映画「ローズマリーの赤ちゃん」のDVDを八月中旬に見ました。
1968年の映画で、監督、脚本はロマン・ポランスキー、原作はアイラ・レヴィンです。
この映画は、当時の大ヒット作品です。そして、ロマン・ポランスキーの出世作です。
映画は、非常によくできていました。面白かったです。
● ロマン・ポランスキーという人物
DVDには、監督のロマン・ポランスキーのインタビューや、主演のミア・ファローのインタビューなどがついていました。
そこでは出てこなかったのですが、あとで、彼の経歴を見て、けっこう驚いたのでメモしておきます。
□Wikipedia - ロマン・ポランスキー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83...<引用開始>
1977年にジャック・ニコルソン邸で、当時13歳の子役モデルに性的行為をした嫌疑をかけられ逮捕。有罪の判決(実刑 懲役50年以上という換算)を受ける。
逮捕、収監を避けるため、「映画撮影」と偽ってアメリカを出国し、ヨーロッパへ逃亡。
1978年にフランスに移り市民権を取得。
「戦場のピアニスト」(2002)でアカデミー監督賞を受賞するも、上記の問題により逮捕・収監の可能性があるため授賞式には参加せず。
<引用終了>
なんか、凄いことになっているのですが。
そして、最近、捕まっていました……。
ちなみに、DVDの映像特典は、「ローズマリーの赤ちゃん」撮影当時のものでした。そのため、非常に若々しかったです。そして、なかなか美形でした。
あと、「俳優経験もあるので」といった話が出ていたのですが、けっこう俳優としても映画に出ているのですね。知りませんでした。
以下、少しネタバレのある感想です。
● 演出のバランス
この映画は、ジャンル的には、ホラーやサスペンスに属するものになります。
妊娠した女性が、周囲の陰謀で子供を奪われそうになっていると怯え、逃げようとする物語です。
監督が語っていた話によると、女性の妄想か、周囲の陰謀か明確にしないようにするように、演出のバランスを気をつけたそうです。
確かに、そういった点を気をつけてるなと感じました。しかし、観客の立場からというと、死人が出たり、不幸が連続して起こっていたり、周囲の発言が微妙に怪しかったりと、どう見ても後者だよなと感じました。
ただ、これは、その後(1968年以降)の映画を見た人間の、経験値によるものなのかもしれません。
なぜならば、この映画は、当時においては非常に斬新だったからです。そして、いろんな映画に影響を与えたとDVDの映像特典では語られていました。そういった影響もあるのでしょう。
また、この映画は、今から四十年も昔の作品になります。現代の目から見れば、ある程度予想がついてしまうのは、仕方がないのだろうなと思いました。
● 恐ろしい物の見せ方
映画は、ラストが非常によくできていました。
これまでの積み重ねを延長し、そこに数パーセントの上乗せをした演出をほどこして、先を読んでいた観客も満足させる結末にしていました。
何よりも上手いな、というか、こうやらないと駄目だよな、と思ったのは、恐ろしい存在の見せ方です。
縫いぐるみとか着ぐるみとかが出てきたら、興ざめだよなと思っていたら、きちんとそういったことはやらないでくれました。そうでなくっちゃ。
恐ろしい物は、想像するから怖いわけです。というわけで、余情の残る、うまいラストになっていました。
● 建物の魔力
映像特典でも語られていましたが、建物がよかったです。
これは、監督が美術監督に、この映画を撮る話をしたら、「たぶん、原作の小説はあそこのイメージだよ」と、原作のイメージぴったりの建物に案内してくれたそうです。
歴史を感じさせながら、どこか寂れた感じで、何となく何かが起こりそうな建物でした。
ロケーションって、大切だなと思いました。
● 主演のミア・ファロー
主演のミア・ファローがよかったです。繊細で折れそうな女性を好演していました。
彼女の演技がかなりきているので、妄想なのか陰謀なのか、観客は微妙に分からずに振り回されます。
このミア・ファローですが、細くてちっちゃくて可愛いですね。そして、演技力ありますね。
あと、映画の途中で彼女は髪を切るのですが、髪が短くなって以降の彼女は、病的で怖いです。
人間は、髪型や服装、メイクや演技で、雰囲気がだいぶ変わるなと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(ネタバレあり。ラストの直前まで書いています)。
主人公は若い女性。彼女は俳優の男性と結婚して、新居に越してくる。新しい住まいは、古い屋敷を改装した集合住宅だった。
彼女はそこで、一人の若い女性と出会う。しかし、その女性は突如自殺してしまう。そして、そのことが切っ掛けで、主人公夫婦は、隣に住む老夫婦と近所づきあいを始める。
主人公は妊娠した。だがその直前に悪魔に犯される夢を見る。
彼女は友人の紹介で、産婦人科にかかっていたが、隣家の夫人の薦めで有名な産婦人科医に転院する。
主人公は、徐々にお腹が大きくなっていく。彼女は苦しみを訴えだす。そして、お腹の子供が死んでしまうのではないかと考えだす。
だが、産婦人科医は気にしないようにと言うだけだった。また、周囲の人間も彼女の不安を無視するだけだった。
彼女の苦しみとは反対に、彼女の夫はライバルの失明で大役を射止める。
主人公には、育ての親とも言うべき小説家の友人がいた。彼は主人公の状態に疑問を持ち、独自に調べだす。だが、その結果を伝える前に死んでしまう。
主人公のお腹の痛みは落ち着き、出産が近くなる。そんな彼女の元に、小説家が残した本が届く。それは、主人公の周囲で起こっている、恐るべき悪魔主義者たちの企みを伝えるものだった。
主人公は子供を守るために逃亡しようする。だが、捕まり、出産を迎える。出産後、子供は死んだと伝えられる。だが、彼女は信じられず、自分の子供を探そうとする。
そんな彼女に、赤ん坊の声が聞こえてきた。彼女はその声を頼りに、自らの子供に会おうと屋敷の秘密の道を進んでいく……。
● その他
映画には、謎としてアナグラムが出てきます。
アナグラムは、今では使い古されているので、現代の映画では使いづらいだろうなと思いました。こういった仕掛けには、旬がありますので。
あと、ラスト近くで、ステレオタイプの日本人が出てきます。そんなところ(場所とシーン)で、写真は撮らないだろうと思いました。
まあ、そういったステレオタイプな日本人なのは、アメリカ映画なので仕方がないのでしょう。
そういったこととは別に、ミア・ファローが徐々におかしくなっていく様が、真に迫っていてぞくぞくきました。これは本当によかったです。
映画は、見る価値のある作品でした。