。
特にこのニモは質感が非常に素晴らしいです。触れたくなります。
DVDの解説では、この質感には苦労をしたということを言っていました。ピクサーでは、この質感をグミ効果と呼んでいるそうです。「確かにグミだ」と思いました。そんな質感です。
また、各魚のデフォルメも素晴らしく、個人的には鮫の顔の動きがお気に入りでした。
以下、粗筋です。(ネタバレ、少しあり。中盤過ぎぐらいまで書いています)
サンゴ礁の海に、カクレクマノミの夫婦がいた。
彼らはイソギンチャクの中で生活していたが、卵は近くの岩の間に産んでいた。
ある日、その場所に鮫がやって来る。父親は、隠れているようにと言うが、母親は卵が心配で、イソギンチャクの家を飛び出してしまう。
妻と卵が失われた夫は、最後に残ったたった一つの卵を大切に育てる。そしてその子に、妻が名付けたいと言っていたニモという名前を与える。
ニモは成長し、学校に通う年になった。
父親は心配性で、わんぱく盛りのニモは、そんな父親を疎ましく思っていた。
彼は学校で会った友達と一緒に、こっそりと生徒たちの群れから離れる。そして、人間の乗っている船を見つける。
彼らは、その船にタッチする遊びをしようとする。
そこに現れる父親。彼はニモを叱り付ける。
だがニモは反発して、船に向かう。そして、人間に捕まってしまう。
驚いた父親はニモを追い掛ける。しかし、船に追いつくことはできずに疲れ果てる。
そんな時、彼は一匹の魚に出会う。それは、物忘れのひどい雌の魚だった。
父親は、その魚とともに、息子を探す旅に出る。手掛かりは、人間が船から落とした水中眼鏡だ。そこには、その持ち主の名前と住所が書いてあった。
人間に捕まったニモは、シドニーの歯医者の水槽に入れられる。
そして、その水槽で仲間たちに会い、脱出計画を打ち明けられる。ニモは、彼らを通して自分の力で状況を打開していく力を身に付けていく。
父親は、鮫に襲われ、機雷の爆発に巻き込まれ、潜水艦に押し潰されそうになり、深海魚に襲われながら、陽気で物忘れのひどい魚とともに、旅を続けていく。
そして、水中眼鏡の持ち主の住所を探り当て、そこへと向かって大移動をする。
この映画を見て思ったのは、フィクションのバランスの大切さです。
そもそも魚が人間の文字を読めるわけがありません。なので、水中眼鏡に書いた住所を読むなど不可能です。
この映画では、人間以外の生き物が全員しゃべりあうことができ、人間の言葉も聞き分けられるという設定になっています。
そして人間側からは、そういった部分がまったく見えずに、現実世界となんら変わりがないようにしています。
そのため、魚が人間の文字を見ても、一応そのルールに則っているので許容できます。とはいえ、ぎりぎりのラインですが。これ以上やると、バランスは崩れます。
最初、どうやって、息子の場所を探すのかと思っていましたが、なるほどなと思いました。
あと、キャラクターの設定について、少し思ったことがあるので、メモをしておきます。
それは、物忘れのひどい魚の存在です。
この魚は、物忘れがひどく、生活もできないのではないかというぐらい頭が弱いです。
しかし、それだけのマイナス設定が付いているからこそ、人間の文字が読めるという強烈なプラス設定があっても何となくバランスが取れています。
こういった、誰もができるわけではないけど、特殊な人ならできるというスキルは、強烈なプラスを持っている存在(神とか、古老とか)か、強烈なマイナスを持っている存在(道化とか、不具者とか)が相応しいです。
なんでもない人が、ひょっこりと持っていると違和感があります。
とはいえ、「かなり唐突だな」と思いました。「文字なんか覚えられないだろう、この魚は」というのが素直な感想です。
あと、この魚は、ちょっと鬱陶しいなと思うシーンが多かったです。
DVDの解説の最後には、ピクサーの首席アニメーターだったグレン・マックイーンという人が死んだという話でまとめられていました。
マックイーンというのは、確か「カーズ」の主人公の名前だったはず。
ここから来ているのかなと思って調べたら、そうでした。
DVDでは、歯医者の姪の女の子(ニモたちの敵)の名前が、「モンスターズ・インク」の製作の名前(Darla Anderson)を使っていると言っていたので、こういったことは多いのかもしれません。
なんにせよ、こういった製作者の一人が死んだという話が、DVDに入っているのは珍しいなと思いました。
最後に、映画が終わった後のスタッフロールが楽しかったです。
こういった、面白い小ネタ満載のスタッフロールなら、最後まで見る気がします。
特に、「モンスターズ・インク」のマイクが横切ったりするのは、遊び心があって、いいなと思いました。