映画「眺めのいい部屋」のDVDを八月下旬に見ました。
1986年のイギリス映画で、原題は「A Room with a View」。
売りは、ヘレナ・ボナム・カーターが主演なところだと思います。
彼女の経歴を見ていると、この映画が映画デビュー作のようです。
□Wikipedia - ヘレナ・ボナム=カーター
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83...
以下、若干のネタバレありです。
恋愛映画なので、結果がどうなるのかはある程度分かると思うので、ネタバレと考えなくてもよいかもしれません。
さて、映画は、あまり自己主張が強くなかった若い女性が、恋を通して自我に目覚めるといった感じの内容です。
見た感想としては、かなりむかつきました。
むかついたのは主人公に対してではなく、その相手役です。
不躾に女性に迫り、「君は僕と恋に落ちるはずだ」だの「君の婚約者は愛というものを知らない。僕は知っている」だの言ってきます。
その迫り方は、相手の立場や感情を考えない、甚だ迷惑なものです。
主人公は最初激怒しているのですが、最後は押し切られるようにして惚れます。
はっきり言って不快でした。礼節を重んじないということは、これほど相手を苛立たせるのかと思いました。
女性の恋愛感情の機微を描いた映画なのだと思うのですが、こういった自己抑制が利いてない人間を見るのは怒りを覚えます。
人間は、自らを律することで、初めて人間になります。それができない者は人間ではありません。単なる動物です。
個人的には、主人公の婚約者の方に共感を持ちました。
高い教養を持っており、自分が何者なのかを規定して生きており、自分がやるべきこととやらないことを明確に決めています。
鼻持ちならない人間で、家庭人や恋人としては欠陥があり、精神的にも脆弱さを持っている人間ですが、不器用なほどに一貫性があり、好感を持ちました。
私としては、主人公の婚約者の方を応援しました。
あと、主人公の年が離れた従姉が非常に不快でした。
主人公のことを心配して様々なおせっかいをしようとする割には、「話さない」と約束した重要なことを他人にべらべらしゃべったりして迷惑を掛けます。
こういった人間には怒りを覚えます。
約束をしたからには守る義務があります。人と交わした重要な約束を、その舌の根が乾く前に破るような人間は社会の敵です。
映画全体に言えることですが、人としてなっていない登場人物が多く、こういった人々に囲まれて暮らすのは苦痛だなと思いました。
人として生活するからには、せめて礼節を重んじ、約束を守るべきです。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。最後まで書いています)
主人公はイギリスの名家の娘。彼女は年が離れた従姉とともにイタリアに旅行に行く。
その宿で出会った男性と二人切りになり、彼から「これは運命だ」といった告白を受ける。彼女はその男性を避けだすが、郊外にピクニックに行った際に唇を強引に奪われる。
旅は終わり、彼女はイギリスの実家に帰る。
そこで婚約の申し出を受け、一人の好事家と婚約する。結婚に向けて、二人の準備は進んでいく。
だが、近所の空き家に、イタリアで出会った男性の父親が引っ越してくる。男性は、週末ごとに家にやって来て、彼女の家にも出入りするようになる。
ある日男性は、再び彼女の唇を強引に奪い、彼女は激怒する。彼女は男性を家に出入り禁止にする。
だが、その頃から、徐々に彼女は変わりだす。
好事家との婚約を破棄して、ギリシア旅行を決める。それは、男性から逃れるためだった。
だが、年が離れた従姉のおせっかいのせいで、男性との中を取り持たれてしまう。そして、自分の中に男性に引かれている気持ちに気付き、彼との結婚を決める。
この映画は、アカデミー賞で八部門で候補となり、脚色賞、衣装賞、美術賞の3部門を受賞したそうです。
□Wikipedia - 眺めのいい部屋
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C... なので、世間的には評価の高い作品なのだと思います。
しかし私には非常に不快な映画でした。
自己コントロールのできない人々のカオスな行動の結果、人間の精神が変質させられるという不快な現象を見せられるものでした。
人間らしいと言えばそれまでかもしれませんが、無秩序ほどたちの悪いものはありません。
こういった人間にはなりたくないなと思いました。