映画「ひまわり」のDVDを二月中旬に見ました。
1970年のイタリア映画で、監督はヴィットリオ・デ・シーカ、脚本はチェザーレ・ザヴァッティーニ他、主演はソフィア・ローレン、競演はマルチェロ・マストロヤンニです。
映画は、第二次大戦後で引き裂かれた夫婦を描く反戦物です。
妻としては夫を責めたくなるでしょうが、これは戦争の悲劇でどうしようもない部分があるなと、切々と思わせられる内容でした。
派手さはないですが、心に来る映画でした。
さて、この映画の感想を書くには、先に粗筋を書く必要があり、感想を書くとネタバレになってしまいます。
ミステリーではないので、気にしない人は先を読んでも問題ないと思いますが、一切のネタバレが嫌いな人は、読まない方がよいと思います。
ちなみに、ネタバレが致命的な映画ではありません。
以下、感想です。(ネタバレあり。最後の方まで書いています)
時は第二次大戦中。主人公はイタリアの女性。彼女は同じ国の男と結婚する。楽しい新婚生活の後、彼は兵士としてソ連戦線に送られる。
戦争が終わった。しかし、夫はいつまで経っても帰って来ない。夫は死んでいない──。そう信じる主人公は、ソ連に行き、夫を探す。そこには、ソ連の女性と結婚して子供まで儲けた夫がいた。
主人公は失意の内にイタリアに帰る。しばらくして元夫がイタリアにやって来た。彼は主人公に会いたいと言う。彼女はそれを拒む。しかし、最終的に会うことにする。
元夫は、極寒の地で何が起こったかを語り始める。
映画は、前半の楽しい新婚生活と、その後に起こる辛い戦後が、対比として描かれます。
ソ連で妻子を儲けた夫は、最初非常に軽薄な印象を受けます。しかし、極寒の地での体験を語り始め、それが戦争によって起こった悲劇なのだと分かると、それは仕方がなかったことだと思えるようになるます。
寄る辺のない一面の雪原。そこで次々と死んでいく兵士たち。周囲には味方は誰もおらず、死ぬしか道のない運命。
その中で、自分を助けてくれた女性。その恩という以前に、自分は敵地の孤兵であり、彼女と彼女の家を離れては、食料も防寒の術もなく死ぬしかない境遇。そして、彼女の“夫”となることで拾った命。
そうやって引き裂かれた夫婦の物語が、イタリアとソ連の美しい景色とともに展開していきます。題名にもなっているひまわり畑の風景もとても美しかったです。
映画の撮影は、実際にソ連で行っています。その許可を取るのは、当時冷戦だったので非常に大変だったそうです。
映画の途中、主人公の夫は、狂人の振りをして徴兵を逃れようとします。しかし、精神病院に面会に来た主人公といちゃついているところを目撃され、その計画が失敗します。
当時、そうやって徴兵を逃れた人が実際にいたのかなと思いました。
以下、少し俳優について書きます。
主人公の夫を演じているマルチェロ・マストロヤンニは、ぐっさん(山口智充)に雰囲気が似ているなと思いました。
あと、主演のソフィア・ローレンは、やたら強そうな顔だなと思いました。この人の“唇”力は、現代の女優だとアンジェリーナ・ジョリーに受け継がれている系譜だなと感じました。
夫がソ連で結婚する奥さん役のリュドミラ・サベリーエワは、ソフィア・ローレンと対照的に可憐な印象でした。いかにも、ソ連の白い妖精という雰囲気でした。
映画は、エピソードとしては小さいものの、戦争で壊される何かを、確かに伝えてくれるものでした。