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2009年04月21日 19:15:21
古今和歌集 2
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 講談社学術文庫版の「古今和歌集 全訳注」(全四巻、久曾神 昇)の二巻の感想です。

 前回の一巻の感想の続きです。今回は歌の感想が中心です。三巻、四巻の感想では、いろいろと文章を書きます。

 以下、「古今和歌集 全訳注 二巻」の中から、これはと思った歌を抜き出しておきます。あくまで、私の趣味に適った作品ですので、世間の評価とは違うと思います。

 また、漢字付加、歌意、感想は、本を参考にして、私が勝手に付けています。文法的に誤っている部分もあると思います。



古今和歌集 巻第四 秋歌上

●メモ:
 七夕の歌はこの季節。



P11 歌169

「藤原敏行朝臣

あききぬとめにはさやかに見えねども風のおとにぞおどろかれぬる」

●漢字付加:
秋来ぬと
目にはさやかに
見えねども

風の音にぞ
驚かれぬる

●歌意:
 目の前の景色を見るだけでは秋が来たとは、はっきりと分からないが、風の音を聞けば、秋だと感じられることである。

●感想:
 平易な言葉の流れが美しい。



P24 歌184

「よみ人しらず

このまよりもりくる月の影見れば心づくしの秋はきにけり」

●漢字付加:
木の間より
漏り来る月の
影見れば

心尽くしの
秋は来にけり

●歌意:
 木々の間から漏れる月の光を見ていると、様々に物思いをさせられる秋はもう来ているのだなあと思う。

●感想:
 秋の実感が湧く歌。秋の夜の空気を感じる。



P30 歌191

「よみ人しらず

白雲にはねうちかはしとぶとりのかずさへ見ゆる秋のよの月」

●漢字付加:
白雲に
羽打ち交わし
飛ぶ鳥の

数さへ見ゆる
秋の夜の月

●歌意:
 白雲の浮かぶ天を羽ばたき飛んでいる雁の、数さえも見えそうな秋の夜の月の明るさよ。

●感想:
 情景が浮かぶような歌。

 この歌には「数さへ見ゆる」「影さへ見ゆる」の二パターンがあり、誇張法の観点から「影さへ見ゆる」の方が正しそうとのこと。

「影さへ見ゆる」の場合は、雁の影が地上にはっきりと落ちるぐらいに明るいという意味になる。



P41 歌205

「よみ人しらず

ひぐらしのなく山里のゆふぐれは風よりほかにとふ人もなし」

●漢字付加:
日暮らしの鳴く
山里の
夕暮れは

風より他に
訪ふ人もなし

●歌意:
 ひぐらしの鳴く山里の夕暮れは、風の他に訪れる人もなく、寂しいことである。

●感想:
 寂しげな山里の情景が浮かぶような歌である。



P49 歌214

「ただみね

山里は秋こそことにわびしけれしかのなくねにめをさましつつ」

●漢字付加:
山里は
秋こそ殊に
侘びしけれ

鹿の鳴く音に
目を覚ましつつ

●歌意:
 山里は、秋に格別に侘びしいことである。鹿の声に目を覚まされるとそう思うものである。

●感想:
 山里の静けさが伝わってくるような歌。



P50 歌215

「よみ人しらず

おく山に紅葉ふみわけ鳴く鹿のこゑきく時ぞ秋は悲しき」

●漢字付加:
奥山に

紅葉踏み分け
鳴く鹿の

声聞く時ぞ
秋は悲しき

●歌意:
 人里離れた奥深い山で、紅葉を踏み分けて歩く鹿が悲しそうに鳴く声を聞くと、秋というものはしみじみと悲しいものだなと感じられる。

●感想:
 艶やかな紅葉の情景が浮かぶような歌。

 人口に膾炙している歌。百人一首では猿丸太夫の歌となっている。



P80 歌248

「僧正遍昭

さとはあれて人はふりにしやどなれや庭もまがきも秋ののらなる」

●漢字付加:
里は荒れて
人は古りにし
宿なれや

庭も真垣も
秋の野良なる

●歌意:
 里は荒れ果て、住んでいる人も年老いてしまった家だから、庭も垣根も、まったく秋の野原でありますよ。

●感想:
 情景が浮かぶ、ユーモアのある歌。

 真垣は、今の垣根。昔は、垣の上の部分を垣穂、下の部分を垣根、全体を真垣と呼んでいた。



古今和歌集 巻第五 秋歌下



P90 歌257

「としゆきの朝臣

白露の色はひとつをいかにして秋のこのはをちぢにそむらむ」

●漢字付加:
白露の
色は一つを
如何にして

秋の木の葉を
千々に染むらむ

●歌意:
 白露の色は白一色なのに、どのようにして秋の木の葉を、様々な色に染め染め分けているのだろうか。

●感想:
 理知的な歌の代表的な歌。それだけでなく、色の美しさと、素朴な疑問を感じさせられる歌でもある。



P102 歌269

「としゆきの朝臣

久方の雲のうへにて見る菊はあまつほしとぞあやまたれける」

●漢字付加:
久方の
雲の上にて
見る菊は

天つ星とぞ
誤たれける

●歌意:
 宮中で見る菊の花は、天上の星と見誤れるほどのものです。

●感想:
 歌の背景として、当時はまだ菊が珍しかったということが上げられる。菊は奈良時代末期、平安時代初期に中国から移入されてきた。当時としては、まだ普通に見られるものではなかった。

