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2008年01月08日 20:26:27
招かれざる客
 映画「招かれざる客」のDVDを十一月下旬に見ました。

 1967年の作品で、監督はスタンリー・クレイマー。脚本はウィリアム・ローズ。

 まだ黒人と白人の結婚が非常に珍しい時代に、黒人男性と白人女性が結婚をするために、女性の実家を訪れる話です。

 非常によくできていました。

 以下、先に状況設定が分かる粗筋を書きます。特にネタバレになるような映画でもありませんので。



 以下、粗筋です。(終盤の直前まで書いています)

 白人女性が一人の男性を連れて空港に降り立つ。彼女はその男性と結婚することを決め、自分の両親に報告するためにやってきた。

 彼女は二十代前半。彼女の父親は、人権擁護派でリベラルな新聞の社主。母親は美術品販売会社のオーナー。

 その二人に、彼女は差別と偏見のないように育てられた。

 彼女が連れてきた男性は、事故で妻子をなくした経験のある三十代の医師。

 彼は世界的に有名な医師で、貧困と病気の撲滅のために、世界を股にかけて活躍している。将来はアフリカに医学学校を作り、人々を救おうと考えている。

 彼は清廉潔白で、強い意志を持ち、他人に対して優しい人物だ。

 どこからどう見ても完璧な結婚相手。

 その婚約者を見て、娘の母親は絶句する。なぜならば、その相手が黒人だったからだ。

 この婚約者が、とても素晴らしい人物だというのは母親にもよく分かった。だが、頭では分かっていても、これまでの人生で染み付いた習慣や感情のせいで、すぐには賛成できなかった。

 娘は、明日には発ち、ジュネーブでの彼の学会発表の後に結婚式を挙げるという。

 父親も家に帰ってくる。父親は驚き、困惑する。

 彼は娘を差別と偏見のないように育ててきた。しかし、実際、黒人男性を婚約者として連れてきたのを見て、強く反発する。

 そんな夫の姿を見ながら、母親は娘の決断を受け入れ、徐々に婚約者に肯定的感情を抱き始める。

 家には、父親の友人の司教もやってくる。

 既に市井では、黒人と白人のカップルが誕生し始めている。その姿を見ている司教は、二人の決断を喜んで祝福する。

 父親は孤立無援となる。そこに、娘が招いた、黒人男性の両親もやってくる。

 男性の母親は二人のことを受け入れるが、父親は反発する。

 そんな状況の中、全員で食卓を囲むディナーの時間が近づいてきた……。



 物凄い分かりやすい状況設定の映画です。

 葛藤も分かりやすいです。

 頭では正しいことだと分かっていながら、受け入れることができない人たち。そして、受け入れられない可能性を考えて、揺れ動く黒人男性。

 展開として上手いのは、映画が進むに連れて、一人、一人、新たな人が舞台(娘の実家)に登場して、まずは驚き、その後、その人それぞれの反応を見せていくことです。

 ある人は困惑し、ある人は反発する。また、ある人は全面的な肯定を見せ、他の人は露骨に差別感情を見せる。

 そういった人たちが登場するごとに、話にアクセントが添えられ、娘の両親の決断までの揺れ動きが上手く表現されていました。

 非常によくできた映画でした。



 映画は、主人公の配役もよかったです。

 婚約者の黒人男性役のシドニー・ポワチエが、まず非常によかったです。

 どう見ても、知的で素晴らしい人物にしか見えません。こういった、見た瞬間にその中身が想像できる容姿というのは強いなあと思います。

 二つ前に見た、「夜の大捜査線」でも思いましたが、いい外見をしています。

 そして、娘役の「キャサリン・ホートン」もよかったです。

 全く屈託のない太陽のような笑顔を周囲に振りまくキャラが上手く表現されていました。

 また、父親役のスペンサー・トレイシー、母親役のキャサリン・ヘップバーンも合っていました。特に、スペンサー・トレイシーは素晴らしかったです。

 ぶつぶつ愚痴を言い続ける父親役が物凄く似合っていました。



 この映画を見た時、私の母親がちょうど上京していて、一緒に見たのですが、「私が結婚した時も、父親はこんな感じだった」と言っていました。

 父親はだいたい、結婚式当日までぶつぶつ文句を言って、母親はちゃっちゃっと準備を進めていくそうです。

 古今東西、娘を持った父親の行動パターンというのは同じようです。



 そういったわけで、白人黒人間の結婚という、この時期タイムリーな話題を扱っているというのもありますが、娘を嫁に出す父親のドラマという側面も持っており、普遍性のある物語になっていました。

 こういったように、その時期にキャッチーな内容(ここでは、黒人と白人の結婚)を入れるとともに、どの時代に見てもみんなが頷ける内容に作り込むこと(ここでは、娘を送り出す父の苦悩を入れること)は大切だなと思いました。



 あと、何気に、娘の実家の黒人家政婦の役割が上手かったです。

 家の中で、唯一強行に反対するのは彼女です。

「黒人なんかに、大切なお嬢様を渡せない」と怒りまくります。

 差別というものは、一旦形作られると、差別される側にも、その状況を維持しようとする力が働くという側面を上手く表現しているなと思いました。

 そして、それと対比させるように、その黒人家政婦の娘が、お洒落をして、白人男性と遊びに繰り出すシーンも描かれます。

 細かなところですが、よく作り込んでいるなと感じました。
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