映画「僕らのミライへ逆回転」のDVDを、九月中旬に見ました。
2008年の映画で、監督・脚本はミシェル・ゴンドリー、主演はジャック・ブラックです。
原題は「BE KIND REWIND」(巻き戻してご返却下さい)。
監督は、「エターナル・サンシャイン」(2004)の監督・原案の人です。一風変わった、面白い映画を作る人ですね。
ジャック・ブラック主演から分かるとおり、コメディ映画ですが、なかなか面白かったです。
● 手作り映画の楽しさ
さて、この映画の何が楽しいかというと、やはり「Sweded(スウェーデン製)」でしょう。
この映画は、ひょんなことから、レンタルビデオ屋のビデオを全部消磁してしまった主人公たちが、「Sweded(スウェーデン製)」と偽って、既存の映画をなぞった「手作りビデオ」を作ってレンタルするというお話です。
この、手作りビデオが、かなり笑えます。映画好きは必見。有名なあの映画、この映画が、ジャック・ブラック扮する主人公たちの適当な演出で、十分ぐらいのチープな短編映画に早代わりします。
でも、この映画が、またいいんです。
手作りのSFXで、アイデアをいろいろと駆使して、在り物で演出を加えていく。
そして、レンタルビデオ店の客を巻き込んで、どんどん「新作リメイク」を作っていく。
この設定と、作られるビデオだけで、かなり楽しい映画でした。
以下、ネタバレが入ります。
映画の後半の話をします。
● 最後はホロリと泣かせるシナリオ
でも、この映画は、そういった楽しい笑いばかりではありません。後半、ビデオ店の危機と、著作権違反で訴えられた主人公たちは、「本物の映画作り」に取り組みます。
この、後半に作られる映画が、手作り感溢れる「アートな作品」になっていて、非常によかったです。
話自体も、ぐっと来る展開になるのですが、この後半に作られる映画の出来もかなりよいです。
二重に美味しい映画だよなと思いました。
「笑いと感動」とよく言いますが、その両方が詰まった映画でした。
● でも無茶な設定
しかしまあ、映画の設定(特に前半)は、無茶だよなと思いました(苦笑)。
面白いからよいのですが、電気ショックを受けた主人公が、帯電体質になって、ビデオを全部駄目にするというのは、完全に無茶だろうと思いました。
ここは完全に、カートゥーンの世界でした。
● ヒロインの緩さ
あと、この映画のヒロインは、非常にゆるゆるでした。
頭が緩いだけでなく、容姿も緩かったです。普通の大作映画では、ヒロインを張りそうにない感じの役者さんです。でも、この映画の緩さには合っていました。
あと、出演者を見ていたら、何気にミア・ファロー(「ローズマリーの赤ちゃん」(1968))がいました。
年齢的に、たぶんおばさん役だと思います。全然気が付かなかったです。
● 粗筋
以下、粗筋です(ネタバレあり。ほぼ最後まで書いています)。
主人公は、町の駄目人間。彼は、レンタルビデオ屋の店主に育てられている親友とともに、バカばかりやっていた。
ある日、レンタルビデオ屋の主人は、数日店を留守にした。主人公の親友は、ビデオ屋の店番を任される。その時に、主人公だけは店に入れるなという助言を受ける。
だが、店に入れてしまい、そのせいで、ビデオの中身が全部消えてしまう。
困った主人公たちは、客の見たいビデオを聞いて、記憶を頼りに、そのビデオを撮影してでっち上げる。
無茶苦茶だと思いながら貸し出したところ、それが存外受けてしまった。主人公たちは、ヒロインをスカウトし、レンタルビデオ屋の会員を募り、どんどんビデオを量産して売り上げを伸ばす。
その頃、ビデオ屋の店主は、苦境に立たされていた。街の再開発計画の一環として、立ち退きを命ぜられていた店主は、他のレンタルDVD屋の偵察などをして、作戦を練っていた。
店主が帰ってきた。店が、とんでもないことになっていることに気付き、店主は驚く。だが、若者たちの作戦に乗り、売り上げを伸ばしていく。
だが、バブルは長くは続かなかった。
著作権違反の疑いで、主人公たちは訴えられる。そして、作ったビデオは全部廃棄させられてしまった。
このままでは、立ち退かなければならない。
主人公たちはふてくされる。しかし、あるアイデアが彼らの頭におりてきた。
ビデオ屋が入っている建物が、文化的な遺産となればよい。
ビデオ屋の店主は常々、「この場所は有名なジャズ・ミュージシャンの住んでいた場所だ」と言っていた。そのミュージシャンの生涯のビデオを撮ろう。それならば著作権違反にもならない。
その計画を聞いた店主は、首を横に振る。その話は、実は店主の嘘だった。主人公の親友に自信を持たせるために、彼はそういった嘘を吐いていた。
「でも、いいじゃないか。みんなで映画を作ろうよ」
主人公は、映画を撮ることをみんなに提案する。主人公の親友や店主、レンタルビデオ屋の客たちは、彼の提案を聞いて、一致団結して映画を撮り始めた。
そして、ビデオ屋の取り壊しの日、その映画は完成して、上映会が開かれた……。
● ビデオとDVD
映画の途中で気付いたのですが、そういえば「レンタル・ビデオ」って、もうかなり古いものなのですね。
でも、DVDだとこの映画は成り立たないと思いました。
確かに、撮影して、DVDに焼けばよいのでしょうが、「テープ」というのが、「映画を撮る」という行為の手触りとして、必要なのだと思います。
ビデオテープは、映画のフィルムに通じるところがありますので。
というわけで、この映画は、「映画リスペクト系映画」に入る一本だと思うのですが、映画に対する愛を感じて、楽しめました。