映画「ヘルハウス」のDVDを七月中旬に見ました。
原題は「The Legend of HELL HOUSE」。1973年の作品で、原作・脚本は「激突!」のリチャード・マシスンです。
題名の通り、家物ホラー映画です。
面白かったです。
こういうストイックでタイトな物語は、様式美を感じて好きです。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。中盤の最後ぐらいまで書いています)
ヘルハウスと呼ばれる幽霊屋敷があった。
二十年前にこの館が調査された時、たった一人の霊媒師を残して、霊能力者や科学者は全員死んだ。
物理学者の主人公は、この屋敷を買い取った富豪から一週間の調査を依頼される。
彼は、科学的手法で霊を検出し、取り除く方法を研究していた。さらに、除霊のためのマシンも作っていた。しかし、その除霊マシンの納入は、調査の半ば頃になる予定だった。
物理学者は、妻とともにヘルハウスに入る。
そこには、当代随一の若手女霊媒師と、二十年前の唯一の生き残りの男性霊媒師も来ていた。この四人で調査は開始される。
ヘルハウスは、数十年前にこの場所に住んでいた富豪の持ち家だったという。彼は見上げるほどの巨人で、この家から一歩も出ずに、屋敷の中で神を冒涜する淫虐の限りを尽くしたという。
屋敷では様々な物理現象が起こる。そして、女霊媒師は、この現象は富豪の息子のせいだという。彼女は富豪の息子の死体を発見する。
しかし、息子の死体を埋葬しても心霊現象はやまなかった。
ヘルハウスには、もっと恐ろしい霊が潜んでいるらしい。
女霊媒師はその原因を探ろうとする。物理学者は、科学的にこの屋敷の霊を殲滅しようとする。
だが、二十年前の生存者は、霊に挑まずやり過ごすことこそが、唯一の生き残る方法だと言って譲らない。
そして、徐々に霊の攻撃は苛烈さを増していき、四人の中に死者が出始める。
まず、主要三人物のキャラが立っていてよかったです。
物理学者をニュートラルとして、能動的な女霊媒師、受動的な生き残り霊媒師。
特に、後者の霊媒師を演じているロディ・マクドウォールがよかったです。
やせこけていて、心を堅く閉ざしている役なのですが、非常にいい雰囲気を出していました。
全ての動作を、全身を触覚にしたような繊細さで行う演技はかなり好みでした。
あと、女霊媒師のパメラ・フランクリンは、非常に幼い顔立ちで、そういった顔が好みの人には人気がありそうだなと思いました。
ただ、骨格に対する肉付きから、年を取ると崩れそうな顔だなとも思いました。普通に加齢で肉をたるませていくと、かなり落ちそうだったので。
さて、この映画ですが、落ちの付け方が非常によかったです。
私好みでした。
大量虐殺や殺人狂などといった話を使わず、「確かに人によっては狂気的執着の原因になるかもしれない」と思わせる理由を用意していました。
そして、そのことが分かった後には、最初の頃に出て来たヘルハウスの噂について「なるほど」と納得します。
上手いなと思いました。
こういった映画を見ると、低予算でもなんとか作れそうだなと思ってしまいます。
でもまあ、そのためにはいい脚本と、いい演出家が必要なのでしょうが。
こういった家物ホラーは、大学の映研とかで結構作られているのではないかと思いました。