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2009年10月16日 06:38:11
冷血/FONT>
 映画「冷血」のDVDを、七月下旬に見ました。

 1967年の白黒映画で、監督・脚本はリチャード・ブルックス、原作はトルーマン・カポーティです。

 「カポーティ」(2005)がよかったので、本作も借りて見ました。なかなか面白かったです。

 あと、監督は「エルマー・ガントリー/魅せられた男」(1960)の人でした。



● 「カポーティ」との違い

 本来なら、「冷血」が先で、「カポーティ」を後に見て、「冷血との違い」を書くほうが筋なのでしょう。

 しかし、見た順番が「カポーティ」が先なので仕方がありません。「カポーティとの違い」について、以下書きます。

 まず、最大の違いは、「カポーティ」は「冷血」の作者の話で、事件発生後を描いていることです。

 「冷血」は、その取材を元にして、事件発生から逮捕までを中心にして描いています。

 そして、「カポーティ」は主人公はカポーティですが、「冷血」は事件の犯人です。

 この二点が一番違います。

 その結果、「カポーティ」は主人公が犯罪の動機を聞き出す物語となり、「冷血」は主人公が犯罪の動機を告白する物語になっていました。

 最終的な帰着点はかなり近いのですが、そのたどり方が違うので、別の物語になってました。

 こういった関係を持つ映画は少ないので、興味深く楽しめました。



 以下、ネタバレありの感想です。



● 動機

 この映画のミステリー部分は「四十ドルのために、なぜ殺人を犯したか?」になります。

 映画では、二人の犯罪者の逃避行を描いていき、最後に殺人事件の日の回想に行き着き、その理由を明かします。

 この理由がノン・フィクションならではだと思いました。丹念に犯罪者の行動や性格、考えを追っていき、その結論として、明確な理由のない衝動的な殺人であることを提示します。

 いちおう理由らしき理由はあるのですが、それだけで全ては説明できないようになっています。

 フィクションなら許されないような結論ではあるのですが、実際の世の中の殺人の何パーセントかは、理由のない殺人なのだと思います。

 ある意味、魔が差したとしか言いようがない殺人なのですが、映画を最後まで見ていくと、その結論に不思議と違和感を覚えません。

 自分ならば殺人まで至らないだろうと思いつつも、彼の立場ならそうなるかもしれないと、心情を汲み取れます。

 そういう風に、主人公の心に共感できるのは、人間がよく描けているからなんだろうなと思いました。



● 二人の犯罪者

 映画には二人の犯罪者が出てきます。

 一人は大言壮語の親分気取りで、もう一人は普段は大人しい激情派です。この後者が主人公になります。

 主人公は、この「嘘吐き」の相棒に振り回されます。そして、弟分のように行動をともにします。しかし彼は、実は冷めた目で相手のことを見ています。それは、主人公が、世の中に対して、ある種の諦めを持っているからです。

 映画の終盤には、その諦めの理由が明かされます。この理由は、間接的には殺人の動機になっています。しかし、直接的な動機とは言い難いものです。

 人生のなかで、何かの掛け金が外れる瞬間があるんだろうな。この映画を見ながら、そう感じました。

 そして、主人公のラストの感情の吐露を見て、ある意味人間的だなと感じました。



● 犯罪者の逃避行

 映画のほとんどは、二人の犯罪者の逃避行でした。

 そして、この逃避行は、本当に無計画で滅茶苦茶でした。なんというか、犯罪に対しての抵抗感がほとんどないという感じでした。

 殺人事件で逃げているのに、後先考えずに小切手詐欺をするし。これは殺人事件を犯していなくとも、道を誤るよなと思いました。



● 粗筋

 以下、粗筋です(ネタバレあり。最後の方まで書いています)。

 主人公は仮出所した犯罪者。彼は、刑務所で知り合った友人と落ち合う。友人は、刑務所で一緒だった男に、ある金持ちの家のことを聞いたという。その家には、金庫があり、いつもお金が入っているという。そのお金を強奪しようと友人は言う。

 情報として、さすがにそれは弱過ぎるのではないかと、主人公は思う。だが、友人に付き合い、その家に押し入る。

 家には金庫はなかった。家の主は、普段は小切手を利用していた。

 友人は、家の人間を問い詰め、金庫の場所を聞き出そうとする。だが主人公は、金庫はないと諦める。そして、友人が家の人間に乱暴を働かないようにする。

 しかし、何かがズレてしまった。主人公は家の人間を射殺して、二人は四十ドルだけ奪って逃走する。

 二人はメキシコに行ったりして逃亡を続ける。だが、友人は故郷に戻りたいという。二人は犯罪を犯した州に戻ってきて、小切手詐欺を働いて逮捕される。

 その頃には、友人に金庫の話をしていた刑務所の男が、その話を告白していた。二人は殺人事件で立件される。

 死刑の直前、主人公は、殺人事件が起こった日、家で何があったのかを語りだす。



● その他

 主人公は、母親が不倫をして出て行ったのがトラウマになっています。そして、そのせいで父親が壊れてしまったことでも、トラウマを負っています。

 親が安定していないと、多感な子供の心は、大いに傷つくのかもしれません。

 たいていの物語で、社会からの逸脱者は、家庭に問題を持っている様子が描かれます。ステロタイプな見方で、必ずしも因果関係として結びつくわけではないですが、子供の人格形成の上で、親の仲がよいのに越したことはないよなと思いました。
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