 この歌は、作者がまだ昇殿を許されていなかった時期に、特に召し出されて読んだ歌。

 その時の、周囲をキラキラとしたものとして見る、初々しい様子が感じられる。



P110 歌277

「凡河内(おほしかふちの)みつね

心あてにをらばやをらむはつしものおきまどはせる白菊の花」

●漢字付加:
心当てに
折らばや折らむ

初霜の
置き惑はせる
白菊の花

●歌意:
 もし折り取るならば、当て推量に折ることになるだろう。初霜がおり、その白さで白菊の花を分からなくさせているから。

●感想:
 美しい情景を想像できる歌。百人一首にも採られている。

 流れるような調べも美しい。



P121 歌289

「よみ人しらず

秋の月山辺さやかにてらせるはおつるもみぢのかずを見よとか」

●漢字付加:
秋の月
山辺さやかに
照らせるは

落つる紅葉の
数を見よとか

●歌意:
 秋の月が山の辺りを照らしているのは、落ちていく紅葉の数を数えよというのだろうか。

●感想:
 秋の静かな美しさを感じる歌。



P121 歌290

「よみ人しらず

吹く風の色のちくさに見えつるは秋のこのはのちればなりけり」

●漢字付加:
吹く風の
色の千種に
見えつるは

秋の木の葉の
散ればなりけり

●歌意:
 吹く風がいろいろな色に見えたのは、秋の木の葉が風の中を飛び散っているからである。

●感想:
 舞い散る紅葉の光景が目に浮かぶ歌。



P125 歌294

「なりひらの朝臣

ちはやぶる神世もきかず竜田河唐紅(からくれない)に水くくるとは」

●漢字付加:
千早振る
神代も聞かず
竜田河

唐紅に
水括るとは

●歌意:
 不思議なことの多かった神代でも聞いたことがない。竜田河が、水を真っ赤に括り染め(くくりぞめ)にするということは。

●感想:
「水くくる」は水を括り染めするという意味。括り染めとは、絞り染めのこと。絞り染めは、布地の所々を糸で硬く縛り、白い染め残しを作る染色法。

 ゴージャスな雰囲気のする歌。秋の絢爛豪華な色彩の洪水を感じさせられる。



古今和歌集 巻第六 冬歌



P160 歌330

「きよはらのふかやぶ

冬ながらそらより花のちりくるは雲のあなたは春にやあるらむ」

●漢字付加:
冬ながら
空より花の
散り来るは

雲の彼方は
春にやあるらむ

●歌意:
 冬でありながら、空から花が散って来る。雲の彼方は既に春になっているのだろうか。

●感想:
 雪の降る情景を見て花と見立てる歌の一種。そこから一歩踏み込んで、雲の向こうに春の情景を重ね合わせる。

 こういった一歩踏み込んだ推測は、古今集時代の特色らしい。



P162 歌332

「坂上これのり

あさぼらけありあけの月と見るまでによしののさとにふれるしらゆき」

●漢字付加:
朝ぼらけ
有明の月と
見るまでに

吉野の里に
降れる白雪

●歌意:
 夜が明け染めて、まだ有明の月が照っているのではないかと見えるほどに、吉野の里には白雪が降り積もっていることよ。

●感想:
 朝ぼらけは、夜明け方、夜の明け染める頃。有明の月は、夜が明けてもなお空にある月。

 平明で、雪の淡い明かりを感じさせる柔らかい調べがよい。



古今和歌集 巻第七 賀歌(がのうた)

