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2008年01月19日 10:28:58
冬のライオン
 映画「冬のライオン」のDVDを十二月中旬に見ました。

 1968年のアメリカ映画で、ジェームズ・ゴールドマンの舞台劇の映画化(映画版の脚本もジェームズ・ゴールドマン)。監督はアンソニー・ハーヴェイ。

 主役のヘンリー2世は、「アラビアのロレンス」(1962年)のピーター・オトゥール。

(ひげ面で荒くれタイプで「アラビアのロレンス」の主役とは正反対の役柄だったので、スタッフロールまで気付きませんでした)

 また、ヘンリー2世と仲の悪い妻役でキャサリン・ヘップバーン。ヘンリー2世の三人の息子の中で最も年長の男としてアンソニー・ホプキンスが出ています。

(アンソニー・ホプキンスだったことは、後で調べて気付きました)

 以下、ちょっとだけ補足です。

「三人の息子の中で最も年長の男」などという回りくどい書き方をしているのは、本来は四人兄弟で、長兄が死んでいるからです。



 映画を見た感想は、「これって戯曲?」でした。

 後で調べてみたら、舞台劇の映画化だと分かったので、遠からずという感じでした。

 映画の内容としては、相続に関する家族の紛争物です。

 普通のこの手の話だと、「誰に継がせるか」が問題になるのですが、この映画では一筋縄では行きません。

 この国王(イギリスと一部のフランスを領土に持つ)は、フランス国王の姉(二十歳ぐらい)を外交の一環として預かっています。

 そして、次の王位継承者と結婚させる約束をしています。

 でも、この姉ちゃんを愛人にしてしまっています。そして、手放したくないと思っています。

 なので、本心では「三人の息子の、誰にも継がせたくない」わけです。

 なんというか凄いです。息子の妻になる女性を手篭めにして「お前らにはやらん!」と言い張っているわけですから。



 いやまあ一応、三人の息子の中の末っ子を一番愛しているので継がせたいと思っているわけですが、「それでも、フランス国王の姉を自分の物にし続けたい」のです。

 若くて美しくて、自分の体に馴染んでいるから。

 ヘンリー2世はそのために、奥さんと離縁しようとしたり、やって来たフランス国王を煙に巻こうとしたり、ひっちゃかめっちゃかやらかします。

 そして、息子たちも野心満々で王位を奪おうとします。また奥さんも、夫を叩きのめして、昔の自分の領土を取り戻そうとしています。

 そのせいで、権謀術数というか、完全な泥試合状態に家族がなります。

「あー……」という感じです。

 そして、話は、一つの砦の中で、互いの部屋に行ったり、来たり、集まったりして、山荘物の推理小説のように、じわじわと進行していきます。

 凄い面白いわけではないですが、話の作りとしてはそれなりに楽しめました。



 さて、この映画を見て思ったのは、フランス国王の姉にして、ヘンリー2世の愛人の姉ちゃんがぐっと来るということです。

 どうぐっと来るかというのは、設定を書けばだいたい分かると思います。

・外交上の人質として、フランスの前王が、七歳の娘アレースをイギリス国王ヘンリー2世の元にやる。

・ヘンリー2世とその妻は、彼女を娘のように育てる。

・ヘンリー2世は、娘が育ってくると、その美しさと可憐さに惚れ、彼女を愛人にする。アレースも、ヘンリー2世が大好き。

・アレースは、育ての母から夫を奪う役回りとなる。アレースは、心優しき女性なのでそのことに悩む。



 この映画を見ていて思ったのは、「どこの光源氏ですか」ということです。

 美しく可憐な女性を少女から育て、自分を溺愛させるようにしていく。

 洋の東西問わず、人間はこういう話が好きだよなと思いました。まあ、私もぐっと来るのですが。

 そして、このアレースは、胸が非常によかったです。

 中世ヨーロッパの、胸を強調した服は、やはりぐっと来ます。

 個人的には、この手の服で、初めて「凄いな」と思ったのは「アマデウス」を見た時です。

 胸は、男性を操る精神兵器だなと思いました。



 さて、以下粗筋です。(ネタバレあり。終盤の最初の方まで書いています)

 ヘンリー2世は老齢に差し掛かり、自分の国の後継者を決めなければならない時期に来た。

 彼は、これまで多くの戦いをこなし、内政にも尽力してきたが、その家庭は決してうまくいっていなかった。

 その理由の大きな部分を占めているのは、彼の性の奔放さにあった。

 農婦や尼僧、少年まで、ありとあらゆる相手と契りを交わしてきた彼に、妻がよい顔をするわけがなかった。

 過去に妻は何度も反乱を起こしており、ヘンリー2世は妻を塔に幽閉していた。

 ある年のクリスマスが近づいてきた。

 ヘンリー2世は、幽閉している妻と、三人の息子を砦に呼び寄せる。彼は一人の若い女性を愛人として囲っていた。

 彼女は最近代替わりしたフランス国王の姉だった。その砦にはそのフランス国王もやって来る。

 フランスとの同盟の条件として、姉を後継者に嫁がせる年が間近に迫っていたからだ。

 ヘンリー2世は、自分が最も愛している末っ子に王位を継がせようと考えていた。しかし、末っ子以外の兄弟も妻も反対していた。

 そして何よりも問題となっていることがあった。ヘンリー2世は、自分の愛人を手放したくはなかった。また、王位は手放しても領地は手放したくはないと考えていた。

 元々こじれていた家族の関係は、ヘンリー2世のわがままで、さらにこじれだす。

 そして、三人の兄弟たちが、それぞれ王を倒そうとする陰謀へと発展していく。

 ヘンリー2世は強攻策として、妻と三人の息子を全て幽閉して抹殺しようと企む。愛人と新しい子を儲ければ、全ての問題が解決すると考えたからだ……。



 一点だけ納得いかないことがありました。

 息子が男色をしていたことを知り、ヘンリー2世がうろたえ、悲しみ、怒りの言葉を発するシーンがあります。

 えー、映画の冒頭に、ヘンリー2世も少年をやったという話が出てくるのですが。

 自分がするのはOKで、息子がするのはNGというのは納得がいかないなあと思いました。
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