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[Mobile] 関係の記事・
[Android] 関係の記事 次期開発プラットフォーム選定のために、三日ほど調べごとをしていました。
うちの会社では、この数年、モバイル向けゲームを作っています。そして、最近の私は、リスク分散のために、他方向に手を打つようにしています。
そういったこともあり、次はどの端末向けにモバイル・ゲームの開発を行うか決めるため、予備調査をしていました。
最初に想定していたのはアップルの「iPhone」です。しかし、調べてみると、地雷を踏みそうな雰囲気でした。
そして次に調べたのは、マイクロソフトの「Windows Mobile」。これは、調べたけどビジネス的な部分がよく分からず、ハードなユーザーである友人に状況をヒアリングすることになりました。
最後はグーグルの「Android」です。これは、開発部分だけを見ると、これまでの私の履歴から考えると申し分ないものでした。しかし、ビジネス部分で不安が残ると思いました。
というわけで以下、この三つの端末というかOS向けソフトの開発について、メモをまとめておきたいと思います。
■ 「iPhone」の開発について
さて、最初は「iPhone」についてです。
「iPhone」の有料アプリ開発・販売について、調べた結果をまとめると、以下のようになります。
Web調べなので、タイムラグがあり、今は状況が変わっているかもしれません。また、私の理解が不十分で間違っているところがあるかもしれません。
● 開発言語
Object-C。私にとっては新しい言語。
● 開発の楽しさ
開発ドキュメントや、プログラムのサンプルコードを見まくった限り、けっこう楽しそう。
● 初期投資として、Mac+iPhoneが必要。
開発ソフトがMac用しかない。それも、かなり新しいMac(OS+CPU)にしか対応していない。Mac+iPhoneで、開発開始に合計20万ぐらい掛かる。
● アップルストアで販売するには、開発者登録1万円が必要になる
その際、日本語が上手く通らないらしい。メールなり、電話なりの、やり取りが必要。ちなみに、支払いは日本版iTunesで行うので、日本語で入力したアカウントになるとのこと。
この登録をしないと、実機でアプリは動かせない。
● アメリカのEIN(雇用者識別番号)かITIN(個人納税番号)が必要
要英語書類。FAXで申請するのは四日くらい、郵便物を利用する場合1ヶ月以上かかる。
これをしないと、日本とアメリカで二重に税が徴収される。ちなみにアメリカの税は30%。後述のアップルの取り分30%と合わせると60%が消えるらしい。
● ソフト登録時(公開前)に、アップルの審査が入る
ここで全没の可能性がある。その際は、一切アップルストアで販売できない。当然、他の販売ルートはなし。
「iPhone」は、仕組み的に、勝手アプリをインストールできないようになっている。
脱獄するという手もあるが、それは違反的使い方になる。ソフトをきちんと売るという立場からは選択できない。
没には、明確な基準はないらしい。公序良俗に反していたり、アップルがこれから出そうとするソフトに被っていたら引っ掛かる可能性がある。
審査期間は、最短で1週間ぐらい。最近はこの期間が長くなっているらしく、70日などざらのよう。
データベースがおかしくなって、公開時に一切新着リストに載らないことも過去にあった。その際はデータベースに情報が反映された後「もう新着ではないので」と、新着扱いにしてもらえなかったらしい。
■ 「iPhone」でのビジネスについて
次に、「iPhone」のビジネスに関する情報です。
ゲームソフトの価格帯は、店頭で見てきましたが、だいたい100円〜500円ぐらいでした。なので、300円ぐらいが真ん中です。トップの方は、100円のソフトが多かったです。
値段に関しては、携帯電話向けのゲームと、それほど変わらない印象です。
というわけで、1本あたり300円と仮定して計算すると、以下のようになります。
● 販売チャネル
AppStore。「iPhone」実機や、「iTunes」で買える。
● 配布データ
買ったソフトは単なるファイル。「iTunes Store」から入手すると、ファイルとして保存される。
音楽ファイルと同じように、「iPhone」と「iTunes」でファイルを行き来させることが可能。
● 手数料
アップルが30%持っていく。
なので、300円のソフトだと、約200円の売上げになる。
● 本数×200円
1000本売れて20万円。1万本売れて200万円の計算。
● 売上げ本数の予想1
ソフト公開までのゴタゴタをWebで見ていると、5000本売れるのはけっこう大変そう。
新着時に目に留まれば売れるし、目に留まらなければそのまま消えそう。
現在1万本のソフトが登録されており、月に2300〜2500本ぐらいのペースでアプリが増えている。これは、1日辺り80本のペース。
今日店頭に行って確認してきたが、「iPhone」上のAppStoreでは、リストは最大50件(通常25件)までしか表示されない。
なので、ジャンルごとの新着で数が分散されるにしても、最初の2〜3日の初動で全てが決まりそう。
● 売上げ本数の予想2
無料のソフトで「15万本ぐらいDLされた」と書いていた人が、同じページ内で、「有料ソフトは2桁落ちる数字だった」と書いていた。
つまり、単純計算で1500本。この書き方だと、多くても3000〜5000本程度だと思われる。
