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2007年12月05日 17:13:00
危険な関係
 映画「危険な関係」のDVDを十五日前に見ました。

 1988年の映画で、監督はスティーブン・フリアーズ。脚色はクリストファー・ハンプトン。

 主演はグレン・クロースとジョン・マルコヴィッチ。

 何気に、キアヌ・リーヴスが若い音楽家で出ていたり、ユマ・サーマンが若い貴族の娘で出ていたり(スクリーン・デビュー?)しています。



 まず、最初に感想を書くと「素晴らしかった。ご馳走様です」といった感じの映画でした。

「危険な関係」というタイトルから、勝手に現代物の恋愛ドラマを想像していましたが、中身は全く違っていました。

 この映画は、十八世紀革命前夜の爛熟したフランス貴族社会に生きる、二人(男女)の恋愛権謀術数家によるドロドロした恋愛バトルです。



 主役の一人目は、メルトイユ侯爵夫人。

「危険な情事」で、サイコ的な女性を演じたグレン・クロースが演じる彼女は、既に夫を亡くしている未亡人です。そして彼女は、女性として逸脱するほどの野心と知性を持っています。

 そんな彼女は、宮廷を舞台に自在に振る舞い、その有り余る人心操作術を振るっています。

 彼女は、周囲を欺き、嘲笑いながら、自分自身だけでなく、周りの人々の恋愛もコントロールしていきます。



 もう一人の主役は、ヴァルモン子爵。

「マルコヴィッチの穴」の、ジョン・マルコヴィッチ演じる彼は、宮廷きってのドンファンです。

 彼にかかれば、どんな女も心と体を開き、彼に愛情を捧げてしまいます。

 そんな彼は、恋愛をゲームとして楽しんでおり、より落とし甲斐のある相手を落とすことで、自分の名声を高めることに血道を上げています。



 そんな、メルトイユ侯爵夫人とヴァルモン子爵は、かつて恋人だった時期があります。そして、今も「戦友」として、仲を保っています。

 二人は、付かず離れずの関係にありますが、互いの恋愛感情をまだ完全に捨て去ったわけではありません。

 そして、ヴァルモン子爵が、よりを戻したがるところから話は始まります。

 二人の関係は、周囲を巻き込みながら微妙にねじれていき、周りの人々の人間関係を次々と破壊していきます。

 この映画では、そういった二人の、冷血と、世間に対する冷笑と、非道っぷりに惚れ惚れとします。

 彼らは、人の命を奪うような戦い方はしませんが、人の心をずたずたに引き裂くような悪辣ぶりを発揮します。

 そういった悪行を、ふてぶてしいまでの笑顔で遂行していく二人に鳥肌が立ちます。

 言うならば、両肘にナイフをくくりつけて、舞踏会で、二人でくるくると踊っているようなものです。

 にこやかに踊っている二人の周りでは、人々が次々とナイフで傷つけられて血塗れになって倒れていきます。

 そして、周りをずたずたにしたあと、二人は最後には正面きって戦い始めます。



 いやもう、何と言うか、ジョジョの第一部とかが好きな人ははまりまくりのはずです。簡単に言うと、「男ディオV.S.女ディオ」という感じです。

 映画を見終わった後の感想は「いやー、いいもの見たな」でした。

 映画が始まって十分ぐらいから、ぞくぞくしっぱなしでしたが。

 最近見た映画の中でも、出色の出来の映画でした。



 以下、粗筋です。(ネタバレあり。終盤の最初ぐらいまで書いています)

