映画「ランブルフィッシュ」のDVDを三月下旬に見ました。
1984年の映画で、監督はフランシス・フォード・コッポラ、脚本・原作はS・E・ヒントンです。
ちなみに、「ランブルフィッシュ」は、闘魚という意味だそうです。辞書で引くと「rumble」「【米俗】ちんぴら同士のけんか」とありました。
ランブルフィッシュは、タイ産の小さな闘魚の一種で仲間同士で殺し合い、たとえ1匹だけでも鏡に映った自分の姿にさえ向ってゆくという過激な魚だそうです。
以下、ランブルフィッシュの説明が書かれているページです。
□キネマ旬報DB - ランブルフィッシュ
http://www.walkerplus.com/movie/kinejun/index.cgi?ctl=each&id=9580
この映画は、ミッキー・ロークを見るために見ました。「レスラー」を見る前の予習にしたかったからです。
ミッキー・ロークは、主人公の兄として出てきます。主人公は弟の方ですが、話の焦点は兄の方にあります。
ミッキー・ロークを見て「ああ、確かに美男子だ」と思いました。
憂いを称え、ワイルドさも持っている、端正な顔をしています。
映画は、そういった「ミッキー・ロークを見る」という目的とは別に、面白かったです。
この映画は、終盤の主人公の兄や父の台詞に、畳み掛けるように共感しました。普段、私が思っていることとほぼ同じでしたので。
この映画は、1984年の映画ですが、白黒で進んでいきます。この表現には意味があります。その意味については、後述します。
それだけでなく、この映画は映像的に面白い部分が多いです。
それらの映像表現の中でも特に、随所に挟まれる時間経過が気持ちよいです。空の様子などを早回しで撮ったり、影の移り変わりを早回しで撮ったりしています。
こういった映像表現も含めて、この映画は、街の不良の話でありながら、どこかスタイリッシュな雰囲気を持っていました。
時間が九十六分と短いこともあって、この映像表現は大きな効果を上げているなと思いました。
以下、粗筋です(大きく端折って、ラストの直前まで書いています)。
主人公は不良少年。彼の兄は、かつてカリスマ的な不良少年たちのリーダーだった。主人公はその恩恵を受けて、不良グループの中心的立場にいた。
彼の兄は、街から姿を消していた。その兄が戻ってきた。主人公は、兄に不良グループに戻ってきて欲しいと言う。しかし、兄はその願いを断る。兄は、子供たちの許を離れた母に会いに西海岸まで行っていたという。
兄は飄々としている。そして、何を考えているのか分からない。弟は兄に憧れているが、兄はそれは自分の虚像だという態度を取る。弟は、兄は代わったと思う。
その兄は、色盲で、色の見えない世界に生きている。彼は、ペットショップに通ってランブルフィッシュをよく見ている。弟にはその行為の意味が分からない。
そして兄は、ある日の夜、ペットショップに忍び込み、ランブルフィッシュの水槽を盗み出す……。
以下、ラスト近くの感想を書きます。
ネタバレが嫌いな人は読まないでください。
終盤、兄弟の父親(デニス・ホッパー)が、弟に語るシーンが印象的でした。
内容は、以下のようなものです。
お前の兄は、気違いなわけではない。見えているものが違うんだ。
その「見えているものが違う」ということを表現しているのが、「白黒の映像」になっています。
兄は色盲です。だから、映画の画面を白黒で作っています。そうしているというのは、映画のラストで鮮烈に示されます。
映像表現自体が、映画で言いたい主題になっているのは、ギミックとして強い印象を残すなと思いました。
よかったです。
また、この弟と父親の会話シーンもよかったです。映画は、このシーンを境に、急転直下でラストに向かって進んでいきます。
このシーンは、ラストの十分前ぐらいなのですが、ぐわっと全身の毛穴が開くような感じになります。アクション・シーンではないのですが、背筋が震えます。
また、映画の中でもう一つ印象に残ったことがあるので、そのことについても書いておきます。
それは「敵が最も、その人のことを知っている」ということです。
街に戻ってきた兄に対して、警察官の一人が「街から出て行くように」としつこく言います。
でも、映画を最後まで見ると、不良たちとは違ってこの警察官は、兄貴のことをきちんと分かっていたんじゃないのかと思わせてくれます。
お前は、祭り上げられてトラブルの種になるだけの人間で、おまえ自身はそんなことには興味はないんだろう? だから、この場所には戻ってくるな。
言葉には出しませんが、そう言っているように感じます。
そして、「敵が最も……」という言葉が出てきました。
最後に役者について書きます。
ミッキー・ロークはよかったです。これは美男子です。「レスラー」の予告編で見たミッキー・ロークとは、完全に別人ですが。
次に、弟の恋人役のパティー(ダイアン・レイン)が、なかなか可愛かったです。女学生の格好をしている時の方が可愛いです。
あと、この映画は、ニコラス・ケイジが出ています。
時期的に初登場じゃない? と思って調べてみました。
キネマ旬報DBでは「ランブルフィッシュ」(1983)が最初のデータになっていますが、Wikipediaを見ると、1981年に「初体験/リッジモント・ハイ」でニコラス・コッポラとしてデビューしているそうです。
ニコラス・ケイジは、叔父がフランシス・フォード・コッポラなので、この「ランブルフィッシュ」もその縁なのかなと思います。
あと、この「初体験/リッジモント・ハイ」は、2005年にアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されたそうです。主演はショーン・ペン。後に有名になる俳優達が多く出演しているそうです。
その内、見たほうがいいのかもと思いました。