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2007年12月15日 17:17:16
エルム街の悪夢
 映画「エルム街の悪夢」のDVDを十月下旬に見ました。

 1984年の映画で、監督・脚本はウェス・クレイヴン。

 この人は、後に「スクリーム」を撮っていますね。こちらは未見なのですが、「エルム街の悪夢」がよかったので、この映画も見てみようと思います。



 さて、「『エルム街の悪夢』を今見ているのはどうなのか?」という、今更感はかなりあるのですが、こういった映画は、話題だけで見た気になり、実際は見ていなかったりするものです。

「『フレディVSジェイソン』を見ているくせに、こっちがまだというのはいかがな物か?」という話もあるのですが、「フレディVSジェイソン」が思ったよりも出来がよかったので、元の作品を見てみようと思いました。

「エルム街の悪夢」は、思った以上によくできていてびっくりしました。

 DVDの解説を読んだのですが、この頃のホラーブームの中では割と後発だったようですね。

 ちなみに、「13日の金曜日」は1980年で、四年前になります。



 さて、予備知識ほとんどなしで見たのですが、他の映画とは違う、ちょっと変わった展開が興味深かったです。

 映画には、二人の女性が出てきます。

 ティナ(アマンダ・ワイス)とナンシー(へザー・ランゲンカンプ)です。

 映画の序盤は、ティナが主役のように見えます。そして最初の展開は、このティナが追い詰められて、フレディに殺される話です。

 しかし、これはプロローグに過ぎず、彼女が殺されたところから本編とでも言うべき話が始まります。

 この、本編(フレディとの戦いと謎解き)の主人公が、ナンシーになります。



 このナンシーなのですが、映画の冒頭では存在感が極めて薄いです。

 ティナ役のアマンダ・ワイスは、かなり美少女で、可愛い女の子です。そして、ナンシー役のへザー・ランゲンカンプは、彼女に比べると二レベルほど外見的質が落ちます。

 なので、序盤で主人公が交代した直後は、「えー、彼女が主人公なの?」と思います。

 しかし、映画が進んでいくに従い、どんどんナンシーが魅力的になっていきます。

 見慣れてくるせいか、彼女の演技のせいか、女優が映画の撮影に慣れてくるせいなのか分かりませんが、だんだん主人公としての存在感を増していき、最後には「よい女」に見えてきます。

 これはなかなか面白い現象でした。



 この映画には二つの魅力があります。

 一つは、「眠ると襲われる」という、「誰しも抗えないこと」に恐怖を持ってきている部分です。

 これは「私にも起こるかも」という、誰もが共感できる恐怖の発動条件で、脚本や映画の枠組み的な面白さになります。

 それとともにもう一つ、前述の「主人公のナンシーが、危険にさらされる内に徐々に魅力的になっていく」という、俳優面の面白さがあります。

 この二つが、いい具合にシンクロしているので、没入感が増し、映画の価値を押し上げているなと思いました。

 そういった二つの要素が上手く絡み合い、「フレディが出てきて怖がらせる映画」ではなく、「フレディが出てくるまでがドキドキする映画」になっていました。



 さて、ホラー映画といえば、魅力的な脇役です。

 別名、やられ役。死亡フラグが立った人たち。

 しかし、本作は、思ったほど人は死にません。

 その代わりと言っては何ですが、「主人公は理解されない」という部分に焦点が当てられているように思いました。



 主人公はフレディの存在を知り、その対策を必死にしているのに、周りの人たちは信じてくれなくて、片手間でしか助けてくれない。

 そのせいで、周囲の人間がみなへたれに見えます。

 その中でも、一番のへたれ役は、グレン(ジョニー・デップ)です(たぶん、ジョニー・デップのスクリーン・デビュー作)。

 ナンシーの彼氏で、隣人なのですが、こいつが本当にへたれです。

「寝ないで、私を見ていてね」とナンシーが頼むと、豪快に寝ているし、「○○時に電話をちょうだいね」とナンシーが言うと、その時間には寝こけているし。

 ともかく、役に立たないことこの上ないです。

 何と言うか、ナンシーが立てた計画を、一人で台無しにしています。危機の三〜四割はこいつのせいです。

 こいつが恋人でなければ、もう少し楽に、ナンシーはフレディと戦っています。

 隣人というだけで恋人を選ぶと、危機の時に大変だなと思いました。



 以下、粗筋です。(ネタバレあり。終盤の最初まで書いています。まあ、有名な映画なので、よいでしょう)

 高校生の何人かが、悪夢を見る。その夢は、「焼けただれた顔をして、ナイフの爪を手に持った、縞模様の服を着た男」に襲われるというものだった。

 高校生たちは、その相手がフレディだと知っている。なぜならば、その町では、縄跳びの時の歌に、その男の名前が出てくるからだ。

 そんな高校生の一人であるティナは、悪夢が現実になるという恐怖を感じ、恋人と、友人のカップルを家に呼んで、母親が留守の日を過ごす。

 しかし、その対策は効かず、彼女は殺され、恋人は殺人犯として警察に捕まってしまう。

 ティナの友人で、その日、家に一緒にいたナンシーは、ティナの恋人の無実を訴える。しかし、ティナの恋人は普段から素行が悪く、警察たちは耳を貸さなかった。

 ナンシーもフレディの夢は見ていたが、それが現実になるという予感は持っていなかった。しかし、その事件の後から、ナンシーも夢が現実になるのではという恐れを感じ始める。

 そして、夢に現れるフレディの攻撃で、ティナの恋人は殺される。

 次は自分だ。そう怯えるティナは、恋人のグレンに協力してもらい、フレディを倒そうとする。

 だが、グレンは役に立たず、彼女は追い詰められる。彼女は、フレディの帽子を現実世界に持ち帰っただけで、決着を付けることはできなかった。

 彼女は、親の勧めで精神病院に通い始める。

 ナンシーは親にフレディの夢の話をする。両親はその話を激しく否定する。しかし、母親がぽつぽつと語り始める。

 彼女ら親の世代は、フレディを知っていた。変質者で殺人狂だった彼を、町の大人たちは、かつて追い詰め、焼き殺していた。

 その、先代の惨劇は、縄跳びの歌として、町の住人たちの間に残っていた。

 ナンシーは、フレディの正体を知る。彼女は、フレディを夢から引きずり出し、現実世界で決着を着けようと計画を立てる……。



 粗筋を書いていて思いましたが、脚本もしっかりしていてよくできていると思います。伏線が無理なく話に絡んでいますし。

 世間的な印象としては「フレディ」の映画ですが、私は主人公の「ナンシー」の方に魅力を感じました。

 どちらにしろ、よくできた映画だと思いました。
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