 女性たちに頼られる未亡人メルトイユ侯爵夫人。

 ドンファンとして名を馳せているヴァルモン子爵。

 この二人の取り合わせは、世間では少し意外に思われていた。

 しかし、二人は、宮廷きっての恋愛権謀術数家として、戦友であり、ライバルであり、かつての恋人同士であった。

 ヴァルモン子爵は、そんなメルトイユ侯爵夫人に、似た者同士という以上の感情を持っており、よりを戻したがっていた。

 メルトイユ侯爵夫人は、まんざらでもないと思いながらも、プライドからその恋愛の価値を吊り上げようとしていた。

 メルトイユ侯爵夫人は、自分の欲望を満たすために、ヴァルモン子爵に条件を出す。

 一つは、彼女の顔に泥を塗った男に嫁ぐことになっている女性(メルトイユ侯爵夫人の友人の娘)に、娼婦のような技を仕込むこと。

 彼女の顔に泥を塗った男は、貞淑な女性が好きで、わざわざ修道院にいた娘を妻に迎えようとしていた。

 その彼に向けて、淫乱に開発した娘を娶らせるのが、彼女の考えるささやかな復讐であった。

 また、もう一つの条件とは、ヴァルモン子爵が狙っている貞淑な夫人を完璧に落とすこと。

 ヴァルモン子爵は、最初の条件は「簡単過ぎる。私の名声に傷が付く」と言って断る。だが、二番目の条件は快諾する。

 そして、彼は恋愛の駆け引きを始める。だが、相手のガードは非常に固く、なかなか落とせない。

 彼は、その女性の女中を引きずり込み、手紙を全部盗み読むなど、ありとあらゆる手を使い、情報を集め、女性の心の隙を探っていく。

 その、珍しくゆっくりとした攻勢をメルトイユ侯爵夫人は、「年老いて、腕が鈍ったのでは?」と嘲笑う。

 そのことに腹を立てたヴァルモン子爵は、最初の条件も飲むことにする。

 その娘には、メルトイユ侯爵夫人がお膳立てをして恋愛関係を育てていた音楽家がいた。

 ヴァルモン子爵は、その間に軽々と入り込み、娘の処女を奪い、開発を始める。

 それからしばらく経った。

 ヴァルモン子爵は、二つの条件を見事果たして、メルトイユ侯爵夫人の前に現れる。

 貞淑な夫人は、いまやヴァルモン子爵に会うと同時に体を求める淫らな女性に変貌していた。

 生娘だった少女は、多彩な性技を仕込まれ、さらにヴァルモン子爵の種まで仕込まれていた。

 メルトイユ侯爵夫人は、この成果を喜ぶ。その彼女に、ヴァルモン子爵は約束を果たすようにと迫る。

 そこに、メルトイユ侯爵夫人はもう一つの条件を出す。貞淑な夫人を冷たく捨てることだ。

 ヴァルモン子爵は、貞淑な夫人に惚れていた。そのことがメルトイユ侯爵夫人には許せなかった。

 ヴァルモン子爵は、貞淑な夫人を冷たく捨てる。そのことで、彼は後悔にさいなまれる。ヴァルモン子爵は、夫人を捨てたことをメルトイユ侯爵夫人に告げる。

 だが、メルトイユ侯爵夫人は、「約束は果たすが、それは一日だけの関係で、復縁はしない」と言う。

 ヴァルモン子爵は怒り、復縁か戦争かどちらかを選べと迫る。

 そのヴァルモン子爵に向かい、メルトイユ侯爵夫人はにこやかに「War」と告げる。

 二人は互いのカードを出し合って、血みどろの抗争を始める……。



 とにかく、二人の主人公の黒さがゾクゾクする映画でした。

 そして、二人の役者の存在感が素晴らしかったです。

 いやあ、よかった。

 宮廷劇なのに、陰謀に政治的要素は一切なく、恋愛の陰謀だけで終始しているのもよかったです。

 凄いなあと思いますが、私には、こういうことは一切できないなとも思いました。



 どうでもいいですが、この映画を見ていると、マルコヴィッチの穴に入りたくなるのも頷けます。

 映画「マルコヴィッチの穴」は、このヴァルモン子爵を演じているジョン・マルコヴィッチの中に入るという内容です。

「そういった気持ちにもなるよな」と思いました。

 あと、ジョン・マルコヴィッチは、鹿賀丈史によく似ているなと思いました。

 そのせいで、「料理の鉄人」を思い出しました。



 最初に書きましたが、この映画には、キアヌ・リーヴスとユマ・サーマンが出ています。

 でも、DVDのおまけのキャストを見るまで気付きませんでした。

 フランス宮廷物の映画は、ある意味コスプレ映画なので気付かないのも分かりますが、なんだか悔しかったです。

 負けた気がしました。
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