映画「ミッション」のDVDを九月下旬に見ました。
1986年のイギリス映画で、監督はローランド・ジョフェ。脚本はロバート・ボルト。主演はロバート・デ・ニーロで、共演はジェレミー・アイアンズです。
脚本のロバート・ボルトは、「アラビアのロレンス」や「ドクトル・ジバゴ」の脚色です。
音楽は、エンニオ・モリコーネです。なぜ、普段触れないのに音楽の人について書いたかというと、「ニュー・シネマ・パラダイス」でやたら記憶に残っていたからです。
調べてみたら、膨大に映画音楽を作っていました。大ベテランですね。
さて、映画の題名「ミッション」ですが、伝道団という意味です。
というわけで、主役はイエズス会士たちです。
彼らが南米を舞台に伝道を行い、そこに横槍を入れて来たポルトガルやスペインと対立するというお話です。
本作品は「実話を元にした話」と映画の冒頭に出ていましたので、ちょっと背景について調べてみました。
イエズス会については、Wikipediaにまとまっていました。
□Wikipedia - イエズス会
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82... ちょうど、このWikipediaに書いてある「弾圧と復興」の頃の話です。
ヨーロッパ諸国がナショナリズムを強め、王権のもとに国をまとめていこうとしたとき、国境を越えて自由に活躍し、教皇への忠誠を誓うイエズス会の存在が目障りなものとなっていた。 上記記事では、イエズス会への弾圧は18世紀になると急速に進んだと書いてありました。映画の話は、1750年〜58年に当たります。
なので、そういった政治的背景の会話シーンが何度もありました。
映画の感想に戻ります。
映画を見始めた時に、「イエズス会士たちか! きっとマッチョな展開になるに違いない!」と思っていました。
そうしたら、序盤そういう話ではなく、「違ったか」と思ったら、終盤は七人の侍みたいな展開になって、「やっぱりイエズス会士は私の中ではこんなイメージ!」と思いました。
えー、そうなのか?
まあ、やたら冒険的なイメージがあるので、そんなイメージがあるのでしょう。
Wikipediaの説明を見たら、そういうイメージでもないような気もしてきました。まあ、インプットが偏っていますから。
さて、本作品は、主人公の背景設定が絶妙でした。
主人公のことを書くとほとんど粗筋になるので、ここで粗筋的な内容を書いてしまいます(以下、ネタバレあり。終盤直前まで書いています)。
まず、主人公は奴隷商人です。現地人を見たら鉄砲で売って捕まえて売るような人間です。そして彼は、その辺りでは知らない者のいない武闘派奴隷商人集団の親玉です。
しかし、彼は、弟に恋人を奪われ、怒りに駆られて弟を殺します。その贖罪のために神父と行動をともにして、その後イエズス会に入会します。
そして時が経ち、現地の人々を平和に導き、理想的な世界を作ろうと頑張っているところに、政治的な問題が発生します。
イエズス会たちが平和裏に運営している農場の方が、奴隷制を布いて運営している列強の農場よりも収益を上げ始めるのです。
それにいらついた列強が、イエズス会を追いこもうとします。表向きは正当な理由を掲げてです。
しかし、主人公は元奴隷商人の親玉です。裏の裏まで内情を知り尽くしています。
そして、話が決裂した後は武闘派指揮官として現地人を率いて戦います。
「話、盛り上がるな〜」と思いました。
でもまあ、どちらにしろ、巻き込まれた現地の人にはいい迷惑なんですが。
映画が上手いなと思ったのは、キリスト教的な話でまとめていなかったことです。
作品は、人間社会の理不尽さを中心に描いていました。おかげで非キリスト教圏の人でも、それほど違和感なく見ることができるようになっていました。
主人公たち「イエズス会士」が立つのは、宗教的理由からではなく、あくまで義侠心です。
「君がやろうとしていることは、神の、そして教会の教えに背くことになる」
「そんな神や教会などいらぬ。破門してくれ!」
そんな感じです。
人間誰しも、自分がよかれと思って築き上げたものを理不尽に破壊されれば怒ります。そして、友情を温め続けた友人を粗略に扱われればぶち切れます。
そういった、多くの人の琴線に触れるところを中心にして、上手く話を展開させていました。
以下、映画の直接の内容から離れます。
映画を見ていて、当時の知識がなかったので分からなかったことがあります。
現地の人たちは、本当にあんな格好をしていたのかということです。
出て来る現地の女性は、大人も子供もその間の人たちも、みんなおっぱい丸だしでした。
当時はどうだったのかなと、気になりながら映画を見ていました。
もう一点、「映画であまり見たことがないな」と思ったものがあります。
木製の大砲です。
火薬を奪った主人公たちが、木で作った「一発だけ撃てる大砲」で敵を攻撃するシーンがあります。
あまり威力はなさそうな気もするのですが、戦術的に本当に役立つのか、知識がないのでよく分かりませんでした。
驚かせる以上の効果はなさそうな気がします。
そのうちどこかで、同じような物を見るかもしれないので、記憶しておこうと思いました。
最後に一点、この映画で初めて知った言葉があったのでメモしておきます。
台下です。
「だいか」と読みます。意味は、以下の通り。
1 高殿の下。楼下。
2 身分の高い人を敬っていう語。閣下。
3 手紙の脇付(わきづけ)の一。相手に対する敬意を表す。
閣下とか陛下とか猊下とか同じ系列の言葉です。
不覚にも知らず、映画の途中で辞書を引いて調べました。
まだまだ勉強が足りないなと思いました。