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2007年09月25日 11:17:24
ヒトラー〜最期の12日間〜
 映画「ヒトラー〜最後の12日間〜」のDVDを、三日前に見ました。

 2004年の映画で、製作国はドイツ。原題は「Der Untergang」で、英語に直せばdownfall。これは日本語で、失墜、転落、失脚、破綻、滅亡といった意味だそうです。

 映画は、ベルリンの地下要塞を中心にして進んでいきます。

 ヒトラーという個人の精神の破綻とその後の自殺への傾斜、そしてベルリンと第三帝国の崩壊がよく描かれている映画でした。



 主役のブルーノ・ガンツは、「ベルリン・天使の詩」の主役の人です。

 この「ベルリン・天使の詩」は、言及が多い映画にも関わらず、まだ見ていないので、見る映画リストに追加しておきました。

 監督はオリヴァー・ヒルシュビーゲル。「es[エス] 」の監督です。閉鎖空間での抑圧された心理の描写という点では、両者共通しています。

「es[エス] 」を見た時は、ゲオで借りて見たのですが、DVDにやたら傷があり、いくつかのシーンがまともに見られませんでした。

 少し話が逸れますが、値段が高く、場所も遠いのに、TSUTAYAでDVDを借りるようになったのは、ゲオのDVDに傷がやたら多かったからです。



 今回の「ヒトラー〜最後の12日間〜」では、視点をいくつか設けることで、地下要塞でのヒトラーの焦燥とともに、ベルリン陥落の悲惨な様子を描写していました。

 視点は大きく分けると二つあります。ヒトラーの女性秘書の視点。そして、軍医の視点。

 女性秘書は、地下要塞内の視点となり、軍人や政治家ではない「人間ヒトラー」を見つめることになります。

 また軍医は、陥落して混乱していくベルリン市内の「市民と軍人」を見ていくことになります。

 それ以外にも、視点は多数でてきます。ゲッベルスの視点、ヒトラーの愛人のエヴァの視点、エヴァの妹の夫の視点、将軍の視点、地下要塞の兵士の視点……。

 登場人物がかなり多い映画ですが、特に登場人物の名前を覚えなくてもどうにかなります。

 これで、全員の名前と顔を一致させないと理解できないような作りになっていると破綻していたでしょう。

 基本的に、圧倒的な存在感を持っているヒトラーと、彼の愛人のエヴァ、女性秘書、ゲッベルス、そして軍医の五人を覚えておけば、混乱はそれほどありません。

 この五人は、他の登場人物と明らかに違う容姿をしていますので。



 この映画では、ヒトラーの精神を描く重要な役として、アルベルト・シュペーアーが前半大きく出てきます。

 ちょうど去年、彼の書いた「第三帝国の神殿にて ナチス軍需相の証言」を読んでいたので、「おー、シュペーアーだ」と思いながら見ました。

 この映画のシュペーアーは、本で読んだ時のイメージに非常に近かったです。

 温厚で、忠誠心を持っていて、でも言うべきことはきちんと言う。そして、ヒトラーに傾倒して友愛の情を感じていながらも、国民を第一に思っている。そんな描かれ方をしていました。

 また、都市の立体模型を見ながら二人で会話するシーンは、上記の本を強く思い出しました。



 映画は、二つの視点で描かれていると書きましたが、タイトルの「Der Untergang」は、この二つの視点に掛けられています。

 地下要塞での、首脳部や兵士たちの絶望と現実逃避を交えた破綻。

 そして、ベルリン市内の軍人たちの、極限状態によるモラルの破綻と、ソ連軍侵攻による前線の崩壊。

 それらがじわじわと描かれていき、やがて第三帝国が完全に崩壊する様が描かれます。

 その途中途中で、登場人物各個人の破綻が描かれながら、映画は進んでいきます。

 映画では山場がいくつも用意されています。ヒトラーとエヴァの自殺を頂点として、ゲッベルス夫人による子供の毒殺、ゲッベルス夫妻の自殺、エヴァの妹の旦那の処刑、シュペーアーの辞去などなど。

