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2008年11月30日 19:41:37
戦艦バウンティ号の叛乱
 映画「戦艦バウンティ号の叛乱」のDVDを十月中旬に見ました。

 1935年の白黒作品で、監督はフランク・ロイド、脚本はタルボット・ジェニングス他です。

 ちょっと前に見た「カヴァルケード」と同じ監督です。

 この映画は、日本公開時は検閲が大幅に入って「反乱」的な内容がカットされたそうです。名前も「南海征服」という名前で公開されたそうです。

 1935年ですし、日本はそういう時代だったのだと思います。

□Wikipedia - 戦艦バウンティ号の叛乱
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88...



 さて、この映画は、「戦艦」の「反乱」物です。

 というわけで、当然頭に浮かぶのは、セルゲイ・M・エイゼンシュテインの「戦艦ポチョムキン」(1925)です。

 本作は、この映画のちょうど十年後の映画です。

 以下、それぞれの映画の背景の時代と地域を書いておきます。

●「戦艦ポチョムキン」

・年代:1905年

・場所:ロシアの戦艦ポチョムキン(蒸気船)

・航海の目的:オデッサの港への移動

●「戦艦バウンティ号の叛乱」

・年代:1787年

・場所:イギリスの軍艦バウンティー号(帆船)

・航海の目的:タヒチに行く

 時代や内容に違いがありますが、虐げられた船員が反乱を起こすという基本部分は似通っていました。

 あと、航海が進むにつれて、食料がひどくなっていくという部分も共通していました。



 本作で、一番興味を引いたのは、帆船の質感がよく、描写がリアルに感じられたところです。

 もっとチープな作りを想像していたのですが、大画面で見ると迫力あるだろうなという作りでした。

 また、本作では、船内の身分関係も描かれたりしていて面白かったです。



 以下、ネタバレ的なことを交えて書きます。



 この手の、抑圧・暴発系の作品の常として、上官は非常に態度が悪くて、性格が悪いです。

 この映画のブルドックのような顔の船長は、私腹は肥やすは、船員は虐めるは、やりたい邦題です。

 その船長に対して、船員全員が不満を募らせ、人望の厚い叩き上げの一等航海士をリーダーとして反乱を起こします。

 基本的に、それは胸のすくような瞬間なのですが、この映画はそこで終わりません。

 そこから、ドロドロとした展開が待っています。

 一等航海士は、船長を殺さず、反乱に加担しなかった者たちとともにボートで海に放ちます。船長は生き残って港にたどり着いた後、復讐するために新しい戦艦に乗り込み、反乱者たちを追います。

 その結果、何人かは捕まり、処刑されます。

「反乱した、勝った、終わり!」とは、なりません。



 また、船長は港にたどり着くまでの間、生命の危機に見舞われます。この間だけ、船長は正しいリーダーシップを発揮して、公平で適切な指示を出し続けます。

 単に無能なのではなく、かつては有能だったんだろうなと思わされます。

 単純な善悪では両断できない側面を、この描写から感じました。

 こういった部分は、物語の奥行きを感じさせるには必要な部分なのだろうなと思いました。



 以下、粗筋です。

 主人公はイギリスの一等航海士。彼は、極悪な船長とともにタヒチ行きの船に乗り込む。

 船長は、私腹を肥やし、その穴を船員たちになすりつけ、罰を与えて殺していく。

 主人公や船員は、何とかその不満を我慢しながら、タヒチにたどり着く。

 タヒチは楽園のような国だった。そこで彼らは羽を伸ばす。

 だが、タヒチから去り、再び極悪の限りを尽くす船長に耐え切れず、船員たちは主人公を担いで反乱を起こす。

 主人公は、血生臭い行為を好まなかった。運を天に任す意味で、船長と反乱に加担しなかった者をボートに乗せ、海に放つ。

 主人公たちはタヒチに戻り、平和な生活を送る。

 だが、その平和な生活は長く続かなかった。船長は港までたどり付き、新しい戦艦に乗り込み、反逆者たちを捕らえに戻ってきた。

 主人公たちは、船に乗り、逃げ回り、絶海の孤島を目指す。

 また、主人公と行動をともにしていた何人かは、イギリスに戻るためにタヒチに留まった。彼らは反逆に直接加担しなかった者たちだった。

 だが、彼らは船長に反逆者として扱われ、裁判を受けさせられる。

 裁判で、彼らは死刑が確定する。その裁判の席で、主人公の親友となっていた新米士官は、事実をありのままに伝える熱弁を振るう。



 冒頭なのですが、町で飲んでいた庶民が、いきなり徴兵(拉致)されて、戦艦の乗員にさせられます。

 彼らは、有無を言わさずに、これまでの生活から切り離されます。そうやって捕まった若者は、メインキャストの一人として終盤まで登場します。

 こういった「自分の意思とは無関係に自由を奪われる」ことは、許されることではないと思います。この映画は、その悲劇も描いています。

 1787年の設定ですが、これから先の時代でも同じようなことが起こる可能性があると考えると、非常に頭が痛い問題だと思います。



 作品とは関係ないのですが、このDVDは音声と映像がズレていました。

 早送りをしてもこのズレは直りませんでした。しかたなく一旦止め、途中のチャプターから再生したら、音声のズレは直りました。

 こういったDVDは初めてでした。そのため、最初非常に困りました。
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