映画「オペラハット」のDVDを、八月上旬に見ました。
1936年の白黒作品で、原題は「MR.DEEDS GOES TO TOWN」です。
監督はフランク・キャプラ。最近、かなりまとめて彼の作品を見ています。
今回もなかなかよかったです。なので、次にまた何作か借りてみようと思っています。
とりあえず、今まで見たキャプラ映画は、どれも基本構造は同じでした。
・正直者がいる。
・彼が、場違いな場に据えられたり、大きな責任を伴う役を担わされたりする。
・彼は最初は頑張る。
・しかし、次第に軋轢を生み出して、追い詰められていく。
・彼は絶望する。
・しかし、そんな彼を助けてくれる人たちが現れる。
・彼は勇気を持って、自分が信じる正義を貫き、人々に一石を投じる。
今日日、こんなベタベタな展開の映画はありません。しかし、こういった映画は、いつの時代でも共感できるものです。実際、私も「いいな」と感想を持ちましたので。
映画館での興行的に成功するかどうかはともかくとして、こういった映画は重要だと思います。
また、こういった映画が作られた時代があるというのは、貴重だなと思いました。
どうでもいいですが、「オペラハット」というタイトルは、あまり本編とは関係ないです。
どうも、原作が「オペラハット」という名前なので、日本語タイトルが「オペラハット」となっているようでした。
原作は、アメリカの作家クラレンス・バディントン・ケランドによる雑誌連載小説「オペラハット」(1935)だそうです。
東北大学大学院国際文化研究科に、よい文章があったので、リンクしておきます。こちらに、原作と映画の関係の詳細がまとめられています。
□東北大学大学院国際文化研究科 - 国際文化研究科論集 - 第12号 (2004年) - 論文
「詩人ハリウッドへ行く 映画『オペラハット』とロングフェロー」(澤入 要仁)
http://www.intcul.tohoku.ac.jp/mas/ronshu/vol12/12sawairi.pdf
以下、粗筋です。
主人公は、田舎町の詩人兼チューバ演奏者。
彼の元に、ある日、スーツ姿の男たちがやって来る。
彼らの話では、ある富豪が死んだらしい。そして、その遺産を彼が相続することになったそうだ。
主人公は舞い上がるでもなく、そのことを淡々と受け入れる。そして、田舎を離れて都会に行く。
富豪の遺産は膨大で、彼の血縁者や、元弁護士たちが、その遺産をどうにか自分たちの物にしようと企んでいた。主人公はその渦中に飛び込む。
また、私生活の彼を待っていたのは、下世話な話題を求めるマスコミたちだった。
その中に、有名な報道賞を取ったことのある女性ジャーナリストもいた。彼女は普通の人の振りをして、主人公を誘惑して、その失態を新聞に記事として書き、新聞の売上を大幅に伸ばす。
主人公はシンデレラ男と揶揄され、その心の救いを、その元凶である女性ジャーナリストに求める。
最初は記事のために近付いた女性ジャーナリストだったが、主人公の正直さに次第に引かれ始める。
だが、世の中はそれほど上手くはいかない。女性ジャーナリストに求婚しようとした主人公は、その正体を知って絶望する。
そして、せっかく気持ちが自分に向かい始めた女性ジャーナリストを完全に拒絶する。
そんな彼の屋敷に、一人の元農民が銃を持って乗り込んで来た。
時は大恐慌時代。彼は、大きな資産を得た主人公の、マスコミを通した狂態に怒り狂ったのだ。
絶望していた主人公は、元農民の罵詈雑言を特に反論せず聞き続ける。
その内に、元農民は落ち着く。主人公は彼に食事を与えながら、ある決意をする。
主人公は、大恐慌で土地を失った人々に、土地を与える事業を、相続した財産で始める。
そのことに驚いたのは、主人公の相続した財産を当てにしていた周りの者たちだ。彼らは、主人公を「財産管理能力のない禁治産者」として裁判所に訴える。
主人公の絶望はさらに深くなる。彼は裁判所で、弁護士も付けずに無言を通す。
だが、そんな彼の心を溶かす、ある人の言葉が裁判所で投げ掛けられたのだ……。
個人的には、「群集」や「スミス都へ行く」の方が好きでした。
この映画も出来がいいですが、「物語上の奇抜な仕掛け」という点では劣っています。割と普通の話ですので。
あと、映画を見ながら思ったのは、「やはりキャプラの映画は、女性が強いなあ」です。
この映画でも、女性ジャーナリストが男性の主人公をぐいぐいとリードします。
四本見て、みんなそうだったので、これはこの監督の基本パターンなのだと思います。
男性を導く、有能な女性。
そういった関係が、この監督は好きなんだろうなと思いました。
以下、一部、終盤のネタバレになる内容です。
主人公が、最後の方で言う、以下のような台詞がよかったです。
「資産があり、働く気がなく、お金だけを欲しがる者たちと、働く気があっても、そうするためのわずかなお金がない者たち。本当にお金が必要な人たちがどちらかは、十歳の子供でも分かることだ」
こういったことを、正面から言うフランク・キャプラの映画は、やはりいいなと思いました。