2008年の読書のまとめ6月分です。
星による評価の基準については前述の通りです。
● 2008年06月(15冊/計31冊)
■ 03 異種移植とはなにか—動物の臓器が人を救う(デイヴィッド・K.C. クーパー)(★★☆☆☆)
人間と豚での異種移植の資料本。日本で出ている資料本の内、一般向けで参考になりそうなのは片手で数えるほどしかなく、その内の一冊です。
前の本でも書きましたが、移植を待つ人の心境はかなりヘビーです。ただ待つしかなく、希望の光が見えたかと思うと、すぐに遠ざかる。その繰り返し。
そして、そういった人たちを支える医者たちの心の磨り減っていく様子。
こういうのを読むと、ホラー映画やホラー小説よりも、現実の方が圧倒的に怖いよなと思います。
■ 05 街道をゆく (14)(司馬 遼太郎)(★★☆☆☆)
利に聡い地方と、暗い地方の、それぞれの相手方への見方が面白かったです。ラスト近くの、飲み会のシーンが強く印象に残っています。
■ 07 1億稼ぐ「検索キーワード」の見つけ方 儲けのネタが今すぐ見つかるネットマーケティング手法(滝井 秀典)(★★☆☆☆)
十分程度で流し読みしました。二、三ほど気付いていない話がありましたので収穫はありました。
この手の本を読む場合は、自分の知識の抜けを補うのが目的なので、ほとんどのページが読み飛ばせます。
■ 09 悪夢喰らい(夢枕 獏)★★★★☆ 夢枕獏のホラー系短編集。いろんなパターンの話が収録されているのですが、それぞれがよくできていて楽しめました。ホラー専業の作家の本よりも、よく出来ていると思うものが多かったです。
■ 09 白夜行(東野 圭吾)★★★★★ その作家の集大成だと感じさせられる一冊です。戦後昭和の犯罪史を、一組の男女を通して書いたような小説です。その時代を生きた人には、自分の記憶とともにたどれます。そして、主人公の男女の悲しい人生が、ひしひしと胸に迫ってきます。傑作。
読んでいる間に気付かず、巻末の解説を読んで知ったことは、いろいろな人の一人称視点で書かれている小説だけど、主人公二人の視点からは一切文章が書かれていないということです。つまり、本人の感情を一切書かず、その感情を炙り出しのように滲み出させているわけです。よく考えると凄いなと、読み終わった後に気付きました。気付くのが遅過ぎです。
本編とは関係ない、どうでもよい感想を一つ。
小説の最後の方に、納豆のてんぷらが出てくるのですが、実家にいる頃に時々作ってもらって美味しかった記憶が残っています。なので、「おお〜、納豆のてんぷらは旨いよな〜」と思いました。
■ 14 合い言葉は勇気(三谷 幸喜)(★★★☆☆)
三谷幸喜のテレビ・ドラマの脚本です。三谷幸喜は、役者に当てて脚本を書く人らしく、他人に演じて欲しくないから脚本は基本的に出版しないそうです。なので、数少ない出版されている脚本の一つです。
この本を読んだ後、「マジック・アワー」を見たのですが、あまりの設定の似っぷりに驚きました。この本に書いてあったのですが、三谷幸喜は「偽者が本物以上に活躍する話」が大好きだそうです。
あと、普段脚本を読んだことがなかったので、そういった意味でも面白かったです。
■ 14 失敗しない水彩の色づくり—8色の絵の具で、さらりと風景を描こう(久山 一枝)(★★☆☆☆)
水彩の勉強のために購入。ちょうど、pixiv向けに絵を描こうかと思っていた頃です。でも、pixivは、あまりにも絵が流れるのが早いので、放置状態になってしまいました。
■ 18 猿丸幻視行(井沢 元彦)(★★★☆☆)
異色のミステリーという言い方がぴったりの本でした。精神タイムスリップで折口信夫の精神にトリップしたところから始まり、その状態で謎に挑むという、超アクロバティックな話でした。
歴史ミステリー的な内容は面白かったです。犯人の動機も納得できるものでした。
■ 21 文章読本(三島 由紀夫)(★★☆☆☆)
ちょっと三島由紀夫を読んでみようと思い、何冊か読んだ内の一冊。読書の美食家を目指そう、読者としてのレベルアップをはかっていこうといった内容だった気がします。あとは、いろいろな文章の、どこがよいのか、解説が書いてあった気がします。
基本的に解説本なので、印象的なシーンがないので記憶に薄いです。
■ 25 今どきの拷問術(相沢 史生)(★★☆☆☆)
様々な拷問方法が、シンプルなイラストとともに紹介されている本。脳みそ露出系の拷問は、さすがに「うへぇ」と思いました。
知らなかったり、思いつかなかったりするような拷問はほとんどなく、人間の考えることは、それほどバリエーションがないのかもと思いました。
■ 26 湖底のまつり(泡坂 妻夫)(★★☆☆☆)
私の好みではなかったです。端正な文章と、様式美的な構成がよくできた小説なのですが、あまりにもきっちりし過ぎていて感情のアップダウンがなく、私の心には響きませんでした。
■ 26 将棋入門の次に読む本—「もう一度基本を」という方にも最適!(沼 春雄)(★★☆☆☆)
この時期、少し将棋をする機会があったので購入して勉強しました。将棋なんて、小学生以来です。基本的な戦術をあまり知らなかったので、勉強になりました。
この手の本で、ちょっときついなと思ったことがあります。それは、本文のほとんどが棋譜であることです。頭の中でコマを並べて覚えておかないと、今どんな盤面かさっぱり分かりません。
私は本を数行ずつ中断して読むことが多いのですが、そういった読み方だと、この手の本は読めません。記憶しないでもいいように、もっと盤面のイラストを増やして欲しいと思いました。
あと、文章中で、棋譜の途中に戻る記述が何度かあるのですが、そのたびに混乱しました。脳内の盤面は最新のものしかなく、過去ログはキャッシュされていないので。
■ 27 ザ・尋問術—心理的圧迫テクニックから拷問まで(B. ラップ)(★★☆☆☆)
強要するのではなく、相手からしゃべらせるような環境や、信頼関係を作るといった内容でした。進んでしゃべらせることができればベストというわけです。
あと、拷問に関しては、拷問で自白しても嘘の可能性が高いということでした。また、最近の拷問は、後が残らない系がトレンドのようです。でも、アメリカ軍の拷問とかを見ていると、そんなトレンドは関係ないような気もします。
■ 29 鹿鳴館(三島 由紀夫)(★★☆☆☆)
戯曲です。戯曲は序盤が一番大切だそうです。筆者いわく、会話だけで、背景説明や人間関係の説明をするので、序盤にそういった情報が大量に盛り込まれているということでした。
こういった情報量の多い冒頭の会話を自然なものにするのは、けっこう難しいと思います。そこらへんの手法に関しては、以前読んだ平田オリザの本にいろいろと書いてありました。
■ 30 復讐の本(復讐友の会)
(★☆☆☆☆)
復讐のレベルが低くて肩透かしを食らいました。もうちょっと高度な復讐が読みたかったです。