映画「女王陛下の戦士」のDVDを、四月上旬に見ました。
1977年の作品で、製作国はオランダ。オランダ時代のポール・ヴァーホーヴェンが監督・脚本で、主演はルトガー・ハウアーです。
原作はエリック・ヘイゼルホフ。彼の自伝を元に、第二次大戦中のオランダの話を描いています。
ポール・ヴァーホーヴェンの作品は、以下の物を過去に見ています。
・インビジブル(2000)
・スターシップ・トゥルーパーズ(1997)
・氷の微笑(1992)
・トータル・リコール(1990)
・ロボコップ(1987)
どれも強く印象に残っている作品です。
映画を見始めて最初に印象に残ったのは、冒頭にある大学の新入生歓迎のシーンです。上級生が新入生をいびるシーンですが、かなりムカムカとしながら見ました。
その後、その上級生と主人公は親友のようになるのですが、私ならこういうことをされたら一生許さず、隙あらば背後から射殺するなと思いました。
まあ、それは極端だとしても、少なくとも同程度以上の復讐はすると思います。
何もせずにスルーすることは、相手の行動を正当化することになりますので。
若気の至りとはいえ、度を過ぎれば報復の対象になります。人間、他人に攻撃を加える場合は、倍以上の報復を受けることを覚悟しておかなくてはなりません。
次に印象に残ったのは、戦争が始まった後の町の描写です。日常空間である町の中に、驚くほど生々しく、肉片や人体のパーツが散乱していてびっくりしました。
普通の映画の戦場描写ではそれほどドキッとしないのですが、妙にリアルに感じました。
あれは何なんでしょう? ヴァーホーヴェン・マジックなのでしょうか。やたらぎょっとする場所に肉片が貼り付いていて、目を引きました。
その後、映画は、大学生の主人公がレジスタンスに身を投じて、やがてイギリスに行き、オランダ女王直属の命を受けて、オランダに再侵入するというように話が展開していきます。
序盤から中盤に掛けては、戦場を舞台にした青春物語風に、中盤から終盤に掛けては、スパイ物風(冒険活劇風?)になっていきました。
映画は面白かったです。
娯楽作品として面白かったですし、たぶん第二次大戦を自国の視点で記録するという意味でも価値があったのではないかと思います。
私が見たのは148分のバージョンだったようです。116分版とか、いくつかあるようです。当初はもっと長い尺だったと、DVD内の文字情報に書いてありました。
あと、もう一つ印象的だった部分があります。イギリス軍の女性秘書です。
最初はぴしっとした軍服で出てくるのですが、かなり尻軽です。そのあっけらかんっぷりがなかなか可愛かったです。
たぶん、軍服とプライベート(裸)のギャップも、その印象に手助けをしていると思います。
エロくてよかったです。
以下、粗筋です。(ネタバレというか、歴史的事実のようなので、特に気にせず書きます。中盤の最後の方まで書いています)
主人公はオランダの大学に入学する。その新入生歓迎の席で、上級生から手荒な歓迎を受け、頭を数針縫う怪我を負う。
上級生は詫び、その後彼らは親交を深める。
彼らが大学生活を送る中、第二次大戦が始まった。オランダは最初抵抗するが、あっさりと降伏する。それからオランダにはドイツ軍が入ってきた。そして、好き放題し始める。
オランダにはユダヤ人も多くいた。ドイツは本国と同じように彼らの迫害を始めた。
その魔の手は主人公のいる大学にも伸びてきた。大学には、教授や主人公の友人など多くのユダヤ人がいた。
大学生たちは、ドイツ軍に抵抗するためにレジスタンス活動を始める。
そして、国内の情報をイギリスに流すことで、ドイツへの攻撃を支援しようとする。その頃、イギリスには亡命しているオランダ女王がいた。
だが、そのレジスタンス活動で、次々と仲間の命が失われていった。
主人公は、今や親友となった上級生とともに、国内の情報を持ってイギリスに渡る。
そして空軍に入り、ドイツへの攻撃に参加する。
そんな彼に、女王から秘密の指令が下りた。本国に潜入する仕事だ。主人公は船に乗り込み、再び故郷の地を目指す……。
映画中、主人公の友人たちの運命がいろいろと描かれます。
その話の中で、ユダヤ人の恋人を持つ男性のエピソードが印象に残りました。彼は、恋人を救うために、悪事に手を染めていきます。
でも、そこに選択肢はほとんどありません。彼女を殺すか、自分が汚れる道を選ぶか。
映画では、そんな彼を「悪人」としては描いていません。あくまで、そういった立場の人物だったとして、淡々と描いています。
実際、隣人を裏切ろうと思わなくても、そういう立場に追い込まれていった人は多かっただろうなと思います。
戦争は、多くの人の人生を狂わせるなと思いました。