映画「スカーフェイス」のDVDを七月上旬に見ました。
1983年の作品で、監督はブライアン・デ・パルマ、脚本はオリヴァー・ストーン、主演はアル・パチーノです。
170分という長い映画でしたが、それほど長さは感じませんでした。
映画は、何よりも、アル・パチーノの存在感が圧巻でした。内部からふつふつと湧き上がってくる物を持った主人公を好演してしました。
本作は、アクションシーンだけの映画ではありませんが、非常に緊迫感がありました。これは、緊張感の高まるシーンの演出が上手いからなのだろうなと思いました。
ピンチが起こった際、どうなるのか分からないといったシーンをうまく入れて、どっちに転ぶか分からなくして、その緊張感が頂点に行った時に結果を出す。
そういったじらし方が上手かったです。
でもまあ、それも全て、アル・パチーノ自体が醸し出している緊張感に負う部分が大きいなと思いました。
変な重力を放っていましたので。
アクションシーンと言えば、最初の麻薬取り引きのシーンが圧巻でした。
安宿の一室に行くと、それは罠で、そこから緊迫したやり取りと銃撃戦に行くという部分です。
その間に、拷問のためにチェーンソーで人を切り刻んで行くシーンがあるのですが、これがとてもよかったです。
切っているところは一切映していないのですが、演技とカメラワークで、凄まじいまでの臨場感を生み出しています。
これは凄いなと思いました。
映画が始まって三十分ぐらいだから主人公が死ぬわけがないのですが、「これは殺されそうだ」と本気で思いました。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。終盤まで書いています。ただ、この手のギャング系の話は、基本の筋はみんな同じなので、あまり気にする必要はないかもしれませんが)
キューバに住む主人公は、アメリカに移民として渡ってくる。そして、暗殺の依頼を受けて、アメリカのグリーンカードを獲得する。
彼は裏でのし上がっていくために麻薬の取り引きを引き受ける。しかしそれは罠だった。
彼はその罠を切り抜ける。そしてボスに気に入られる。そこから彼は、裏の社会での出世街道を歩み始める。
主人公は順調に出世する。そして、ボスの使いで南米の麻薬組織の黒幕と会う。主人公は彼と個人的に親密になることで、ボスを追い落として自分の組織を作る。
彼はボスの女に惚れていた。彼はボスを倒すとともに、その女も手に入れる。彼の運と実力は頂点に達する。
しかし、その絶頂期は長く続かなかった。女も自分も麻薬中毒で、家庭は上手くいかなかった。さらに脱税で裁判に掛けられることになる。
彼は南米の黒幕との関係を強化することで、その危機を乗り越えようとする。しかし、手違いが起こり、黒幕と全面戦争する羽目になる。
南米の黒幕は、主人公の屋敷に暗殺集団を送り込む。主人公は屋敷に立てこもり、麻薬を大量に摂取して、迫り来る敵を機関銃で薙ぎ倒していく。
さて、最初に書いた感想以外に、思ったことを書いていきます。
まずは、音楽についてです。
やたら、電子音を使っています。
たぶん当時は斬新な音だったのだと思います。そして、その音を使い、「斬新な表現の映画」という印象を与えようとしていたのでしょう。
しかし、今聞くと非常にチープに聞こえます。
映像の重みに、音楽が付いて行っていません。
時代的な背景があるものの、勿体無いなと思いました。
映画中何度か出て来る「ワールド・イズ・ユアーズ」の言葉が印象的でした。
台詞として出てくるのではなく、飛んでいる飛行船に書いてあったり、屋敷の飾りに書いてあったりします。
その使うタイミングが上手かったです。
男として生まれたからには、一度でいいから、世界をこの手に掴んでみたいものです。
ヒロインの女優ミシェル・ファイファーが印象的でした。
ほとんどの場面で、背中が全部見えるドレスや水着を着ています。そして、それらの服は、胸がぎりぎり見えそうなデザインになっています。
なかなかそそられるデザインでした。
しかし、こういった服が似合う人は、実際にはほとんどいないです。作り物のようにきれいな人でなければ着こなせません。
そういう意味で「雲の上の女」という立場を印象付ける、よいデザインの選択だなと思いました。