●メモ:
 冬の歌の次にある「賀歌」は、正月の賀の歌がまず来る。冬の次にあるのはそのため。

 また、この頃は、年が改まると年齢も上がるので、新春=長寿を祝う歌が多い。



P174 歌343

「よみ人しらず

わが君は千代にやちよにさざれいしのいはほとなりてこけのむすまで」

●漢字付加:
我が君は
千代に八千代に

細石の
巌と成りて
苔の生すまで

●歌意:
 あなたは千年も万年も長生きなさいませ。小さな石が成長して、大磐石となって、苔が生えるようになるまで。

●感想:
 君が代の元の歌。時代の変遷に伴い、以下のように変化したらしい。

わが君は千代にましませさざれ石のいはほとなりて苔むすまでに

わが君は千代にましませさざれ石のいはほとなりて苔のむすまで

わが君は千代に八千代にさざれ石のいはほとなりて苔のむすまで

君が代は千代に八千代にさざれ石のいはほとなりて苔のむすまで

 ちなみに「君」は「あなた」の意味で、敬愛の意味を込めた言葉。対象は君主に限定されず、広く対象を指す。

 新春の賀に相応しい歌。そして、長寿を祝うのに相応しい歌である。

 賀歌の巻頭歌。



P181 歌349

「在原業平朝臣

さくら花ちりかひくもれおいらくのこむといふなる道まがふがに」

●漢字付加:
桜花
散り掻ひ曇れ

老いらくの
来むと言ふなる
道紛ふがに

●歌意:
 桜花よ、周囲の見分けが付かぬほどに散り乱れて雲ってくれ。老いの来るという道が分からなくなり、来なくなってしまうように。

●感想:
 老いを擬人化した歌。「おいらく」は、「老ゆる」の名詞形。

 老いに抵抗する歌でありながら、華やかさを感じるのは、業平らしいと感じさせられる。



古今和歌集 巻第八 離別歌

●メモ:
 旅に出る人を送る歌が多い。次の羇旅(きりょ)歌(旅の歌)と対になっている。

 後半は、単なる離別を歌う歌も入っている。



P217 歌379

「よしみねのひでをか

白雲のこなたかなたに立ちわかれ心をぬさとくだくたびかな」

●漢字付加:
白雲の
此方彼方に
立ち別れ

心を幣と
砕く旅かな

●歌意:
 白雲が空をあちらこちらに行き交うように、私は貴方と別れて、心を幣のように砕いている悲しい旅であるよ。

●感想:
 空を対象とすることで、旅による別れの心の間隙の大きさを感じさせる歌。

 今日では「あちらこちら」という風に、「遠近」の順に代名詞を使うが、この頃は「近遠」の順で代名詞を使っていた。平安中期の頃から逆転が始まるらしい。

 この頃に、人々の世界の把握の仕方がある程度変わった可能性もあるので興味深い。



P226 歌387

「しろめ

いのちだに心にかなふ物ならばなにか別れのかなしからまし」

●漢字付加:
命だに
心に叶う
物ならば

何か別れの
悲しからまし

●歌意:
 せめて命だけでも思うようになるのならば、別れがどうして悲しいことだろうか(悲しいものではない)。

●感想:
 昔は旅の期間も長く、死の危険もあった(行く方も、待つ方も、いつ死ぬか分からなかった)ので
こういう歌が実感を伴って歌われたのだと思う。

 離別の悲しさと、再び会うことを願う気持ちとが、言葉の響きとともに強く伝わって来る歌。



古今和歌集 巻第九 羇旅(きりょ)歌



P249 歌406

「安倍仲麿

あまの原ふりさけ見ればかすがなるみかさの山にいでし月かも」

●漢字付加:
天の原
