十二月分です。
● 2007年12月(4冊/計71冊)
■ 神は妄想である—宗教との決別(リチャード・ドーキンス)(
★★★★★)
「利己的な遺伝子」のリチャード・ドーキンスが、昨今のアメリカの宗教国家ぶりに憤慨して、「お前ら有神論者を完膚無きまでに叩きのめしてやる」と書いた本。
ありとあらゆる有神論者の言説を、徹底的に粉砕していきます。
そういう理由で書いた本なので、敵は「キリスト、イスラム、ユダヤ」の兄弟宗教です。名指しです。「こいつらがいなければ、世界はかなり平和だ」という感じです。
また、そのために「仏教はまあ今のところ無害なんでいいんじゃないの?」という姿勢です。
何よりも面白いのは、「敵に勝つには、敵を知らねばならぬ」と、神学や宗教の歴史についてやたら博覧強記なこと。
例えば、
「その言説の元ネタは○○年の△△の書いた文章で、さらにその元ネタは□□で、それは☆☆年に※※によって既に否定されている〜〜〜!!!!」
などといった感じで、凄い勢いで打ち消していきます。
当然、論理武装という意味でも「核兵器で武装していますが何が?」という勢いで、「神を信じる姿勢が、そもそも世界を邪悪に変えている」という姿勢で妥協を許しません。
なんというか「進化論ハンマー(ゴルディオン・ハンマ〜〜〜風に)」という感じで、「神」という存在を隙がないまでに論破していきます。
また、「無神論者のロール・モデルがいない? よし、俺がなってやろう」という風に、やる気に満ち溢れています。素晴らしい。
超戦闘的ドーキンスによる「神殺し」の書は、独特のドーキンス節とともに、非常に面白かったです。
なんというか、ここまで徹底的に実名で戦いを挑む“知の勇者”がいることに、世界も捨てたもんじゃないなと思いました。
そして、一つだけ書いておかなければならないことを書いておきます。ドーキンスが最も批判しているのは、知の扉を閉ざすこと。
神を否定するのが本当の目的ではなく、「疑わず信じること」を強要することで、世界に対して扉を閉ざし続ける人々の蒙を啓くのが目的。
そして、「疑わず信じること」を子供に押し付ける人々に、それがいかに残虐なことかを伝えようとしています。
ドーキンスは本の中で書いています。「宗教は幼児虐待である」と。この視点はなかったなと思いました。
あと、勘違いしている人が多いですが、ドーキンスはイギリス人です。
お薦めの書。
■ 定家百首・雪月花(抄)(塚本 邦雄)(★★★☆☆)
現代の歌人塚本邦雄が、平安最大の歌人藤原定家に戦いを挑む本。
「はっ?」と思うような煽りですが、内容そのままの本です。
定家の秀歌を百首選び、それに対しての批評を加え、どこが凄いのかを解説し、さらに対抗して自分の歌をぶつけるという本です。
これが面白い。
なぜ面白いかというと「くそー、定家め、いい歌作りやがって」と思っている“分かる”人が、自分がどう打ちのめされたのかを書いているから。
「なるほど、歌人は歌をこう見るのか」というのが分かり、「言われてみて納得。確かにそう言われると戦慄する」と、歌の見方を教えてくれます。
この本を読んで以降、定家関連の本を読んでいて和歌が出てくると、その内容がだいぶ分かるようになりました。
変わった本ですが、勉強になりました。
あと、定家の屈折ぶり、鬱屈ぶりは、非常に共感します。こういうねじれた人間は大好きです。
■ バガージマヌパナス—わが島のはなし(池上 永一)(★★★☆☆)
沖縄。
「カジマヤー」の前のデビュー作。
こちらも面白かったです。ただ、やはり出来としては「カジマヤー」の方が上です。まあ、当然でしょうが。
■ もっとできる男のたしなみ(松岡 宏行)(★★☆☆☆)
いただきもの。
イラストと短い文で、いろいろと男女の機微や仕事の機微をまとめた本。
くすりと笑える部分もあれば、そうそうと納得できる内容もある本でした。