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2008年01月09日 20:07:21
キスキス バンバン -L.A.的殺人事件
 映画「キスキス、バンバン−L.A.的殺人」のDVDを、十一月下旬に見ました。

 2005年の作品で、監督・脚本はシェーン・ブラック。出演は、ロバート・ダウニー・Jr、ヴァル・キルマー、ミシェル・モナハン。

 サスペンスやミステリーと見せ掛けておいて、そういった要素を下敷きとした軽快なコメディーでした。

 とはいっても、単純なお笑いには走らず、シチュエーションと、キャラの行動にシニカルに笑える都会的な映画に仕上げています。

 面白かったです。

 あと、色々な意味でエロくてよかったです。



 さて、基本的には面白い映画だったのですが、一点だけ拒絶感を覚えるネタがありました。

 それは、指チョンパです。

 ドアで指を挟んで、指が落ちるシーンがあるのですが、その後、長々とそのことをネタにし続けます。

 手術でくっつけて、それがまた落ちて、拾って、持って行かれて、云々……。

 えー、見ていて「痛い」のですが。

 なんというか、「痛そう」過ぎて笑えない。

 それ以外は、ギャグのセンスも乗りもかなり好みだったのですが、これがあるせいで、二重丸が出せないです。

 ネタのセンスってのは、人それぞれだなと思いました。

 私は、痛い系のネタは駄目です。



 以下、粗筋です。

 主人公はニューヨークの冴えない泥棒。

 彼は息子へのクリスマス・プレゼントのために、おもちゃ屋に泥棒に入る。

 しかし、不手際から逃げ出す羽目になり、急遽飛び込んだ先が、映画のオーディションだった。

 先ほどまで警察に追われて、仲間を殺されていた主人公は、審査員たちの前で、怒涛の演技をする。

 それは本当は演技でも何でもなかったのだが、「素晴らしいメソッド演技だ!」と絶賛され、ロサンゼルスに連れて行かれることになる。

 主人公はそこで映画関係者たちのパーティーに出席する。そして、そこで出会った女性に心引かれる。なぜならば、彼女は主人公の初恋の相手の面影があったからだ。

 主人公は、必死に彼女を口説こうとする。

 しばらくして主人公は相手が誰なのか気付く。面影があるのは当然だった。彼女は、主人公の初恋の相手本人だった。

 彼女は、美人だったが、男出入りが激しかった。しかし、唯一主人公とだけはセックスをしていなかった。

 彼女は、高校卒業後、故郷を出て女優を目指していたが、鳴かず飛ばずで現在に至っていた。

 主人公は、今こそ彼女と仲良くなる時だと考える。しかし、お酒に酔い潰れる。そして気付くと、彼女の友人とベッドインしており、彼女の不興を買う。

 意気消沈する主人公。そんな彼は、俳優修行として、ゲイの探偵のお供をさせられる。

 主人公は、彼女のことが気になりながら探偵の仕事を手伝う。そこで主人公たちは、殺人事件に遭遇する。

 その殺人事件は、主人公が抜擢された映画の関係者が絡むものだった。そして、愛しの相手の妹もその事件に巻き込まれてしまう。

 この事件を解決すれば、彼女に認められる!

 主人公はそう考える。

 主人公は、本当は泥棒なのだが、ゲイの探偵に協力してもらい、彼女のために、その殺人事件を解決しようと奔走する。



 まるでギャグとしか思えないほど主人公に降りかかる不幸とドツボの雨霰(いや、ギャグなのですが)。

 そして、主人公が必死に追い縋ろうとするのに、天然で貞操観念のない彼女のあっけらかんとしたスルーっぷり。

 それらの二人の手綱を取るのは、唯一手堅くてまじめで有能なゲイの探偵。

 この三人が、協力したり、反目したりしながら、事件を追い、追われていく様は、小気味よくて非常に楽しいです。



 また、映画の表現手法としても、下品になるすれすれの、脱映画的見せ方が上手く働いています。

 普通なら、映画の途中で、フィルムを止めたり、切り替えたり、巻き戻したりしたら、野暮ったくなるのですが、この映画はそれをスタイリッシュに決めています。

 センスのいい映画だなと思いました。

 十年後に見ても同じように感じるかどうかは分かりませんが、少なくとも今の時代に見る分には、そう感じます。



 あとはまあ、主人公の思い人のヒロインの天然の貞操観念なさっぷりがよかったです。

 下品になりそうな設定なのですが、キャラ自体があっけらかんとしていて、さばさばしているので、不思議とそういったことは感じず、好感の持てるキャラになっています。

 これは、上手く造形しているなと感じました。

 また、それを追い掛ける主人公が、高校の間童貞で、彼女の相談役だったけど、全く手を出せずに、彼女が次々と男に抱かれるのを、指をくわえて眺めていただけというへたれっぷりが、またいい味を出しています。

 それで、その二人の駄目な主人公に頼られるのが、女に興味がなく、へたれ過ぎる主人公にも興味がない、やり手のゲイの探偵です。

 彼が、「くそっ、鬱陶しいな」と思いながら、二人に協力しているのは、見ていて楽しいです。

「しかしまあ、なんで、この探偵はこんなに頑張ってくれるんだ?」という謎は、最後にきれいに明かされます。

 この最後の種明かしもよくできていました。



 見る前は、「はずれ臭い映画だな」と思っていましたが、始まるとすぐにその不安は消えました。

「このテンポのよさとセンスなら、最後まで楽しめそう」と、最初の五分で感じさせてくれました。

 映画的時間軸を無視した演出が時々入るので、それが駄目な人は駄目かもしれません。

 しかし、映画を見慣れた人は、「映画の枠組み」自体をギャグにした演出も含めて楽しめると思います。

 小説で言う、メタ小説的な演出が随所にありますので。



 そんなわけで、私には楽しい映画でした。
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