振りさけ見れば

春日なる
三笠の山に
出でし月かも

●歌意:
 大空を振り仰いで眺めると月が見える。あの月は、昔日本にいた頃に、春日の三笠山に出たあの月であるよ。

●感想:
 空間と時間の飛躍から、悠久を感じさせる歌。広大な星空と、歌い手の小さな姿とを、鮮烈な情景とともに頭に思い浮かべてしまう。

 百人一首にも採られ、その背景も含めて望郷の念を感じさせられる。傑作。



P254 歌409

「よみ人しらず

ほのぼのと明石の浦の朝霧に嶋がくれ行く舟をしぞ思ふ」

●漢字付加:
ほのぼのと
明石の浦の
朝霧に

嶋隠れ行く
舟をしぞ思ふ

●歌意:
 ほのぼのと夜が明け染める明石の浦の朝霧の中、島の彼方に漕ぎ隠れていく舟を、感慨深く思うことであるよ。

●感想:
 調べがよい。



P265 歌416

「みつね

夜をさむみおくはつ霜をはらひつつ草の枕にあまたたびねぬ」

●漢字付加:
夜を寒み
置く初霜を
払ひつつ

草の枕に
数多旅寝ぬ

●歌意:
 夜が寒いので、降り置く初霜を払いながら、旅寝を幾夜も重ねたことであるよ。

●感想:
 冬の旅の寒さを、しっとりと感じさせる歌。



古今和歌集 巻第十 物名

●メモ:
 歌の中に、暗号のように物の名前を隠した歌。言語遊戯的な側面が強い。意味は掛けていなくてもよい。

 古今和歌集全体の構成としては、インターミッションに当たる(全二十巻中の十巻なので、ちょうど真ん中に当たる)。

 この後の後半では、怒涛のように恋の歌が数巻続く。

 まだ最後まで読んでいないが、恋の歌は、季節の歌のように時間軸に沿っているようである。恋が始まり、そして終わり、哀傷歌へと続く構成だと思われる。



P125 歌294

「兼覧王(かねみのおおきみ)

かぢにあたる浪のしづくを春なればいかがさきちる花と見ざらむ」

かぢにあたる浪のしづくを春なれば“いかがさき”ちる花と見ざらむ」

●漢字付加:
櫂に当たる
浪の滴を

春なれば
いかが咲き散る
花と見ざらむ

いかがさき=河内国茨田郡(まむたのこおり)伊香(いかが)郷。現在の枚方(ひらかた)市伊加賀。

●歌意:
 櫂に当たって砕ける波の滴を、春であるから、咲いては散る花とどうして見ないことができようか(いや、見ざるをえない)。

●感想:
 櫂から飛び散る滴を花に見立てた歌。その趣向が面白い。



P318 歌468

「僧正聖宝(さうほう)

花のなかめにあくやとてわけゆけば心ぞともにちりぬべらなる」

花(“は”な)の“なかめ”にあくやとてわけゆけば心ぞともにちりぬべらな“る”

最初と最後の字で「はる」、間に「ながめ」で、「春の眺め」を織り込んでいる。

●漢字付加:
花の中
目に飽くやとて
分け行けば

心ぞ共に
散りぬべらなる

●歌意:
 一面に花が咲いている場所に、見飽きることもあるかと思い、分け入ってみたところ、見飽きるどころか花の見事さに、心も共に散ってしまいそうであるよ。

●感想:
 個人的に、「千と千尋の神隠し」の花畑のシーンを思い出した。

 眼前いっぱいに広がる花畑の景色が思い浮かぶ歌。



 というわけで、「古今和歌集 全訳注 二巻」の中から、これはと思った歌を抜き出しておきました。

 抜き出した歌の数は、三百首中、二十四首でした。比率的には一巻よりも少なかったです。
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