映画「ラスト・キング・オブ・スコットランド」のDVDを五月下旬に見ました。
2006年の映画で、監督はケヴィン・マクドナルド。脚本はジェレミー・ブロックです。
どういう映画かと言うと、ウガンダの大統領、通称「人食い大統領アミン」の主治医(スコットランド出身の若者)が主人公の物語です。
というわけで、主役は若い医者なのですが、本命はアミンを演じるフォレスト・ウィッテカーです。
カリスマがあり、包容力があり、しかし追い込まれることで殺戮者に変貌していくアミンを怪演しています。
よかったです。
フォレスト・ウィッテカーは、「クライング・ゲーム」(1992)で、冒頭に出てくる“微笑みデブ”を熱演していたのが私の記憶では鮮烈です。
あの“微笑みデブ”が「人食い大統領アミンを熱演!」というだけで、ごはん三杯いけそうな感じです。
物語もよく出来ており、楽しめました。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。終盤の少し前ぐらいまで書いています)
スコットランド出身の若い医師は、自分探しのために国を飛び出した。
彼はウガンダに行き、貧しい村に派遣されて医師として仕事を始める。
そこには、先に来て仕事をしている医師夫婦がいた。主人公は、その医師の妻に好意を寄せながら日々の診療を続けていく。
そんな彼に転機が訪れた。軍の指導者で政権を取ったアミンが近くに来た時に、その治療をしたことで信頼を得たのだ。
アミンは彼を主治医として招きたいという。
彼と一緒にいた医師の妻は、やめた方がいいという。彼女は、アミンに倒された前政権のリーダーが、アミンと同じように台頭してきて、腐敗して抹殺されたのを見てきたからだ。
だが、若い主人公はそんなことは気にせずにアミンの誘いに乗る。
彼は主治医として信頼を得るだけでなく、次第にアミンの側近に取り立てられていく。
最初の内は大きな問題はなかった。しかし、アミンの経済政策の失敗とともに、自体は悪い方へと傾き始めた。
命を狙われ、周囲に警戒を始めたアミンは次第に独裁者へと変貌していく。
そして、些細なことで部下を殺し始める。そうやって殺された者の多くは、真に国を思い、行動している者たちだった。
主人公は、自分の些細な言葉で、そういった人を死へと導いてしまったことを後悔する。
アミンの周囲は次第に残忍な者たちで占められていく。
そして、主人公も命の危険にさらされ始める。彼は、アミンの妻の一人と密通していたのだ。
彼はある人物に泣きつく。その人物は、“スコットランド”出身の主人公が嫌っていたイギリスの外交官だった……。
アミンの変貌も凄いのですが、主人公のヘタレっぷりも凄いです。
何と言うか、凄い勢いで地雷源に突っ込んでいきます。
決して馬鹿な人物ではありません。医者としてはそれなりに優秀で、何よりも機転が利きます。そして、権力者の間でも萎縮しない度胸を持っています。
でも、その度胸のよさは、裏返せば鈍さでもあります。
そして、目の前のことには正しい解答を出せても、将来を予測して大局観を持って行動する知恵は持っていません。
なので、前半に年長者たちから受けるあらゆる警告をぶっちぎって、後半苦境に立ちます。
まあ、自業自得なのですが、映画としては、ピンチの積み立てと清算が待っているので、ドラマが組み立てやすいキャラだなと思いました。
でもまあ、この映画はアミンだと思います。
フォレスト・ウィッテカーのアミン大統領。
これが見られたので満足しました。
いやまあ、それだけでなく映画はよく出来ているのですが、フォレスト・ウィッテカーのインパクトの前には霞んでしまいます。
あと、この映画はタイトルの付け方が悪いと思います。
ストレートに「アミン大統領の主治医」とか、「アミン大統領の白い猿」(映画中、そんな感じで侮蔑的に呼ばれていた)の方がいいと思います。
覚えにくいタイトルですし、何より、何の映画かさっぱり分かりませんので。