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2009年11月28日 23:15:51
僕らのミライへ逆回転
 映画「僕らのミライへ逆回転」のDVDを、九月中旬に見ました。

 2008年の映画で、監督・脚本はミシェル・ゴンドリー、主演はジャック・ブラックです。

 原題は「BE KIND REWIND」(巻き戻してご返却下さい)。

 監督は、「エターナル・サンシャイン」(2004)の監督・原案の人です。一風変わった、面白い映画を作る人ですね。

 ジャック・ブラック主演から分かるとおり、コメディ映画ですが、なかなか面白かったです。



● 手作り映画の楽しさ

 さて、この映画の何が楽しいかというと、やはり「Sweded(スウェーデン製)」でしょう。

 この映画は、ひょんなことから、レンタルビデオ屋のビデオを全部消磁してしまった主人公たちが、「Sweded(スウェーデン製)」と偽って、既存の映画をなぞった「手作りビデオ」を作ってレンタルするというお話です。

 この、手作りビデオが、かなり笑えます。映画好きは必見。有名なあの映画、この映画が、ジャック・ブラック扮する主人公たちの適当な演出で、十分ぐらいのチープな短編映画に早代わりします。

 でも、この映画が、またいいんです。

 手作りのSFXで、アイデアをいろいろと駆使して、在り物で演出を加えていく。

 そして、レンタルビデオ店の客を巻き込んで、どんどん「新作リメイク」を作っていく。

 この設定と、作られるビデオだけで、かなり楽しい映画でした。



 以下、ネタバレが入ります。

 映画の後半の話をします。



● 最後はホロリと泣かせるシナリオ

 でも、この映画は、そういった楽しい笑いばかりではありません。後半、ビデオ店の危機と、著作権違反で訴えられた主人公たちは、「本物の映画作り」に取り組みます。

 この、後半に作られる映画が、手作り感溢れる「アートな作品」になっていて、非常によかったです。

 話自体も、ぐっと来る展開になるのですが、この後半に作られる映画の出来もかなりよいです。

 二重に美味しい映画だよなと思いました。

「笑いと感動」とよく言いますが、その両方が詰まった映画でした。



● でも無茶な設定

 しかしまあ、映画の設定(特に前半)は、無茶だよなと思いました(苦笑)。

 面白いからよいのですが、電気ショックを受けた主人公が、帯電体質になって、ビデオを全部駄目にするというのは、完全に無茶だろうと思いました。

 ここは完全に、カートゥーンの世界でした。



● ヒロインの緩さ

 あと、この映画のヒロインは、非常にゆるゆるでした。

 頭が緩いだけでなく、容姿も緩かったです。普通の大作映画では、ヒロインを張りそうにない感じの役者さんです。でも、この映画の緩さには合っていました。

 あと、出演者を見ていたら、何気にミア・ファロー(「ローズマリーの赤ちゃん」(1968))がいました。

 年齢的に、たぶんおばさん役だと思います。全然気が付かなかったです。



● 粗筋

 以下、粗筋です(ネタバレあり。ほぼ最後まで書いています)。

 主人公は、町の駄目人間。彼は、レンタルビデオ屋の店主に育てられている親友とともに、バカばかりやっていた。

 ある日、レンタルビデオ屋の主人は、数日店を留守にした。主人公の親友は、ビデオ屋の店番を任される。その時に、主人公だけは店に入れるなという助言を受ける。

 だが、店に入れてしまい、そのせいで、ビデオの中身が全部消えてしまう。

 困った主人公たちは、客の見たいビデオを聞いて、記憶を頼りに、そのビデオを撮影してでっち上げる。

 無茶苦茶だと思いながら貸し出したところ、それが存外受けてしまった。主人公たちは、ヒロインをスカウトし、レンタルビデオ屋の会員を募り、どんどんビデオを量産して売り上げを伸ばす。

 その頃、ビデオ屋の店主は、苦境に立たされていた。街の再開発計画の一環として、立ち退きを命ぜられていた店主は、他のレンタルDVD屋の偵察などをして、作戦を練っていた。

 店主が帰ってきた。店が、とんでもないことになっていることに気付き、店主は驚く。だが、若者たちの作戦に乗り、売り上げを伸ばしていく。

 だが、バブルは長くは続かなかった。

 著作権違反の疑いで、主人公たちは訴えられる。そして、作ったビデオは全部廃棄させられてしまった。

 このままでは、立ち退かなければならない。

 主人公たちはふてくされる。しかし、あるアイデアが彼らの頭におりてきた。

 ビデオ屋が入っている建物が、文化的な遺産となればよい。

 ビデオ屋の店主は常々、「この場所は有名なジャズ・ミュージシャンの住んでいた場所だ」と言っていた。そのミュージシャンの生涯のビデオを撮ろう。それならば著作権違反にもならない。

 その計画を聞いた店主は、首を横に振る。その話は、実は店主の嘘だった。主人公の親友に自信を持たせるために、彼はそういった嘘を吐いていた。

「でも、いいじゃないか。みんなで映画を作ろうよ」

 主人公は、映画を撮ることをみんなに提案する。主人公の親友や店主、レンタルビデオ屋の客たちは、彼の提案を聞いて、一致団結して映画を撮り始めた。

 そして、ビデオ屋の取り壊しの日、その映画は完成して、上映会が開かれた……。



● ビデオとDVD

 映画の途中で気付いたのですが、そういえば「レンタル・ビデオ」って、もうかなり古いものなのですね。

 でも、DVDだとこの映画は成り立たないと思いました。

 確かに、撮影して、DVDに焼けばよいのでしょうが、「テープ」というのが、「映画を撮る」という行為の手触りとして、必要なのだと思います。

 ビデオテープは、映画のフィルムに通じるところがありますので。

 というわけで、この映画は、「映画リスペクト系映画」に入る一本だと思うのですが、映画に対する愛を感じて、楽しめました。
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