開発から公開までの手順が既に完璧に整っている(それも、早い時期に参入した)人で、数字はこんな感じ。
● 売上げを増やす方法
アドワーズを使って人を招いて、iTunes向けのリンクに誘導して売るという方法を取っている人がいた。
キーワード単価にもよるが、携帯向けアプリは低額商品なので、効率が悪そうだと思った。
● 売上げが立たない可能性
全没や、公開までの無限ペンディングになる可能性があり、公開されても瞬殺で消える可能性が高い。
他の場所では売れないので、初動が全て。そういう意味では、かなりリスキーさを伴う。
あとは広告を打って売るか。
きちんと売るには、独自で広報や広告を掛けるべき。ただし、収支のバランスを取るのが難しそう。
■ 「iPhone」URLまとめ
特に有益な情報がまとまっているWebページの一覧です。
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iPhoneアプリ開発関連情報(開発初期から販売まで、各段階の情報が網羅されている)
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iPhoneでのネイティブアプリケーション開発(少し情報は古いが、iPhone向け開発の言語的側面を知る上で読んでおいた方がいい)
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iPhoneアプリを作ってみよう:目次エントリー(実例)
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iPhoneアプリ開発 - 身をもって学んだ9の教訓(販売的側面から見た開発の注意点)
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iPhoneのAppを売るために(手続き的なところ他)
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iPhone・iPod touch ラボ(新作アプリ情報)
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iPhone Developer Program(公式)
どうでもいいですが、アップルのサイトが全て激重なのは、どうにかして欲しいと思いました。平気で数10秒返ってこないので。
■ 「Windows Mobile」の開発について
割愛。ビジネスだけ調べたので。
■ 「Windows Mobile」でのビジネスについて
● 商品購入方法
Windowsのフリー&シェアウェアと一緒。それぞれのサイトでダウンロードして購入。
AppStoreのような統一的な場所はない。企業主導のがいくつかあるが、全く使えない。Vectorもあまり使えないとのこと。
アルファ・ブロガーの紹介や、まとめWiki、2chの評価などで導入するというパターンが多いらしい。
購入前に試用が基本。
● 決済
Paypalが多い。
基本的に、Widndowsのシェアウェアと同じと考えていればよさそうな感じでした。
どれぐらい売れるかは未知数。
OSのシェア的には、最近「iPhone」が「Windows Mobile」を抜いたという記事があったので、ほぼ同じぐらいといった感じだと思います。
販売に関しては、アップルにはねられるというリスキーさがない代わりに、自分で手売りするということになりそうです。
今日店頭で「Windows Mobile」の搭載された実機を何台か触ってみましたが、「これは画面が物凄く小さいパソコンの代用品だな」と思いました。
iPhoneと比べるとタッチパネルの操作の単位(タッチするターゲットの大きさ)が非常に小さく、大変な印象でした。
■ 「Android」の開発について
最後は、Googleの携帯向けOS「Android」についてです。
「うわあ、不安要素に目をつぶれば、私が迷わず選択すべきプラットフォームだ」
そんな感じでした。
開発環境は、以下のような感じです。
● JAVA
「Android」は、全部JAVAでソフトを作る。
大学四年生の頃、生まれて初めて、きちんと勉強しながら書いたプログラムがJAVA。それ以降、ずっと使い続けている。
そして、JAVAでこれまで何本もゲームを作っている。携帯電話でもJAVAでゲームを作っている。
また、開発はWindowsでも、Macでも、Linuxでも可能。開発環境は全て無料。これまでの資産も全部使える。
開発だけ考えると、「Android」を選択しない理由がどこにもない。
● 情報がオープン
オープンソースなので、情報が入手しやすい。
■ 「Android」でのビジネスについて
● 「Android Market」では、審査なしでアプリ配布OK
アップルの「iTunes Store」のような、「Android Market」というサイトを、Googleは立ち上げている。そこへの登録は、審査が一切なし。
「Store(店)」と「Market(市場)」の違いと、Googleでは語っている。オープンソースだけでなく、ソフトの配布もオープンな方向性。
● 日本でまだ未登場
今から開発すれば、先行者利益的に、露出を増やすことができる。
■ 「Android」の不安要素について
上記の情報だけ見ると、私のこれまでの開発の方向性と非常に近く、選択しない理由がどこにもありません。
