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2007年12月24日 11:39:33
非情の罠
 映画「非情の罠」のDVDを十月上旬に見ました。

 1955年の白黒映画で、原題は「Killer's Kiss」。スタンリー・キューブリックの監督デビュー作です。

 67分の短編映画なのですが、日本公開時は27分削られていたそうです。

「えっ、67分の27分削ったら別物じゃ?」と思いました。

 どうせなら、DVDに、削ったバージョンも収録してくれればよかったのにと思いました。

 どこを削ったのでしょうか? 冒頭の二人が出会うまでのシーンがなかったのでしょうか?

 後半のアクションシーンを削ると「売り」が減りそうなので、そうなのではないかと思うのですが謎でした。



 ストーリーは単純なので、先に粗筋を書いてから感想を書きます。



 以下、粗筋です。(ネタバレあり。中盤まで書いています。中盤以降は、ほぼ全部アクションシーンです)

 主人公はボクサー。試合に負けた彼は、引退して田舎に引っ込むことを考えていた。

 そういった時期に、彼は一人の女性と出会う。

 彼女は同じアパートの住人。ダンスホールで男たちのダンスの相手を務める彼女は、その職場の支配人に言い寄られていた。

 主人公と女性は恋に落ち、彼は彼女とともに田舎に戻ろうとする。

 しかし、恋に狂った支配人は、主人公に手下を差し向ける。

 支配人の手下たちは、手違いから主人公のマネージャーを殺す。そして、女性は支配人に拉致される。

 主人公は支配人の許に行き、銃を突き付けて、女性の監禁されている廃アパートに行く。

 だが、手下と支配人の逆襲に会い、死闘を繰り広げることになった……。



 序盤、映画を見始めて思ったのは、映像とモノローグの使い方が独特だなということです。

 この映画では、美しい映像を見せて視覚的な間を持たせて、その間にモノローグを延々と語る演出が多いです。

 そしてその映像は、時に物語に関係あるけれど、時に物語とは直接関係なかったりします。

 かなり、独特な映像文法です。どちらかというと、詞的表現に近いようなものがあります。

 特に、バレリーナが延々と踊るシーンを見せる間に、女性が過去を告白し続けるシーンは非常に印象的です。

 映像を「物語の説明」に使うのではなく、「映像自体の印象」を利用して映画表現を行っているのかなと思いました。

 後のキューブリックの映画でも、そういった傾向が時々見られますので。



 中盤以降のアクション・シーンを見ていて思ったのは「戦闘する場所の選定は大切だな」ということです。

 この映画では、「場所選び」に物凄い気を使っていて、「その場所で起こる戦闘自体が映像的に面白い」ものになるようにしています。

 これは、よく考えられているなと思いました。

 たとえば、昇降式の階段を使っての逃走、アパートの屋上を延々と走っての追跡劇、マネキン工場での戦闘など、視覚的に面白い場所での戦いを連続して行っています。

 これらの映像から「物語のための設定」ではなく「映像のための設定」というものを強く感じました。

 物語で「よいキャラができれば勝ったも同然」というのがあるように、映像は「よい場所を探せれば勝ったも同然」なんだなと思いました。

 そりゃあ、ロケハンとか気を使うはずです。



 ラストは、どうなるのかぎりぎりまで分かりませんでしたが、私が考えていたラストとは違っていました。

 もっとぼかすかと思っていたのですが、はっきりと描いていました。



 短い作品でしたが、十分楽しめました。

 まだまだキューブリックの作品は店頭にあるので、借りてこようと思います。
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