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2008年10月29日 11:41:08
キングダム 見えざる敵
 映画「キングダム 見えざる敵」のDVDを九月下旬に見ました。

 2007年の映画で、監督はピーター・バーグ、脚本はマシュー・マイケル・カーナハンです。

 また、主演はジェイミー・フォックスです。彼は「Ray/レイ」(2004)で神懸かり的な演技をしていました。

 この映画は、911以降のテロ系映画に属する作品です。

 普通にアクション物としても面白かったです。また、メッセージ性の強いラストにもぐっときました。



 この映画がよくできていると思う点は、アメリカのFBIの捜査官と、事件が起きたサウジアラビアの捜査官が協力して事に当たることです。

 最初は、縄張り意識や政治的しがらみから打ち解けなかった二つのグループが、次第に互いを理解して仲間意識を築いていきます。

 この「理解による和解」自体が、この映画のテーマになっています。

 相手のことが分かることで、国や人種や宗教を超えた友情が生まれていく。そのことで、最初に持っていた価値観が変わっていく。

 アクション物の映画として面白いだけでなく、そういったテーマが上手く話に絡み、きれいに最後のシーンに繋がっていました。

 よくできた映画だなと思いました。



 さて、メッセージ性が強い映画は、ともすると難解になりやすいです。

 しかし、この映画では難解になるのを上手く避けています。それは、内容を欲張っていないことが原因だと思います。

 この映画では、FBI側の捜査官が複数出てきます。しかし、全体アクション以外の個別アクションでの活躍機会は原則的に一人一回となっています。

 そして、全体の話自体もかなり単純化されています。

 話は以下の順番で進みます。

・テロ事件発生。サウジアラビアにいたFBI捜査官が爆殺される。

・激しい怒りとともにFBI捜査官数人が現地入り。

・現地の警察との対立。

・協力の意思を継続的に示すことで共感を得る。

・合同捜査。

・追跡と救出と銃撃戦の同時進行。

・苦い勝利と、“敵”に対する認識の変更。

 本作では、この進行をかなりシンプルに行っています。

 時間の割りに要素は少なく、その分、各要素をしっかり描いている印象でした。



 以下、粗筋です。(大きなネタバレはないです。中盤のラストまで書いています)

 主人公はFBI捜査官のチームリーダー。

 ある日、サウジアラビアで爆破テロが起こり、現地にいたFBI捜査官が死亡する。彼は主人公の友人だった。

 主人公は仲間たちと捜査に行きたいと主張する。しかし国際問題に発展することを恐れた上部組織はFBIの現地入りを禁止する。

 主人公はからめ手を使い、米国滞在のサウジアラビアの王子にねじ込み、仲間たちと現地に乗り込む。

 しかし、彼らに行動の自由はなかった。サウジアラビアでは彼らを客として扱い、現地の捜査官たちは主人公たちの行動を著しく制限した。

 だが、主人公たちは腐らず、可能な範囲で精一杯現地の捜査官たちへの協力を続けた。

 その真摯な態度が現地の捜査官たちの心を動かした。

 犯人を捕まえ、事件を解決したいのは彼らも同じだった。事件では、現地の警察官たちも多く命を失っていた。

 異なる国の人々は、共通の目的のために協力して捜査を進めていく。そして、爆破テロの首謀者に徐々に肉薄していく……。



 ラストの、二つの国の異なる立場の人々の「共通の台詞」が、非常に印象的でした。

 憎しみの連鎖は何も生まないということを強く感じさせてくれます。

 こういった、硬派でメッセージ性が強く、映画としても面白い作品は好きです。

 よい映画でした。
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