ただし、不安要素もあります。
以下、そのことを書きます。
● 「Android Market」の有料ソフト対応が来年初旬
それまでは無料ソフトしか登録できない。
Webを巡回していると、「その間に、Androidのソフトは無料という認識がユーザーにできてしまうと、有料ソフト販売の道が断たれそう」と不安の声が。
Googleの企業文化も考えると、本気でそうなる可能性がある。
● 「Android」実機がない
日本では実機がない。なので、本気でデバッグしようと思うと、海外から輸入して、ゴニョゴニョしないといけない。
● 「Android」実機の普及数が読めない
日本では全く売れない可能性がある。
それ以前に、世界でもあまり数が出ない可能性がある。
● Google
アドセンスを利用していると分かるが、Googleのユーザー対応は非常に悪い。
「Android」向けの有料ソフトの販売が「Android Market」中心になるのなら、その対応の悪さがもろに開発者向けに出る可能性がある。
問題があっても、Googleが電話対応しないのは、これまでのやり方からほぼ推測できる。さらに、メールも返信がなかったり、定型文しか返さなかったり、そういった対応しかしない可能性が高い。
● 「Android Market」の評価システム
Youtube的になるとのこと。こういった評価システムは、荒れる可能性があるのでちょっと怖い。
特に、有料ソフトなどの「お金」が絡む場合には、荒れる可能性が非常に高い。
一度悪い色が付くと消せない。悪意の攻撃に弱い。
● Googleがアプリを売る気がない
「Android Market」では、30%の手数料が取られるが、これはGoogleの取り分ではなく、通信会社に支払われる分とのこと。
Googleはそのことを胸を張って書いているが、それはつまり、そこから収益を上げる気がないということ。つまり、そこでビジネスをする気がないということ。
Googleとしては広告で儲ければいいわけで、アプリのビジネスはどうでもいいという扱いになる可能性が高い。
下手をすると、完全放置で荒野になる可能性がある。
Googleとしては、各開発者がアドワーズで広告を打って、自分でソフトを売ってくれた方が儲かるという現実もある。
■ 「Android」URLまとめ
特に有益な情報がまとまっているWebページの一覧です。
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Android入門(取り敢えず一通り分かる。クラスをきちんと調べる際は公式ドキュメントを)
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androidでプログラミング!(Allaboutの記事)
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Google Android用携帯アプリ作成のための基礎知識(atmarkitの記事)
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Android入門−開発環境構築編(codezineの記事)
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Androidメモ(携帯開発では定番の「ん・ぱか工房」内のページ)
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Androidでのゲームの作り方□
Androidのゲームの作り方・実践編(どのクラスを使うのがよさそうかなど、イメージを掴める)
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android情報まとめ @ ウィキ□
Android | Market(本家。アプリがダウンロードできるページは、実機でないと見られない)
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Android Developer Challenge - Android - Google Code(過去の受賞作からアプリの方向性が分かる。それらを見るためには、英語版ページの方も確認)
■ まとめ
以下、2つのプラットフォーム(OS)の、個人的比較点です。「Windows Mobile」は割愛します。
● 開発初期コスト
・iPhone:20万円
・Android:0円(実機入手は輸入になりそうなので未知数)
● 販売初期コスト
・iPhone:1万円ぐらい
・Android:2500円ぐらい
● プログラム言語
・iPhone:Object-C:よく知らない
・Android:Java:使いまくっている
● 情報入手
・iPhone:最近オープンになってきた
・Android:全面オープン
● 会社の対応
・iPhone:電話やメールの対応あり
・Android:自己解決で放置主義?
● 販売までの道のり
・iPhone:AppStore:審査が厳しい、レスが遅い
・Android:Android Market:無審査
● 収益の可能性
・iPhone:マーケットはある、売れればでかい
・Android:そもそも端末が普及しないかもしれない
ざっとこんな感じです。
というわけで、今日はWebから離れてショップや本屋に行って、情報収集をしていました。