映画「ノーカントリー」のDVDを九月下旬に見ました。
2007年の作品で、監督、製作、脚本はジョエル・コーエンとイーサン・コーエンのコーエン兄弟です。
アントン・シガー役のハビエル・バルデムが凄いという評判の映画でした。
各所でベタ褒めの映画ですが、私は敢えて褒めません。
演技が凄いのは認めますが、映画のシナリオとしては難ありです。ラストまで総合評価すると、点数はかなり落ちます。
これが映画ではなくマンガなら高評価だと思います。
マンガは一点突破型の娯楽で、突出する部分があれば評価が高くなるからです。
これは閲覧コストに関係があると思います。マンガは、週刊誌なら一話につき数十秒から一、二分程度で読むことができます。
そのため、全体的なバランスよりも、長所が際立っている方が評価が高くなります。
しかし映画は違います。
一本見るのに二時間掛かり、閲覧コストが高いです。
なので、欠点があると大きくマイナスの方に評価が傾きます。
この映画「ノーカントリー」は、凄い映画ではあるけど、よい映画ではないというのが私の感想です。
実際、終盤はかなりテンションが落ちていましたし。
あと、非常にどうでもよい感想ですが、映画を見ている間に一番強く思ったことを書きます。
白人は頑丈。
映画の冒頭で銃で肩を撃たれ、その後も腹を撃たれたりするのですが、痛みに耐え、ゾンビのように行動し続けます。
日本人なら、というか私ならとっくの昔にくたばっています。
さすが体格の大きな狩猟民族だと思いました。
きっと、ローマ時代のゲルマン民族って、こんな不死身の肉体の奴らが、わらわらと攻めて来ていたんだろうなと思いました。
いくらベトナム帰還兵とはいっても、ベトナム帰還兵の平均レベルがランボー並というのは、いかがなものかと思いました。
追っ手側のシガーの方は、ダメージを受けたら、きちんと治療しているのに、逃げる側は一切傷を気にしません。
この描写のウェイトの割り振り方から、視点上の主人公は逃げる側だけど、監督の中での主人公は追う側なんだろうなと思いました。
以下、粗筋です。(少し内容がバレます。中盤の半ば過ぎぐらいまで書いています)
主人公はベトナム帰還兵。彼は荒野で銃撃戦の末に死んだ人々を発見する。
そこはどうやら麻薬の取引現場だったらしい。彼は大金の入ったバッグを拾い、家に帰る。
夜になる。主人公は、現場で見た死に掛けの男が忘れられない。彼は水を求めていた。
主人公は荒野に水を持って行くことに決める。主人公は、何かあった時のために妻に身を隠すようにと告げる。
現場にたどり着いた主人公。そこで彼は悪党に見付かってしまう。その悪党が連れて来た殺し屋は、雇い主を皆殺しにして主人公を追い始める。
主人公は必死に逃走を始める。
現場に保安官たちがやって来る。彼らは主人公が追われていることに次第に気付き出す。
主人公と殺し屋は死闘を繰り広げながら追跡劇を続ける。
金と麻薬を取り戻すために、悪党のボスは新たな殺し屋を放つ。暴走する狂った殺し屋が全てを台無しにすると考えたからだ。
主人公は、武装して徹底的に戦う。最初の殺し屋も人々を次々と殺しながら追跡を続ける。
そして、主人公は傷付き、病院に運ばれる。その病院にやって来た新しい殺し屋は、自分に全てを託すようにと持ち掛ける……。
なんというか、これがアカデミー賞の作品賞受賞かと思いました。
普通アカデミー賞の作品賞は、誰もが納得する娯楽大作が取ることが多いです。
選考対象の映画に恵まれず、本来ならマニア向けの映画に受賞させるしかなかったんだろうなと思いました。
それでもまあ、シガーの意味の分からない行動や気持ち悪さは秀逸でした。
ミステリー的な必然性を求める人には納得のいかないキャラと物語だとは思いますが、これはこれでありだと感じました。
そういう意味では、かなり力技の映画でした。
ラストはけっこう投げっぱなしなので、物語がきっちりしていないと駄目な人にはお薦めしません。