 基本的に、地下要塞の視点は「名のある個人の死」を中心に描き、ベルリン市内の視点は、「名もなき人々の死」を描いています。

 そして、映画が進んでいくと、この二つの「崩壊」が奇妙に不協和音を発し始めます。

 地下要塞の視点は、絶望ではありながらも陶酔による死です。

 そのことを強調しているのは、女性秘書がヒトラーに「私も一緒に自殺します」と言って、毒薬をもらうシーンです。

 対して、ベルリン市内の視点は、本人の意思を蹂躙するような非人間的な死です。

 それを強調しているシーンは、数多くありますが、病院のシーンを私は強く覚えています。

 医師は運び込まれた人々の手足を、疲労の濃い顔でノコギリで切って、どんどん箱に投げ込んでいきます。

 その箱には、人間の手足が、溢れんばかりに山積みにされています。

 この二つの崩壊は、やがてヒトラーの死とともにゆるやかに収束していきます。

 それは決して急速には行われません。

 戦線が破綻したドイツ軍に、ヒトラーの死が行き渡るのには時間が掛かるからです。そして、何の目的も意思もなくなったまま、戦争は惰性で続き、殺戮と狂気がしばらく続きます。

 実際に映画では、ヒトラーの死以後、だいぶ長く映画が続きます。

 この手の戦争末期物の映画としては、よくできているなと思いました。



 以下、粗筋です。(歴史的事実なので、特にネタバレにならないと思います。群像劇なので、細部は書きません)

 ヒトラーの秘書の一人は、ベルリン陥落時に、ヒトラーの住む地下要塞にいた。

 既に敗戦は必死の状況。しかし、ヒトラーは、一人その現状を否定し、奇跡の逆転を主張していた。

 だが、その言葉を信じている首脳部の人間は誰もいなかった。また、そういった状況であるにも関わらず、周囲の軍人たちはヒトラーの言説を誰も否定できないでいた。

 なぜならば、逆らえば更迭と死が待っていたからだ。

 ヒトラーは、司令官たちを罵倒し、彼らを無秩序に首にして、他の者をその地位に付けようとする。

 自分だけが正しく、他の者たちは全て間違っている。ヒトラーはそう声高に叫んで周囲に当り散らす。

 しかし、そんなヒトラーも、私生活では穏やかで優しく紳士的な人間だった。

 ヒトラーの私生活の面を中心に見ている女性秘書たちは、そういった窮地に立つヒトラーに同情的だった。

 彼女らは、ヒトラーを可哀相と思い、まだ逆転の目があると信じ、もしヒトラーが死ぬ時は、ともに死を選ぼうと考えていた。

 地上では激戦が続いていた。軍医は、ベルリンから逃げ出す兵士や、市民を虐殺する兵士、そして市民兵を組織してろくな武器も持たせずに敵に特攻させる軍部を目撃する。

 そして、野戦病院には無数の怪我人が運び込まれ、人々はまとまな処置も施されないまま、傷付いた手足を切り落とされていた。

 いよいよ包囲の輪は小さくなり、あと数日、そして数十時間で地下要塞まで敵が近付く距離になった。

 ヒトラーは、かねてから準備していた通り、死を選ぶ。それと前後するようにして、彼に心酔していたゲッベルスも自殺する。

 指令部には空虚が残された。そして、停戦の支持のないまま、戦争は惰性で続く。

 しかし、徐々に首脳部の崩壊が周囲に伝わりだす。けれども、すぐに戦争は終わらなかった。全滅覚悟の特攻を企てる者や、完全焦土を叫ぶ者たちが後を絶たなかったからだ。

 だが、徐々に事態は収束に向かう。戦争はゆるやかに終結し始める。



 やはり、この映画で一番出色なのは、ヒトラー役のブルーノ・ガンツでしょう。

 ヒトラーにしか見えません。

 そして、注目すべきは彼の背中に回した手です。いつもプルプルと震えていて、どう考えても、精神を病んでいる人です。

 また、その表情も巧みです。追い詰められて精神に破綻を来たしているけれども、すんでのことで意識を保っている、その微妙な匙加減をうまく演じています。

 顔は少し違うと思うのですが、そこに本当にヒトラーがいるような感じでした。



 映画は、ベルリン市内の細かなエピソードがよくできていました。

 子供が対戦車砲を持って、敵戦車に肉迫するシーンや、市民が自軍の兵士に虐殺されるシーン。また、市民兵が敵に向かっていき、何もできずに呆気なく全滅するシーン。

 これでもかというほど「愚かな」シーンが続きます。

 映画の中の軍医でなくとも、それらのシーンに遭遇するたびに、くらくらします。

「なんだこの現状は?」

 思わずそう言いたくなります。

 そうかと思えば、地下要塞では、兵士たちが酒を飲んで現実逃避していたり、ワインを飲みながら最後のパーティーをしていたりします。

 こういった対比は、落差があればあるほど有効だなと思いました。
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